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ポスター発表:子どものレジリエンス・ハピネス(QOL)を予測する母親の子育て意識:アジア8か国比較(PECERA(環太平洋乳幼児教育学会)第22回大会)

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a. 研究の意図

先行研究によると、コロナ禍により子どものメンタルヘルスに問題が生じており、子どものウェル・ビーイングの脅威となっている。子どもが困難や脅威から回復、適応する概念であるレジリエンスについて、マステンは著書(2020)で「親密な関係性はレジリエンスにとっては中核的な意義を持つことが指摘されています。幼い子どもの場合、養育者の役割は最も重要です。」と述べている。子どもにとって最も身近で影響の大きい養育者は母親である。そこで本研究では、子どものレジリエンスやハピネスを予測する母親の子育て意識を見極めるための国際比較分析を実施した。

b. 研究目的とリサーチ・クエスチョン
  1. 母親のどのような子育て意識が、子どものレジリエンス・ハピネス(QOL)を予測するのか
  2. 母親の子育て意識と子どものレジリエンス・ハピネス(QOL)との関連は、子どもの年齢や国によって異なるのか
c. 調査方法(対象、尺度、データ分析について)

共通の調査項目を用いて、アジア8ヶ国の5歳児をもつ母親計1,973名、7歳児をもつ母親計1,372名を対象に、2021年8月~11月にアンケート調査を実施した。

子どものレジリエンスについてはレジリエンス・リサーチ・センターで開発されたPMK-CYRM-R尺度を、QOLについてはRavens-Sieberer & Bullinger (2000)により開発されたKINDL尺度を使用した。また母親の子育て意識については、自己犠牲感、子育て効力感など、全部で6つの項目から問う日本で開発された設問を使用、多重共線性は出現しなかったため、各単項目を1変数として扱った。

統計解析ソフトはSPSS Statistics 27.0.1を用い、独立変数として母親の子育て意識を、従属変数として子どものレジリエンスおよびQOLを設定した重回帰分析を行って、子どもの年齢別、国別に比較した。

d. 調査結果、結論や示唆(継続中の研究の場合:期待される成果や貢献)
調査結果
  1. 全体傾向として、母親の子育て効力感は、子どもの年齢や国の違いによらず、子どものレジリエンスとQOLの双方を予測することが分かった。
  2. 母親の子育て意識変数6項目のうち、5歳の方が7歳よりも、子どものレジリエンスおよびQOLを予測する項目が多くあった。
  3. 子どものレジリエンスとQOLの双方につき、予測要因として有意と出ている母親の子育て意識変数の傾向が似ている国でグループ分けを行ったところ、日本と台湾は概ね傾向が似ていることが見て取れた。また、子どもの年齢により類似の傾向を示す国の組み合わせが異なることも明らかになった。
結論と示唆

日本と台湾が同じ東アジアに属すこと、また国全体での発展状況の近似性などから親の子育て観が似通っていることが推察される結果となった。5歳と7歳で国の組み合わせが異なったことは、園児と小学生でレジリエンスやQOLに影響する要因の傾向が異なることを意味するが、園と小学校における文化の違いを鑑みると、この結果にも納得できる。また5歳では幅広い母親の子育て意識が子どものアウトカムを予測するが、7歳になると特定の項目に焦点化されることも伺われた。

子育て効力感が高い母親の子どもは、概してレジリエンス・QOLが高い傾向にあった。次は子育て効力感が高い母親の背景について、デモグラフィック要因と環境要因の双方から分析を深める必要がある。


※このポスターは、2022年7月8日~10日に香港でハイブリッド開催されたPECERA(環太平洋乳幼児教育学会)第22回大会で発表されました。
筆者プロフィール
Junko_Ogawa.jpg 小川 淳子(おがわ・じゅんこ)

チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)研究員、ベネッセ教育総合研究所研究員。
2013年よりベネッセ教育総合研究所に所属し、CRNを運営。近年はアジア諸国の研究者からなるCRNA(Child Research Network Asia)を組織し、アジア8か国の研究者との国際共同研究を推進している。

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