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【実録・フィンランドでの子育て】 第9回 新学年最初の保護者会

要旨:

この連載では、教育・福祉先進国と言われ、国民の幸福度が高いことでも知られるフィンランドにおいて、日本人夫婦が経験した妊娠・出産・子育ての過程をお伝えしていきます。フィンランドに暮らすって本当に幸せなの? そんな皆さんの疑問に、実際の経験を踏まえてお答えします。第9回の今回は、新学期が始まって最初の保護者会について、その様子と感想を報告します。

キーワード:
フィンランド、子育て、小学校、デイケア、保護者会

私の子どもたちは、フィンランドの現地校とデイケアに通っています。フィンランドの学校では通常、8月から新しい学年が始まり、2学期制で、6月の頭から夏休みに入って学年度が終わります。そして、子どもたちの学校生活が軌道に乗ってきた9月半ば頃が、保護者会のシーズンになります。今回、上の子ども(小学2年生)と下のこども(デイケア)の両方の保護者会に参加してきたので、その様子をお伝えします。

小学校の保護者会

上の子どもは、昨年小学校へ入学したのですが、1年生の最初の保護者会は、コロナ禍のためオンラインで行われました。したがって、新学年最初の保護者会に、対面で参加するのは初めてでした。前年度、コロナが落ち着いた2022年の春に対面で行われた保護者会は、子どもと一緒の参加でしたが、今回は「保護者だけで参加してください」とのことで、夫に子どもたちを預けて私だけ参加しました。

学校にもよりますが、フィンランドでは、小学校6年間クラス替えはなく、担任の先生も変わらないことが多いです。娘の学校も基本的にはクラス替えはなく、1年生から同じクラスメートがそのまま2年生にもち上がり、担任の先生も変わりませんでした。さて、保護者会のために教室に着くと、昨年から馴染みの先生が教室に迎え入れてくれました。特に自分の子どもの席に座るなどの指示はなく、各々空いている場所を見つけて席についている様子で、私も空いている席に座りました。開始時間は平日の18時です。フィンランドでは、16時頃に終業するのが一般的なので、仕事を終えて夕食を食べてから参加できる時間設定になっています(フィンランドでは夕食を5時〜6時に摂り、寝る前に軽食を食べる家庭が多いです)。クラスの子どもの人数は20人ですが、15人前後の子どもの保護者が参加していて、お父さんだけの参加や夫婦で参加している人も何人かいました。

時間になると、担任の先生がまずはこのクラスに関わっている特別支援の先生と言語の先生を紹介し、それぞれ挨拶のスピーチがありました。フィンランドでは、通常学校にもクラス担任をもたない特別支援の先生が、学校の規模に合わせて1人〜複数人配置されています。もし学習や学校生活でつまづいている子がいたら、担任の先生と一緒に特別支援の先生がすぐにサポートに入ります。「何かお子さんのことで相談したいことがあれば遠慮なく言ってください」という話をしていました。

さらに、英語とスペイン語の先生からそれぞれ挨拶がありました。フィンランドでは、第一外国語教育が1年生から始まります。その言語は英語だけに限られているわけではなく、1年生になる時点で、英語の他にスウェーデン語、ロシア語、フランス語、ドイツ語、スペイン語などの中から、保護者と子どもが話し合って一つを選択します。そこで、希望する子どもが一定数集まれば、その言語の授業が行われることになります。今回の娘のクラスでは、英語またはスペイン語を希望する子どもたちが多かったため、英語またはスペイン語のクラスに分かれて第一外国語を勉強しています。

その後、校長先生からの挨拶ビデオが流されました。通常は、校長先生が各クラスを回って挨拶するのですが、今回はどうしても都合が悪く参加できない、と話していました。特別支援や言語の先生の他に、スクールナースやスクール・サイコロジスト(有資格者の学校心理士)も学校にいるので、「何かあれば担任の先生か校長先生に相談してください」といった話をされていました。

先生方の挨拶が終わると、担任の先生からA4のコピー用紙がそれぞれに配られました。娘のクラスでは、教室の横に子ども一人一人の引き出しがあって、そこに文房具や宿題で使わない教科書・ノートなどを入れて帰ります。この紙は何に使うんだろう?と思っていると、「お子さんの引き出しから自由に文房具を取り出して、お子さんになんでもいいのでメッセージを書いて、引き出しに入れておいてください」とのことでした。保護者は思い思いに、2年生になって頑張っていることや、「大好きだよ」と言ったメッセージを書き、引き出しにしまっていました。普段、なかなか娘に手紙を書く機会がないので、こうした機会を作ってもらえるのはとても有難いなと感じました。

最後は、それぞれの保護者が自己紹介をし、学校が始まって子どもはどんな様子か、何か心配なことはないかというのを一人ずつ話していきました。一人の話に他の保護者の方が「うちも、うちも」と話を加えたり、担任の先生が具体的に学校の様子を話してくれたりしていたので、会が終わった頃には20時を回っていました。

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小学校の教室の様子


デイケアの保護者会

デイケア(フィンランドには保育園・幼稚園の区別はなく、全ての子どもがフィンランド語でpäiväkoti(パイヴァコティ)、英語でデイケアと呼ばれる施設に行きます)は学校が夏休みの間も開いていますが、8月からが新しい年度の始まりということで、同じく9月頃に保護者会が開催されます。デイケアの保護者会は、平日の17時からの開始でした。

デイケアは、通常0〜2歳のグループ、3〜5歳のグループ、就学前教育グループの3つに分かれていることが多いです。子どもたちは一つの教室ではなく各々のグループに寝る部屋、遊ぶ部屋、着替えなどする部屋があるので、クラスではなくグループという表現を使っています。フィンランド語でもグループを指す「ryhmä」という言葉が使われます。

初めに、全てのグループの保護者が広いホールのような部屋に集められ、スライドを使ってデイケアの日常的な流れや行事などの説明がありました。それが終わると各グループの部屋に移動して、グループごとの保護者会になりました。娘が所属する0〜2歳のグループには、12人の子どもが所属していて、9人の保護者が参加していました。そのうち、5人がお父さんの参加でした。我が家は通常16時半にお迎えに行くのですが、その時にお父さんがお迎えに来ていることもとても多いです。改めて、平日の夕方であっても父親も母親も育児に参加できるような社会環境になっていることを実感しました。

それぞれが簡単に自己紹介をすると、先生が保護者を二つのグループに分けました。それぞれのグループに一枚の紙とペンが渡され、「受け渡しの時にお子さんについて知りたいことや、デイケアへの希望を話し合って書いてください」とのことでした。フィンランドのデイケアでは、日本の保育園のような連絡帳はありません。お迎えの際に、今日はどんな様子だったか、どれくらいお昼寝をしたか、などの情報を口頭で伝えてくれます。私たちのグループでは、受け渡しの時には「一人でどれくらい食べられるようになったか知りたい」「夜の睡眠に関わるので、昼寝をどれくらいしたか知りたい」「もし体調のことで変わったことがあれば知りたい」などの意見が出されていました。園への希望については、みんな「現状でとても満足しているし、先生に感謝だよね」と話していました。

最後に、全員で保育室の見学をしてお開きとなりました。娘のグループには、食事及び自由遊びをする部屋、お昼寝をする部屋、運動をする部屋があり、近くに園全体で使うサウナもあり、先生たちがそれぞれの部屋をどのように使うのか案内しながら説明してくれました。フィンランドはどこでもサウナがあるのが当たり前なので、具体的にどんなタイミングで入るかなどは、特に聞かなかったのでわかりません。

参加した感想

私は日本で保護者会に参加したことがないので比較はできませんが、先生から学校や園での様子を聞き、保護者同士の親交を深めるという目的は同じだと思います。少し異なるのは、フィンランドでは特にPTAの役員を保護者会で選出するということはないようです。一方で、学校の理事会のメンバーに保護者も含まれるのですが、そのメンバーは立候補制です。つい先日、理事会メンバー選出の投票があり、候補者全員の決意表明が学校のアプリに送られてきました()。それを読んで、この人がいいと思う人にオンライン上で投票する、というものでした。日本では「保護者会でPTAの役員を決めるのが大変」という話を聞くので、学校全体でオープンにやってもらえるのはとても有難いな、と思いました。そうした決め事をする必要がないので、保護者会は純粋に子どもの学校の様子を聞いて、保護者と顔見知りになる機会として楽しめたと思います。

注:フィンランドの学校では、アプリを使用して時間割の変更、欠席の連絡、行事のお知らせなど、家庭と学校とのやりとりを行います。

筆者プロフィール
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矢田 明恵(やだ・あきえ)

フィンランド・ユヴァスキュラ大学博士課程修了。Ph.D. (Education)、公認心理師、臨床心理士。現在、ユヴァスキュラ大学・トゥルク大学ポスドク研究員、東洋大学国際共生社会研究センター客員研究員。
青山学院大学博士前期課程修了後、臨床心理士として療育センター、小児精神科クリニック、小学校等にて6年間勤務。主に、特別な支援を要する子どもとその保護者および先生のカウンセリングやコンサルテーションを行ってきた。
特別な支援を要する子もそうでない子も共に同じ場で学ぶ「インクルーシブ教育」に関心を持ち、夫と共に2013年にフィンランドに渡航。インクルーシブ教育についての研究を続ける。フィンランドでの出産・育児経験から、フィンランドのネウボラや幼児教育、社会福祉制度にも関心をもち、幅広く研究を行っている。
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