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【ドイツの子育て・保育事情~ベルリンの場合】 第2回 日本とドイツの保育施設比較(後編)

シュリットディトリッヒ 桃子

2012年1月27日掲載

要旨:

日本の保育園は一般的に認可、認証問わずその運営に対する保護者の関与度は低いという認識だったが、現在息子が通うベルリンの保育施設では関与度は高い。その背景には、ベルリンの園にはKITAとKILAの二種類があり、前者は100%ベルリン市からの補助で運営しているので公的機関の側面が強く、長時間開園しており、親の関与も低い。一方、息子の通う後者では半私的機関であるため、市からの補助が93%しか出ておらず、不足分を補うため、保護者が運営に携わる頻度も高い傾向がある。またKITAに比べ、開園時間も短い。従って、KILAに子どもを通わせている保護者たちは、フレキシブルな勤務で、子どもの教育に熱心で、園の方針に賛同する方が多い。
前回はドイツ・ベルリンの保育施設入園にあたり、背景や制度などをご紹介しました。息子は入園激戦区ベルリンで、幸いにも保育施設に入ることができました。ここでは日本で通っていた保育園に比べ、親の参加度が非常に高いことに驚きました。そんな中、保護者会にて、ベルリンには一口に保育施設といっても種類もサービスも異なるものがあることを学びました。

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ある日の公園 保護者は私以外全員パパでした



保護者の高い参加度とその背景

日本で息子を保育園に預けていた時には、とにかく仕事と帰宅後の家事育児でいっぱいいっぱいで、その他のことをこなす余裕は全くありませんでした。保育園の運営に関しても年1-2回土曜日に開催される保護者会に参加する程度で、あとは保育園の先生方が何から何までやってくださっていたため、完全に頼り切っていました。

しかし、息子が通っているドイツ・ベルリンの私立保育施設では、保護者のサポートが園の運営に不可欠です。その内容は、例えばミルク、水やパンなど子ども達が普段口にするものの調達係、壊れたおもちゃを修理する係、子ども達のお昼寝シーツなどを洗濯する係、園内のメンテナンス係など多岐にわたり、保護者のサポートがないと、子どもたちの生活が成り立たないようになっています。

これらの奉仕は保護者の都合によって選ぶことができるので、どの保護者も積極的に参加しているようです。これ以外にも年間10時間の園への奉仕が保護者に義務付けられています。奉仕内容の割り当ては、平日夕方から行われる保護者会で決められますが、季節的・突発的に発生するものについては、その都度、募集がかけられます。実際に先月には、夫が他の父親4名と一緒に園内のカーペットの張り替えを行い、平日午後5時から7時までの2時間の奉仕をこなしてきました。

また、奉仕時間の選択肢には、月一回、通常第一火曜日の午後3時から5時まで、保育士の先生たちが全体ミーティングを行っている間、先生の代わりに子どもたちの保育をするというものもあります。

日本の保育園ではいつこのような先生方のミーティングを行っていたのかはわかりません。しかし、このように先生方のミーティングが理由で保育時間内に「保護者保育」を依頼されたことはありませんでした。一時的にでも「保護者のみで子どもたちの保育を行う」ということも聞いたことがありませんでした。ですから、最初にこの保護者保育について聞いた時には、非常に驚きました。

さらに、息子が通う保育施設では、祝日でもない通常日に3日間「先生の研修」と称して、閉園したことがあります。その間の保育を希望する場合は、別の保育施設を紹介してもらえますが、日本で通っていた保育園では先生方の研修は週末に行っていたようですし、何より施設の都合で平日閉園というのは聞いたことがありませんでしたので、これも驚きました。

このように息子が通う園では保護者の積極的な参加が求められるのですが、この点に関して、ちょうど先日保護者会で話題になりました。保護者から「平日昼間は働いているので、保護者保育に参加できない。働いているから子どもを預けているのに、なぜ平日に保育ができない状況が生じるのか?」という意見が出たのです。

すると先生は「ここはKinderladen(KILA)であって、Kindergarten(KITA)ではないので、自治体から完全な補助がでない。だから、出費を抑えるために保護者の参加は必要なのです。」とおっしゃっていました。このことを知らなかった私を含め何人かの保護者達は驚きを隠せませんでした。ここでKILAとKITAの違いを記しておきます。


2種類の保育施設*1

  KITA KILA
定員 40-400名程 15-20名程
年齢 1歳から就学時まで 1歳から就学時まで
学級 年齢別(1クラス10-20名の1-2歳、3-4歳、5-6歳クラスに分かれている) 縦割り
開園時間(例) 午前6時から午後6時 午前8時から午後4時
施設 大規模、広い園庭あり 小規模、園庭ない場合も多い
保育料 無料(公立) 有料(半公立)
公的補助 100% 各施設による(100%未満)
カリキュラム 特別養護学級、ドイツ語学級を備えているところもある 各園による(多言語、スポーツ、音楽、芸術に特化するなど)
保護者の関与 大(保護者がイニシアティブをとる)
日本の保育施設との比較イメージ 認可保育園 認証保育園+幼稚園?

上記のとおり、KITA(Kindertagesstätte)というのは、100%自治体からの補助で運営されている保育施設の総称です。公的施設なので、保育料は発生しません。

一方、息子が通っている施設はKILA(Kinderladen)ですので、ベルリン市からの補助は93%だけの半公立保育施設です。残りの7%をカバーするために、毎月の保育料が発生し、保護者は園の運営への参加が求められているのです。しかし一方で、市の補助も受けているため、市の基準に従って保育が行われているかどうかチェックする監査も、KITAと同様に入ります。

ちなみに、KILAは1970年代のドイツで保護者がコミュニティ内で集まって、保育を始めたことを起源にしているので、その歴史からも、保護者のイニシアティブが大きく、カリキュラムに関しても独自なものを持っているところが多い、とのことでした。

確かにこのKILAはドイツ語と英語のバイリンガル教育を特色としており、他にも毎週、専門の音楽の先生を招いてリトミックを行ったりと、特に語学と音楽・芸術を柱としたカリキュラムを組んでいます。バイリンガル教育を行っているのは、この園の2キロ圏内に12ある保育施設の中でもここを含めて2園のみです。

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カーペットを張り替えて、きれいになったプレイルーム


保育園入園激戦地区のベルリンでは自宅近所のKITAに入れず、仕方なくKILAを選ぶ方もいらっしゃいますが、一方で、園のカリキュラムに賛同してという理由や、子どもに集団生活を経験させると同時に自分も子どもの教育に関わっていきたいと、あえてKILAを選ぶ方もいらっしゃいます。息子が通うKILAの保護者に伺ってみると、バイリンガル教育だからという理由で入園された方が結構いらっしゃいます。

また、前述の奉仕時間の件ですが、以前は年間20時間が求められていたのが、働く保護者からの要請で、今年は10時間になったそうです。また、先日の保護者会の後、奉仕時間に参加できない保護者は1時間7ユーロ払えば免除される制度が承認されました。

そしてKILAを選ぶ前提としては、第一回で述べたように、ドイツでは日本に比べて労働時間が短く、フルタイムで働いていたとしてもフレキシブルな勤務形態が多いことが挙げられます。ちなみに、息子の通うKILAではフリーランスで働いている方が多いようです。

また、お世話になっているKILAでは、ほとんどの奉仕活動および保護者会は平日に行われます。これは週末は家族と過ごすためのもの、という考えが徹底しているからです。そして、これは働いている保護者のみならず、先生方にもあてはまるので、その分、保護者が協力して、普段の園の運営をサポートしていくというサイクルができているようです。

私はこれらの経験から、園の運営に関わり、息子が園でどのような生活を送っているのかを自分の目で確かめたいと思っていました。そこで、保護者保育に参加してきました。次回はそのレポートをお伝えします。


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夜のベルリン ブランデンブルグ門



参考資料
*1 Der Unterschied zwischen Kindergarten und Kinderladen
http://frau.germanblogs.de/archive/2010/01/21/der-unterschied-zwischen-kindergarten-und-kinderladen.htm
筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。
慶應義塾大学総合政策学部卒業。
英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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