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【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】 第50回 アドベントの数学("Mathe im Advent")

要旨:

記念すべき50回目の記事では、毎年12月に行われる「アドベントの数学(“Mathe im Advent”)」を紹介する。ドイツ語圏の子どもたちを対象に行われているこのイベントでは、子どもたちは、インターネットで表示される「アドベントカレンダー」を開けて、算数・数学の問題を一日一問ずつ解き、答えを入力する。全問正解すると、豪華な賞品がもらえることもあり、毎年多くの子どもたちが積極的に参加している。毎日これらの問題に取り組むことにより、日常生活に応用できる論理力を養い、将来、学術界や経済分野で活躍できるような人材を育てることが本イベントの目的である。

キーワード:
ドイツ、アドベントカレンダー、数学のアドベント、論理的推論、パズル、シュリットディトリッヒ桃子

今回のベルリン教育事情レポートでは、息子が通う理数系ギムナジウムで生徒たちが毎年参加している、数学のイベントについて記載したいと思います。

「アドベントの数学("Mathe im Advent")」

一般的に理数系ギムナジウムでは、化学や物理、数学などの科目において、学校外の組織が主催する特別なイベントに生徒が参加する機会が多くあるようです。特に毎年12月になると開催される「アドベントの数学("Mathe im Advent")」は、クリスマスの行事に関連していることもあり、子どもたちも毎年積極的に取り組んでいる模様です。

ちなみに、アドベントとは【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】「第15回 我が家のクリスマスシーズンの過ごし方」でもお伝えしたように、クリスマスから4週間さかのぼった日曜日(第一待降節)からクリスマスイブまでの期間のことをさします。第一待降節から、正式にクリスマスシーズンが始まり、アドベントクランツという4本のろうそくを備えたリースや、アドベントカレンダーを飾ります。

アドベントカレンダーとは、12月1日からクリスマスまでをカウントダウンするカレンダーです。12月1日から24日までの日付(数字)がランダムに示されており、各日付は小さな「窓」になっていて、それを毎日1つめくると小さなチョコレートやおもちゃなどが入っているのが特徴で、子どものみならず大人でも毎日ワクワクしながら、窓を開けます。

さて、「アドベントの数学」はドイツ数学会が主催しており、対象の参加者はドイツ、オーストリア、スイスなどドイツ語圏の子どもたちです。該当学年は、基本的には4年生から9年生(日本の小学校4年生から中学校3年生に該当)ですが、飲み込みの早い2~3年生や、希望すれば10年生でも特別に参加を認められることがあります。

次に、参加方法ですが、学校のクラス参加と個人参加があります。いずれの場合も、子どもたちは各自、インターネットでアカウントを作る必要があります。

クラス単位で参加している場合、小学校の学校によっては、先生が問題を印刷して、日めくり算数カレンダーを作成し、子どもたちはアドベント期間までの4週間、毎日、そのカレンダーを1枚ずつめくり、問題に取り組んでいるとのこと。1人で問題に取り組ませたり、グループで議論しながら解いたり、その活用法は様々なようですが、いずれの場合も、問題を解いたら、子どもたちは自分のアカウントにログインし、その日の「アドベントカレンダー」を開けて、答えを入力します。ちなみに、問題は4択で、その中から1つ答えを選ぶようになっています。

また、個人参加の場合でも、クラス参加と同様に、ログインすると表示される「アドベントカレンダー」にアクセスします。出題される問題はクラス参加の場合と同じで、このアドベントカレンダーにも、12月1日から24日までの「窓」があり、その日の窓を開けると、問題が表示されるというわけです。

賞品目当てに頑張る?!

「アドベントの数学」では楽しそうなイラストレーションと共に、算数・数学の問題が表示されてはいるものの、24日間、毎日1問ずつ問題を解いていくのは、なかなか子どもたちにとって、ハードルが高いとみえます。そこで、モチベーションとなっているのが、魅力的な賞品。毎日表示される問題に全問正解すると、iPad、ボディーボード、楽器のキーボード、カシオベビーGやGショックなどの腕時計から、ボードゲームやプラモデル、パズルや理科の実験モデル、本などと多岐にわたる賞品を得ることができるそう。その中にはけん玉や碁といったものもあり、日本のおもちゃも論理力養成に役立つと認められているようで、なんだか嬉しい気持ちになりました。

これらの賞品が、子どもたちが問題に取り組む大きな動機になっている一方で、息子によると、毎日ログインして、問題に取り組むだけでも大変なのに、難しい問題を全問正解するのはかなり難易度が高いとのことでした。

また、参加費用は、個人参加の場合は無料ですが、クラス単位で参加する場合は学校が申し込みを行い、有料となります。今年、息子のクラスは1クラスにつき25ユーロ(約3,200円)の参加費用を払ったそうです。賞品をはじめとするこのイベントの運営費用は、参加費とスポンサー企業からの資金、そしてドイツ連邦教育研究大臣をはじめとする募金からまかなわれているそうです。

子どもたちの反応

息子の場合、小5でギムナジウムに入学して以来、毎年このイベントに参加しています。現在8年生の彼のクラスでは、週2~3回数学の授業がありますが、数学の授業がある日は、クラスで問題を解き、帰宅後、自宅で各自ログインして解答を入力します。数学の授業がない日は、自宅で問題にアクセスし、自力で問題を解き、解答を入力することになっているそうです。

概して、子どもたちの「アドベント数学」へのフィードバックはポジティブなものが多く、「問題が面白いから、楽しい!」「グループのみんなと話しながら解くのが面白い」「順を追って物事を考えられるようになった」などの意見が聞かれました。息子も「問題はパズルみたいで簡単ではないけど、毎日1問解く習慣がついたのは良かった」と言っています。

パズルのような問題とその目的

前述のように、ここで出題される問題内容は算数・数学のもの、というよりも、授業では通常教わらないパズルのようなものだそうで、それらを通じ、日常生活に応用できる論理力を養うものだそうです。「楽しみながら論理力を養う」というのがこのイベントの眼目で、2021年は約7,500校から合計18万人以上の子どもたちの参加があったとのこと。実際の問題例(中学生用)はこちらのウェブサイトでご覧頂けますが、イラストが挿入されており、子どもたちが取り組みやすい工夫がされている印象を受けました。

主催のドイツ数学会によると、このイベントの目的は、退屈で難しいと思われがちな数学のイメージを変えることだそうです。「アドベントの数学」は毎日のパズルを通じて、子どもたちが、パターンを探求し、問題を解決し、論理的推論を行う方法を身につけることができるよう作られており、子どもたちは、自分の能力に対する自信をつけることができるとのこと。 長期的には、一般的な数学のリテラシーを育て、将来、数学を生かし、学術界や経済分野で活躍できるような人材を育てることが目的となっています。

まとめ

以上、今回はドイツ語圏の子どもたちを対象にして年1回開催される算数・数学のイベントをご紹介しました。何かと難しいイメージがある数学ですが、このような楽しいイベントがあれば、毎日継続して数学に取り組むのが苦ではなくなりますし、実社会でも役立つ論理的推論を自然と身につけることができるようになると思いました。筆者が学生の時にこのようなイベントがあったらよかったのになあ、と切に思うとともに、是非、多くの子どもたちが今年もこのアドベントのイベントに参加することを願っています。

これまで10年間にわたり、ベルリンより保育・教育情報をお伝えしてきましたが、今回、「教育事情レポート」の50回目を迎えることとなりました。このように長期間、寄稿させて頂くことができたのは、ひとえに読者の皆様、CRN編集部の皆様のサポートのお陰です。この場をお借りして、厚く御礼を申し上げます。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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