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【ノルウェー子育て記】第4回 宿題は学校で終わらせる

二か月間の夏休みが終わり、8月半ばには新学期が始まりました。子どもたちは学年が一つ上がりました。しかしクラス替えは無かったので、前年と同じクラスメイトと先生に囲まれて進級することができました。ノルウェー生活2年目の私たちにとっては、あまり大きな変化がなかったのは助かりました。昨年はノルウェーに引っ越してきて、まだ何もわからないまま新学期が始まりました。あれから一年が過ぎ、子どもたちは学校に慣れ、様子もよくわかってきたので、今では心配なく学校へ送り出すことができています。

とはいえ、保護者としての私はまだまだ慣れない事ばかりです。ノルウェーでは、コロナ禍で2020年からずっと学校行事などはオンラインで続けられていたため、2020年にスウェーデンから引っ越してきて以来保護者が学校に行く機会はほぼなく、まだ学校のなかの様子はあまりよくわかりません。担任の先生の顔はわかりますが、その他の先生には会ったこともありません。9月のはじめ、いままではオンラインで行われてきた保護者会が今学期はやっと実際に学校で開かれるというので、出席してきました。私にとっては、同じクラスでも初めて対面する保護者ばかり。いつも仲良くしてもらっている娘のお友達のご両親とも、やっと顔を合わせることができました。改めて保護者みんなでクラス担任の先生の話を聞き、「子どもにとって最善のことを」という目標をもって子どもの学校生活を支えましょうという話をしていただきました。

今回はその学校の活動のなかでも、私がとくに有難いなあと思っている「宿題サポート」についてレポートします。

宿題のお手伝い

2014年から、ノルウェーの小中学校(1年生から10年生まで)では、授業が終わってから学校で宿題のサポートをしてもらえるという時間が設けられています(参照1)。授業時間以外の活動となるので、参加は自由です。宿題のサポートを受けたいという子どもを対象に行われます。これに参加するには保護者の同意も必要なので、そのための書類に保護者がサインをします。宿題サポートの目的は、どの生徒にも同じように授業についていける知識を身につけさせることだそうです。ただし、授業で出された宿題をこなすための時間として利用するため、授業で教えられたこと以外の内容には言及しない、より高度な学力をつけることを目的としない、などの決まり事もあります。

この宿題サポートの時間がどの曜日にどんなスタイルで行われるのかは、各コミューン(自治体)や学校で決めることができるそうです。二女の通う小学校高学年クラスでは、月曜日の放課後に宿題をする時間を設けています。前の週までに学んだ内容(算数、ノルウェー語など)が宿題として出され、月曜日に出された宿題は木曜日に提出する約束になっています。木曜日までに自分で宿題を終わらせることができる生徒は、宿題サポートの時間に残る必要はありません。月曜日の授業が終わると、宿題のサポートを希望する生徒は学校に残ります。

先生のお話によると、生徒たちは3つのグループにわかれ、3つの教室を使って行われます。1つの教室は、「静かな部屋」といって、静かに1人で宿題をしたい生徒が使う部屋です。ここでは、まず自分の力で宿題をします。わからないところは先生に小さな声で聞くこともできますが、お友達と話すことはできません。ほかの2つの教室は、友だちと協力しながら宿題ができる部屋です。ここでは話をしながら宿題をすることができます。娘は「静かな部屋」で宿題をするほうがいいそうです。お友だちと話をせずに、はやく宿題を終わらせることができるからだそうですが、生徒によって好みはそれぞれです。先生はそれらの教室を行き来して、宿題のお手伝いをします。教育実習生がいるときは、その学生もお手伝いをしてくれるそうです。宿題サポートの時間は1時間ほど。初めの30分間は教室を出ることはできませんが、それ以降は宿題が終われば帰宅することができるそうです。

先日の保護者会でも、この宿題サポートの時間について先生から話がありました。今のところ、非常にうまく機能していて生徒にも評判はいいそうです。学校で宿題を終わらせることができれば、その分遊ぶ時間がしっかり確保できるということでしょうか(笑)。保護者はみんな、この宿題のサポートに好意的で、子どもたちのためにも良いという意見で一致しています。ノルウェーでは両親ともに働いている家庭がほとんどなので、このシステムは非常に有難いものです。今はリモートワークで自宅で仕事をしている人も多いのですが、普段なら子どもが帰宅する時間に両親が家にいない家庭もあります。それに両親が仕事を終えてから、いつでも宿題のお手伝いができる時間があるというわけではないので、学校で宿題をしてきてくれるのは、本当に安心です。さらに、我が家ではまだノルウェー語よりもスウェーデン語を主に使用しているため、親はノルウェー語で出される宿題を理解するのに時間がかかります。ですので、親にとっても、助かるシステムです。

学校での学習のほかに宿題を課すかについてはいろいろな議論があり、ノルウェーでは肯定派や否定派などたくさんの意見が交わされてきました(参照2)。肯定派の意見としては、学習効果が上がる、学習の習慣が身に着く、保護者が子どもの学習に参加できる等があります。一方、否定派の中には、宿題の有無が学校によって異なることで社会の中で格差ができる、宿題が原因で親子間で口論になったり、喧嘩がおこる、というような意見もあるようです。宿題の影響は様々で、子どもが受ける影響は決してひとことでは片づけられないと思います。しかし、「子どもにとって最善」と思われることを試していく中で、それぞれの子どもに合った方法も見つかるでしょうし、まずは子どものことを考えた議論をすることが何かの役に立つかもしれないと個人的に思います。どんどん成長していく子どものために、微力ながらできることがあれば嬉しいです。

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新学期が始まり秋が深まるとともに、色づく街路樹

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宿題の合間、気分転換で行った山登り。フロイエン山から市街を望む


筆者プロフィール
下鳥 美鈴

ベルゲン大学(ノルウェー)文学部外国語学科准教授。東海大学文学部北欧文学科卒業。ストックホルム大学で修士課程を終え、ウメオ大学(スウェーデン)で博士課程を修了。言語学博士。
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