5月はノルウェーの人たちにとって最も大事な祝祭日の一つ、5月17日の憲法記念日があります。1814年5月17日にノルウェー憲法が制定されたことを記念し、国をあげてお祝いをする日です。この祝日の数週間前から、どこの町でも国旗がはためき、お祝いムードが高まります。私の住む町では、当日の朝から太鼓隊の音で起こされ、港に停泊した船の汽笛が町中に響いていました。海沿いの道からは、壮観な船のパレードを見ました。
町に出ると、ブーナット(Bunad)と呼ばれるきれいな民族衣装に身を包んだ人々がたくさんいました。赤、白、紺色のノルウェー国旗によく似合う、赤、白、黒をベースにした民族衣装です。各地方によって、その色やデザインは少しずつ変わりますが、刺繍の美しい民族衣装です。私が長年住んでいたスウェーデンの国旗は黄色と青色です。スウェーデンの民族衣装も黄色と青色がベースになっていることを考えると、北欧の人たちにとって国旗がかなり身近な存在となっており、生活の中でよく使用され親しまれているのも納得できる気がします。
中学2年生の職業体験週間
中学2年生(ノルウェーでは9年生)の長女には、5月に職業体験週間(Arbeidsuke (PRYO))というものがありました。これは生徒が自分で興味のある職業を選んで、一週間その職場で仕事を体験し、勉強するというものです(参照1)。学校によっては、一週間ではなく3日間だけというところもあるそうですが、ほとんどの学校では一週間の職業体験ということになっています。
生徒はまず個人で、または少人数のグループで、どんな職業が面白そうかと検討し、行く先の職場へコンタクトをとります。娘のクラスでは、スーパーマーケット、レストラン、ブティックでの仕事を選ぶ生徒が多かったそうです。中学生の職業体験カリキュラムは、社会の中で広く認知されていますから、生徒の受け入れが可能な接客業などでは、割と簡単に職業体験をさせてくれるようです。しかしこのコロナ禍で、受け入れ先が見つかりにくかった生徒や、興味のある職場に両親がいる場合は、両親の勤め先へ行く生徒もいます。生徒は職業体験週間のひと月ほど前までにどの職場へ行くかを決めて、そこの責任者に了解のサインをもらい学校に提出します。職業体験とはいえ、生徒が実際にできることは限られています。ですから生徒は職業を観察し、その内容を考察してレポートにまとめるという目的があるそうです。ちなみに隣国のスウェーデンでも同じように、中学生の職業体験週間があります。中学生のうちに、社会で働く感覚を経験してほしいという考え方なのでしょうか。高校を卒業してすぐに大学へ進学するのではなく、まずは社会に出て仕事をして、経験を増やしたり貯蓄をしたりするという考え方も一般的に受け入れられている北欧ですが、このような考え方は若いうちから受けている教育の積み重ねの反映でもあるのかな、と個人的には思います。現実的には、ノルウェーでもスウェーデンでも18歳で成人と認められる国なので、経済的にも自立することを求められる人は多いでしょう。高校卒業後は進学するのか就職するのか、人によって選択する道は様々なので、学業と同じように職業体験も身につけるべき必要な知識だという考えなのだと思います。
長女は、学校の先生の仕事が見てみたいということだったので、私の職場へ来ることになりました。時期的にはちょうど試験が重なる期間だったので、具体的に授業を体験できることはありませんでした。でも、授業のプランを立ててから試験を行って成績を付けるまでの流れを説明したり、普段はどんな仕事内容があるのかを見てもらうことはできました。娘の担任の先生が抜き打ちで、生徒たちが職業体験をしている職場を訪問し生徒の様子を確認する、というサプライズもありました。生徒は担任の先生が見ているなかで仕事をするのは緊張するでしょうが、気持ちを引き締めることができたと思います。生徒が怠けずに職業体験をしているか、チェックをしに来てくださったのは有難いですね。どの生徒も普段はできない職場体験ができ、とても良い学習になっただろうと思います。娘は、「学校の先生は授業以外にも、たくさんの事務仕事があるのね」と知ったそうです。たしかに私も中学生の時は、あまり先生の仕事の内容まで理解できませんでしたから当然です。私にとっては、子どもの目線でものごとを観察するのも楽しい体験になりました。
今学期ももうすぐ終了します。長い夏休みが終わったら、秋から長女は中学3年生です。来学期は、高校進学へ向けての課題が次々にやってくるでしょう。たくさんの選択肢があるなかから、子どもがどんな方向を選ぶのか、楽しみに見守ってみたいと思います。