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【国際都市ドバイの子育て記 from UAE】 第7回 ラマダン中のドバイ 昼の部

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ラマダン・カリーム(ラマダンおめでとう)!

イスラム教徒の断食月であるラマダン期間中、ラマダンを祝うこの挨拶があちこちで飛び交います。エジプト出身でイスラム教徒の元力士、大砂嵐が断食しながら土俵に上がったことで、日本でも脚光を浴びた「ラマダン」。最近は耳にすることが多くなったのではないでしょうか。

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Wafiモール内。Ramadan Kareem の文字が掲げられている。


「ラマダン」とは、イスラム教のヒジュラ暦の9番目の月のことで、イスラム教の聖典コーランが神から啓示された「神聖な月」。このラマダン月に、ムスリムが日の出から日没まで一切の飲食を断つ「断食」が行われます。一年のうち一番宗教色が濃くなるこの時期、ドバイに暮らす人々がどんなふうに過ごしているのかご紹介します。

毎年11日前倒しになる

ドバイでは普段の生活は西暦のカレンダーに基づいています。しかし、宗教的行事や祝日は、イスラム教の暦であるヒジュラ暦を使います。この「ヒジュラ暦」は太陰暦で月の満ち欠けに基づいており、西暦(太陽暦)より一年が約11日短いため、ラマダンの期間も毎年11日ずつ前倒しになります。

私がドバイで初めて体験した2014年のラマダンは、6月29日から7月27日。2017年のラマダンは夏至(6月21日)を挟んでいて、北半球に住むムスリムにとっては一番つらいラマダンでした。一年で一番日が長い夏至の前後は、断食の時間が長くなるのです。2018年の今年は、5月17日のスタートでした。

 開始日最終日
2014年6月29日7月27日
2015年6月18日7月16日
2016年6月6日7月5日
2017年5月27日6月25日
2018年5月17日6月15日

月を肉眼で確認する

毎年11日ずつ前倒しになるラマダン。それだけでも外国人にはややこしいのに、いつラマダンが始まるのか、その正確な日が直前まで発表されないのには、軽いカルチャーショックを感じます。というのも、ラマダン月のスタートは新月の日と定められており、イスラム教の権威者で構成される「新月観測委員会」が高いところに登って、肉眼で月を観察。新月が確認されて初めてラマダン入りが宣言されるのです。天候など確認状況によって、開始日が一日二日、予定よりずれることも珍しくありません。月を肉眼で直接確認というレトロな方法をいまだに採用していることも、そんなに大きなイベントの日程が簡単に覆されることも日本人にはなかなか理解できません。

ラマダン終わりの日(=新月)も同様。しかも、ラマダン終了後すぐにラマダン明けのイード(=祝日)、そのあとに犠牲祭のイードと、日本のゴールデンウィーク並みの長期休暇が控えており、その開始日も月の満ち欠けを観測する新月観測委員会の判断に左右されます。長期休暇に旅行などを計画する場合は、直前まで月の満ち欠けに翻弄され右往左往することになります。

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ラマダン中によく見かけるマジリステント。
日没後デーツやアラビックコーヒーがふるまわれる。


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モールのディスプレイ。
ラマダン中は月がモチーフになったディスプレイを目にすることが多くなる。


ラマダン中の飲食店

ラマダン中、イスラム教徒は日の出から日の入りまで一切の飲食を断ち、神の恵みに感謝をします。断つのは飲食だけではなく、煙草、嗜好品、一切の娯楽を控えなければなりません。ファーストフード、レストラン、カフェなどほとんどの飲食店は、夕方まで閉店。遊園地なども同様です。

断食を免除されるのは、旅行者、妊婦、生理中の人、高齢者や乳幼児、重病人など。ただし、旅行者、妊婦、生理中の人は、断食ができる環境になったら、断食をしなかった日数を補わなければなりません。子どもの断食は義務ではありません。物心ついたころから、周りの大人をまねて最初は数時間だけ挑戦。徐々に慣らしていって、10歳過ぎごろから本格的に断食を始めるようです。

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ラマダン中のカフェ(ドバイモール)。

観光都市ドバイでは、ビジネス街やドバイモールなどで、外国人のために営業している店もちらほら見かけます。毎年事情は違いますが、2017年はドバイモールのフードコートはついたての中で営業されていました。

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ドバイモールフードコートの入り口。飲食している姿が外から見られないようになっている。


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子どもと断食をしない人のための飲食エリアと書いてある。


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ドバイモールのフードコート。食品陳列棚が見えないように黒い布で覆われている。


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ドバイ・ヘルスケア・シティ(第6回記事参照)のフードコート。カーテンを閉めて営業。


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ドバイ・ヘルスケア・シティのフードコート。
一見営業していないように見えるが、営業中の文字が見える。


すべてがラマダン・モードに

この期間中、断食をしない非ムスリムの私たちの生活も大きく変わります。変化はラマダン前から。飲食が関わってくる誕生日会や親睦会などはすべて前倒しされ、ラマダン前に済ませてしまうため、子どもの誕生会や送別会、懇親会など、ラマダン前は食事会ラッシュとなります。一旦ラマダンが始まると、非ムスリムも「控え目モード」に切り替わり、昼間の外出はなるべく避け、室内や居住区内で過ごすことが多くなります。外出する場合も、水を飲むときはトイレや人目のつかない所で済ませます。

UAEではラマダン期間中の就業時間は通常の8時間から6時間に短縮されます。夫の会社では、現地スタッフの就業時間は8:00~14:00。14:00に終わる会社が多いため、ラマダン中の帰宅ラッシュは14:00~15:00に変わります。断食をしている人たちは、暑さ、空腹、睡眠不足の三重苦で恐ろしくイライラしているため、ラッシュの混乱は筆舌に尽くしがたく、クラクションが鳴り響くカオスとなります。

日本人学校では、ラマダン前にラマダンについて学ぶ時間が設けられ、ラマダンの意味やラマダン中の過ごし方について細かく指導されます。

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日本人学校からもらったプリント。「現地の人が大切に思う文化に対して気を遣うことは外国に住むうえで大切なことです」とある。


断食をしている現地スタッフに配慮して、水は教室で飲む、普段は学校内のどこで食べてもよいお弁当もこの期間中は教室で食べる、通学バスの中でも極力水を飲むのは控えるよう指導されます。UAEの学校はラマダン期間中13:30までと決められており、日本人学校の子どもたちも1か月間毎日14:00には帰宅します。習い事などもラマダン期間中はお休みになったり、時間が繰り上げになったりと控えめになります。慌ただしい普段の生活をリセットして、子どもたちも居住区内のプールでのんびり遊んだり、本を読んだり、リラックスして過ごすいい機会になります。

次回はラマダンのお楽しみ「イフタール」についてお伝えします。

筆者プロフィール
森中 野枝

都立高校、大学などで中国語の非常勤講師を務めるかたわら、中国語教材の作成にかかわる。
学生時代中国・北京に2度留学したあと、夫の仕事の都合で2004-2008 北京に滞在。2011-2013カナダ・トロント滞在。2013-2017 アラブ首長国連邦ドバイ滞在。現在はサウジアラビア、ジッダに住んでいる。
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