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論文・レポート

【国際都市ドバイの子育て記 from UAE】 第6回 ドバイの病院事情

森中 野枝

2018年5月25日掲載

新しい国に引っ越して、学校選びの次に直面するのが「病院」と「美容院」探し。どの国にも必ずあるけれど、適当に選びたくないのがこの二つ。自分に妥協せず、でもどこで折り合いをつけるか、難しいところです。「美容院」はさて置いて、今回は「病院」がテーマです。

各国アレルギー事情と住まい選び

振り返ってみると、中国・北京で長女を出産した2005年からいろんな国のいろんな病院に通いました。今は健康な私も、幼少期は喘息で入退院を繰り返す、病弱を絵に描いたような子どもで、今でもダニアレルギーです。3人のわが子も重篤ではないものの、多かれ少なかれなんらかのアレルギー持ち。新しい国に引っ越す前は、必ずその国のアレルギー事情を調べるようにしています。どんな花粉が飛んでいるか、ダニが発生しやすい気候かなどは必須項目。私の場合、環境汚染は体調とはあまり関係がなく、大気汚染が深刻な北京では、アレルギー症状が完全に影を潜めていて絶好調でした。乾燥・低温の北京は私の天敵のダニが発生しにくいのです。転勤族というのは、住み慣れた場所と全く異なる環境に身を置き治療をする「転地療法」を知らずのうちに実行しているようなもので、そういう意味で北京は私にとって天国のようなところでした。

しかし、住む場所を自分で選べないのが転勤族。いつもうまくいくとは限りません。ドバイは高温多湿のダニ天国。私のネットの事前調査では、「ダニアレルギーはUAEの国民病だ」のような記事がヒットし、憂鬱になりました。しかも、私たちの住まいには、ダニの温床となる絨毯が隅々までびっしり敷き詰めてあり、見るだけで鼻がムズムズ。ダニ天国の国で、ダニ絨毯に囲まれて生活するのに耐えられず、交渉して絨毯をすべてはがし、タイルに張り直してもらうという強硬手段に出ました。アレルギー持ちは、自分に合った住環境を作るのも一苦労です。

毎回考え付く限り完璧な住環境を整えても、中国でも、カナダでも、ドバイでも、病院通いの思い出はたくさんあります。

本場の漢方薬でアトピー治療~中国・北京~

3人の中で一番私に体質が似ている長女は、生後間もなくぽつぽつと湿疹が出始めあっという間に全身に広がり、食物アレルギーが原因のアトピーと診断されました。中国の地の利を生かそうと、生後6か月から母乳経由で漢方薬を飲み始めました。母乳経由というのは、まず娘の体質に合わせて漢方薬が処方され、それを私が飲み、そして娘が私の母乳を通して漢方薬を服用するという、まさに母子が一心同体となって行う治療法です。漢方薬も本場ですから、日本でポピュラーな粉の既製品の漢方ではなく、一人一人の体質に合わせたオーダーメイドです。薬は鍋で長時間煎じたどろどろの液体で、泥と木の根っこを合わせたような味がします。一回の服用量は200ml。娘のためなら飲めるけど、自分のためなら飲まなくてもいいと思いながら頑張って飲みました。体質が合っていたのか、目覚ましい効果があり、1歳半くらいからは娘が自分で直接ストローを使ってちゅるちゅると飲むようになりました。長女を連れてあちこち病院巡りをし、赤ちゃんに漢方薬を飲ませるならドクターの診断が理解できるぐらいの知識は身に着けておきたいとの思いで、私は中国医学を学び始めました。そのおかげで、中国医学という新しい世界に出会い、そのうち自分が専門としていた中国語学から中国医学に転向したいとまで真剣に考えるほど漢方の魅力にとりつかれました。あのまま北京にいることができたなら、きっと北京中医大学に通っていたことでしょう。

「病院通い」のための英語力

中国語に携わっていたおかげで北京では言葉の壁がなく、日本と同じように自由に病院巡りができました。しかし英語でとなると、話は違います。日常会話は多少できても病院で子どもの病歴や症状を説明したり、ドクターの説明を正確に理解するためにはしっかりした英語力が必要です。私は一念発起して、英語学習のゴールを「病院で子どもの病状を説明し、ドクターに質問ができる英語力を身に着ける」と設定し、カナダに引っ越した2011年から今までずっと英語学習を細々と続けています。実践の機会には困ることがなく、気軽に病院に行けるようになったのは子どもたちのおかげだと思っています。

医療ツーリズム

さて、ドバイの医療環境は、これまでに住んだ北京、トロントと比較しても、費用さえ気にしなければ恵まれていると感じました。

総合病院は国立と私立に分けられ、UAE国民の場合、国立病院での治療費は無料。私立病院では治療費の20%を負担します。外国人の場合、私立病院は全額自己負担、国立病院の中には外国人でも診察代が無料のところがあります。(アラブ首長国連邦(UAE)の医療機器市場 https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07000700/uae_medical_device.pdf 医療制度の概要より)。

特筆すべきは、経済特区の一つとしてドバイ・ヘルスケア・シティという広大な医療特区があることです。地下鉄でのアクセスも便利で、特区内には130を超える医療施設があり、5500人以上の医療従事者が働いて(http://www.dhcc.aeより)いて、富裕層をターゲットに高度な医療を提供し、医療ツーリズムのハブとなることを目指しています。ここには、受付などすべて日本語で対応してくれるクリニックや、日本人医師が常駐し日本語通訳も提供している病院もあり、ドバイ在住の日本人には、多くの選択肢が与えられています。もちろんドバイ・ヘルスケア・シティ以外にも多くの医療機関があり、ロケーションで選ぶこともできます。

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ドバイ・ヘルスケア・シティの中にあるビル

ドバイの病院への行き方

加入している保険の種類や会社の方針によって大きく異なりますが、私は次のような方法で病院に行っていました。まず総合病院に電話し、症状、希望の科、時間帯を伝え、都合が合えば予約を取ります。合わなければ、他の病院に電話します。病院はすべて予約制で、長時間待たされることはほぼありません。

病院では、受付→診察→支払いという順番です。医療機関が加入している保険と提携していればキャッシュレスで受診でき、そうでなければひとまず治療費を立て替え、あとで保険会社から返金されます。診察料は一回につき500AED(約15,000円)が相場。それに検査代、薬代などが追加されます。入院の場合は、入院する前に高額のデポジットを要求され、退院時に差額を返金されます。

我が家の病院通いは、風邪、胃腸炎などマイナーな病気はもちろん、息子の中耳炎、次女の高熱→髄膜炎の疑いで半日検査入院、夫の火傷、息子が椅子から落ちておでこを切ったり、一通り経験しました。長女は咳が半年以上続き、3件の病院でそれぞれ違う診断をされ、薬をたくさん飲んでも治らず。中国人の漢方医がいる病院で漢方薬治療しても効果なし。最終的には、日本に一時帰国しているときに治療し完治しました。

病院探しには、「ネット情報」と「口コミ」が重要です。外国人が80%を占めるドバイでは、英語のネット情報が充実していて、Expat(駐在員)のフォーラムなどが役に立ちます。英語で「ENT(耳鼻科) doctor Dubai」や「Asthma(喘息) Dubai」など具体的検索語を入れ、根気よく投稿を読んでいると病院名やドクターの名前が出てくる場合があります。口コミは特に、子どもの数が多い家庭や、ドバイ滞在歴が長い家庭のお母さんから貴重な情報をもらいました。

いろんな情報を駆使して病院ジプシーをし、我が家から通いやすい場所にある総合病院はほぼ制覇しました。ドバイ3年目にやっと信頼できる小児科の先生に出会い、そのドクターを勝手に我が家のファミリードクターということにして、その後はほぼ総合病院にかかることなくそのクリニックにお世話になりました。

虫歯はお年玉で治療

病気だけではなく、歯医者も頭痛の種です。まず、高い費用。加入保険がカバーしていなければ、歯科は全額自費になります。自己負担の我が家は、今まで歯の治療にいくら費やしたかわかりません。虫歯1本に3万円などざらで、ドバイ1年目で長女が作った虫歯の治療には全部で10万円近くかかりました。友人の4歳のお子さんが虫歯になった時は、治療中暴れるのを防ぐために全身麻酔が必要だといわれ、70万円治療費がかかると見積もりを出されました(その後別の病院にて数万円で治療)。

子ども3人が虫歯になるリスクを抱えている我が家では、いい歯医者を探すよりまず「虫歯にならないこと」が大切と考えました。子どもの大ブーイングの中、我が家のルールを「虫歯治療費は自分のお年玉から出す。出したくなければ虫歯にならないように努力すること」に決定。その代わり虫歯を作らないように教育し、考え付く虫歯ケアグッズはすべて日本から用意します。フロス、フッ素入り歯磨き粉、ヘッドが大きい歯ブラシ、小さい歯ブラシ、歯垢を染める薬、マウスウォッシュを一年分。夜の歯磨きは、自分で歯垢染めを使い、鏡で歯垢を確認しながら磨く、必ずフロスをする。小さい子どもは仕上げ磨き。歯医者に気軽に行けないから、意識を高くし、自分たちの歯は自分たちで守るしかない。長い海外生活の中で行きついた我が家の家訓です。 国によって衛生状況や医療システムなどが大きく異なる中、病院探しは私にとってその国を知る重要なツールでもあります。海外では、よい病院、信頼できる医師に巡り合うまで日本よりちょっと時間がかかる。そういう認識で、焦らず、気長にそしてあきらめず、楽しみながら、我が家の病院探しは今日も続きます。


筆者プロフィール

森中 野枝

都立高校、大学などで中国語の非常勤講師を務めるかたわら、中国語教材の作成にかかわる。
学生時代中国・北京に2度留学したあと、夫の仕事の都合で2004-2008 北京に滞在。2011-2013カナダ・トロント滞在。2013-2017 アラブ首長国連邦ドバイ滞在。現在はサウジアラビア、ジェッダに住んでいる。
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