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論文・レポート

【国際都市ドバイの子育て記 from UAE】 第5回 ドバイの習い事事情

森中 野枝

2018年2月16日掲載

引っ越しが多いと、子どもの習い事を一時的に中断させなくてはならないのも大きな悩みの一つです。ましてや、異国への引っ越しとなると文化も言語も異なるため、子どもに合った先生や教室を見極めるのも一苦労。子どもが引っ越し前にしていた習い事と転居先で通いやすい習い事が一致するのは、ごく稀です。子どものやる気を大切にしたい反面、情報収集に時間がかかったり、前に住んでいた国や地域の価値観を引きずって気持ちを切り替えられなかったりして、どうしてもブランクが空いてしまいます。

我が家の長女の場合、ちょうど新しい習い事を始めるのによい時期に目まぐるしく生活が変わりました。1年生の時に東京からカナダへ引っ越し、3年生の最初の一学期は日本、そして2学期からドバイへ移動。学校と普段の生活を立ち上げるのに手がいっぱいで、習い事までうまくサポートできなかったという苦い経験があります。

カナダで反省

東京でピアノを習っていた長女。カナダに引っ越したとき「ピアノを続けたい」と言われたものの、最初の3か月は私も長女も新生活に慣れるのに精一杯。自宅まで来て教えてくれるという日本人の先生は費用が高いし、歩いて15分の所にある教室に通うとしても、まず英語でピアノを教えてもらって長女は理解できるのか、雪が降ったら子ども三人を連れてどうやって歩いていくのか、とうじうじ悩んでいたら、あっという間に長男が生まれ、赤ちゃんの世話に追われて、ピアノどころではなくなってしまいました。近場でできる習い事はさせたものの、結局長女の希望のピアノはかなわず。今から思えば、私の度胸のなさ(心配ばかりしていないでとりあえず始めさせる勇気、多少値段が高くても必要経費だと気持ちを切り替える懐の深さ)、能力のなさ(車を運転できない、語学力に自信がないなど)で、初めの一歩を踏み出せなかったからだと反省しました。

ドバイでも反省

ドバイに住み始めて、ドバイの様子がわかってくるようになると、「ああ、この国ではお金を払って子どもに運動をさせないといけないのだ」と悟りました。学校の通学はスクールバス。車社会のドバイは外を歩くことはほとんどない。学校から帰っても、遊ぶ友達も遊ぶ場所も少ない。大人も子どもも意識しなければ、体を動かす機会がほとんどないのです。小さいころから体が弱かった長女に、ドバイでは体を動かす習い事をお金と手間を恐れずやらせてあげようと意気込みました。 ドバイに引っ越した時、長女は小学3年生になっていました。「習い事なにをやりたい?できれば、なにか体を動かすことにしよう」と尋ねても、どれも嫌がらないけど消極的。バレエ、テニス、水泳、体操と一通り色々やらせてはみたものの、本人に特に熱意が感じられず。最終的に行きついたところは、やっぱりピアノでした。結局5年生になって、4年越しの願いが叶いピアノを習い始めました。だったらドバイに引っ越した時に、すぐピアノを始めさせればよかった、とまたまた反省しました。 「お金、労力をいとわない」「子どもの特性を見極めて、本人の希望に最大限寄り添う」。長女から学んだこの教訓をもとに、他の子にはできる限りのことをしようと再び決心をし、ちょうど習い事を始めるのによい時期だった次女に希望を向けました。

インド式そろばん、スケートも

ドバイは人口の8割を外国人が占めるため、習い事もバラエティに富んでいます。珍しいところでは、「そろばん」。英語では「アバカス」といい、インド系の住人が多いため、インド式アバカスの教室があちこちにあります。日本のそろばんと違い、玉をピアノのように両手ではじいて計算するそうです。

暑い国に似つかわしくない「スケート」も人気の習い事。観光名所となっている人工スキー場の「スキードバイ」でもレッスンが受けられ、スキーのインストラクターの資格を取ったという高校生の話も聞いたことがあります。「ゴルフ」、「乗馬」「バイオリン」など、セレブな習い事が気軽にできるのもドバイならでは。そんな「セレブな習い事」事情はさて置き、我が家の子どもたちがドバイでした習い事をご紹介します。

居住区内でできる習い事

住居環境、周囲の環境によって様々ですが、子ども二人を日本人学校に通わせていた私たちが住んでいたところでは、居住区内で出来る習い事が人気でした。交通渋滞がひどいドバイで、外に出ずに習い事ができるのは、子どもにとっても大人にとってもストレスフリーです。

居住区内でできる三大習い事としては、英語、水泳、テニスが挙げられます。

英語は家庭教師を頼む人が大多数で、フィリピン人の講師に家まで来てもらって、マンツーマンで教えてもらうことができます。料金は、1時間100AED~150AED(約3,000円~4,500円)。 次に人気なのは、スイミング。居住区にあるプールで、コーチをお願いするとマンツーマンで1時間80AED(約2,400円)。ただ、日本のような教え方でなく、サバイバルスイミング。フォームの美しさは二の次で、「とりあえず泳げるように」はしてくれます。年長児だった次女は、クロールの息継ぎを横ではなく、「とりあえず」前でするように教えられ、そのまま癖になって、前で息継ぎをするクロールしか泳げなくなってしまいました。結局休日に私が自らプールに入って手取り足取り教えて矯正するはめに。コーチの教え方を黙って見ていてはだめだなと痛感しました。

3番目は、テニス。居住区内に無料のテニスコートがあり、マンツーマンあるいは少人数のグループで教えてくれます。テニスはどんな国でも安全かつ手軽にできるスポーツで、社交にも役に立つため、大人の習い事としても人気です。

居住区内の習い事で共通しているのは、マンツーマンもしくは少人数で学べる、費用が高い、指導者を選べない、の3点です。水泳やテニスなどはマンツーマンである必要はないのですが、そこが選べないのがネック。でも、とりあえず何かをすぐに始めさせるという意味では、最適だと思います。

居住区外の習い事

最初は居住区内でやらせていた習い事も、高いお金を払っているのにいちいち口出ししてコーチを指導しなくてはならないことに不満を感じ始めました。私にとっては、送迎のストレスよりも、満足ができないサービスに高いお金を払うストレスの方が大きく、それなら多少遠くても子どもを安心して任せられる習い事をさせたいという気持ちがわいてきました。当時インターナショナル・スクールに通っていた次女は小学校入学と同時に日本人学校に転校させる予定で、インターナショナル・スクールで身に着けた英語力をどうやって保持させるかということも意識し始めた時期でした。活発な次女に英語で体を動かす習い事をさせて、英語保持も運動不足解消も一気に解決したい、と一石二鳥を狙って、居住区外の習い事を探し始めました。

地元の習い事教室は、バレエ教室、ダンス教室、音楽教室、ミュージカル、ラグビー、サッカーなど、一通りあります。近くに体操クラブがあったこと、体操は筋肉がバランスよくつくため、そのあと他のスポーツに転向しやすいと聞き、まずトライアルを受けさせて通い始めました。

スパルタ「体操クラブ」

 次女が通っていた体操クラブは、地元でも人気の大規模なクラブで、3歳から高校生まで生徒が300人以上いました。平日は15:00~19:00、金・土は13:00~17:00にクラスがあり、自分の都合に合わせて曜日を選ぶことができるのも魅力。新規ではなかなか入れない人気のクラブでした。料金は学期ごとの支払いで、計算すると1時間60AED(約1,800円)。週2回、2時間のクラスに通わせると、1か月860AED(約25,800円)。二人通わせると1か月5万円です。それでもドバイでは比較的リーズナブルな部類にはいります。

「体操」といっても日本でよくある、跳び箱や縄跳びなど学校の体育の授業を主流にしているような体操教室ではなく、「器械体操」のクラブでした。体育館に設置してある器具は、すべてオリンピック仕様。コーチ陣はほぼルーマニア、ウクライナなどの東欧出身で、世界選手権やオリンピックなどを経験した超一流のコーチたちばかり。ルーマニアのナショナルチームのコーチのポストを蹴って、このクラブに来たといわれるコーチもいるほどでした。ちょっと習い事に体操をという乗りのわが子には、もったいないほどの環境でした。

年長さんの9月からこの体操クラブにまずは週1回通い始めた次女。インターナショナル・スクールで褒められて育った次女は、東欧出身の基本笑わないコーチたちに慣れるのに長い時間がかかりました。できて当然、できるようになっても全く褒めてくれない、親が見ていてもちょっとかわいそうだなと思うほど。怒られ慣れていない次女はちょっと注意されると「怒られた」と感じ、控室で涙することもしばしば。これはとんでもないところに連れて来てしまったかもと思い始めたころ、次女の負けず嫌いが功を奏して、家のベッドで猛練習をし、だんだんと楽しいと感じるようになってきました。

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体操クラブに通い始めたころの次女。

どうやって通うか

泣いたり怒ったりしている次女をしり目に、私の最大の関心事はどうやって通うか、でした。ドライバーなし、車なしの私は、タクシーあるいは公共交通機関を使って自力で連れて行くしかありません。しかも、体操教室の場所は、メトロ(地下鉄)では通いにくい場所にあります。

家から体操クラブまでは、普段なら車で30分。体操を始めたころは、16:00~17:00の比較的早い時間帯の低年齢クラスに通っていました。行きは方向的にも時間的にも混まないためスムーズですが、問題は帰りです。体操クラブの場所は大通りから外れた奥まった場所にあり、タクシーを捕まえるのに10分歩いて大通りに出なくてはなりません。ドバイで10分外を歩く、しかも5歳と2歳の子ども連れとなると、夏は死活問題。しかも、体操クラブが終わる17:00過ぎはちょうどタクシーのシフトチェンジと帰宅ラッシュが重なる魔の時間帯。おまけに当時通っていたのは週末前の木曜日(ドバイの週末は金・土、第3回参照)。10分歩いて大通りに出ても、待てど暮らせどタクシーがつかまらず。慣れないころは、たった1時間のクラスのために帰宅に1時間半かかったり、タクシーがつかまらないためしかたなくバスに乗り、降りるところを間違えて結局またタクシーに乗ったり、失敗談は枚挙にいとまがありません。最終的には、Uber という配車アプリを使って、体操クラブの目の前にタクシーを呼ぶことができるようになり、このアプリを使うようになってからは習い事の送迎問題だけでなく、日頃の行動範囲も一気に広がりました。

次女の年齢が上がって、17:00~19:00の時間帯の遅いクラスになると、今度は3歳だった長男のことが気になり始めます。ナーサリーに通い始めた長男、朝は6:00前に起きないとスクールバスに間に合いません。お昼寝もしなくなってきたこともあり、出来るだけ早く寝かせたい。次女も長男もどちらもうまくいくようにとの試行錯誤の結果、以下のような方法にたどり着きました。

長男がナーサリーから帰ってくると、まずシャワーを浴び、パジャマに見えない比較的ゆったりした服に着替えさせる。二人分のおやつ・お弁当を用意、歯ブラシセット、時間をつぶす絵本、おもちゃ、ベビーカー、ブランケットを持って、タクシーで体操クラブへ。次女が体操をしている2時間の間、長男に絵本を読み、おもちゃで遊ばせ、お弁当を食べさせ、歯磨きをして、トイレに行かせる→帰りの車の中で寝かせて、そのままベッドへ。

今書きながら、我ながらよくやったなと思います。でも、振り返ってみれば、そんなときもほんの一瞬。ドバイを離れるころは、長男も大きくなり、長女に頼んで家に置いて出かけることもありましたし、次女を体操クラブに置いて私は家に戻り、仕事帰りの夫に次女のお迎えを頼めるようになりました。

結局、次女は年長さんの9月からドバイを離れる3年生の6月まで丸3年間、体操を続け、すっかり体操大好きっ子になりました。週2回、合計4時間のクラスに参加し英語環境に身を置いた効果もあり、英語も比較的うまく保持できたのではないかと思います。最後にはアブダビの大会に参加し、銅メダルももらって、娘はもちろんのこと、私も「やり遂げた」気持ちでいっぱいでした。

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2017年6月アブダビで行われた体操の大会。跳馬で銅メダルを獲得。

筆者プロフィール

森中 野枝

都立高校、大学などで中国語の非常勤講師を務めるかたわら、中国語教材の作成にかかわる。
学生時代中国・北京に2度留学したあと、夫の仕事の都合で2004-2008 北京に滞在。2011-2013カナダ・トロント滞在。2013-2017 アラブ首長国連邦ドバイ滞在。現在はサウジアラビア、ジェッダに住んでいる。
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