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【ドイツの子育て・保育事情~ベルリンの場合】 第5回 ドイツの小児科

要旨:

日本では息子の体調が優れないとすぐに小児科に駆け込み、そこで抗生物質を始め、色々な薬を処方してもらっていた。しかし、ドイツでは日本ほど通院の頻度は高くない。また薬に関しても、抗生物質などの薬はできるだけ使用しないスタンス。その代わり、自然を利用し、じっくり体本来の力を引き出して、体力、免疫力を高めていく。また、子どもの体力をつけるために、積極的に少し厳しい環境に身を置いていく。インフルエンザ予防接種に関しても接種してくれないところが多い模様。なお、ドイツでは18歳未満は医療費・薬費は無料である。
日本でもドイツでも保育園で集団生活を送っていると、病気が流行るたびに菌をもらってきます。日本では生後7か月から保育園に通い始めた息子ですが、保育園1年目は頻繁に体調を崩し、毎週のように小児科に通っていました。通院するたびに、抗生物質を始め、色々な薬を処方して頂きましたが、時には週2-3回通わなければならない時期もあり、ワーキングマザーの間では「部活動」と呼んでいた程でした。

保育園2年目、3年目となるにつれ、免疫がついてきたのか園をお休みすることも少なくなりましたが、3歳になってドイツに移住、現地の保育園に通い始めてからは、こちらの気候に体が慣れていないためか、それともドイツの保育園では日本とは別の菌が生息しているのか、体調を崩す頻度がまた増えてしまいました。

ドイツの医療事情は日本と異なることが多く、当初は戸惑いを覚えたことも少なくありませんでした。今回はベルリンでの小児科体験についてお話ししようと思います。

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かかりつけの小児科。ポップなサインが可愛らしい


前述のように、日本では具合が悪くなるとすぐに小児科に駆け込んだものでした。息子のかかりつけ医は、木曜・日曜および祭日以外は朝9時から夜6時まで開院していましたので、急に体調を崩した時でも安心してかかることができました。

ところが、ベルリンの小児科(診療所の多く)は開院時間が曜日によって午前中だけだったり、午後だけだったりとまちまちな上に、平日の一日と土曜・日曜、そして祭日はお休みです。ですから、タイミングを逃すとすぐに診察してもらえない可能性があります。これは渡独後、不便かつ不安を覚えたことでした。

ただ、時間が経つにつれて、こちらの人たちの病院の使い方は日本にいた時のとは少し異なることに気づきました。というのは、日本では何かあるとすぐに病院に駆けつけますが、こちらでは予約をとっても長く待たされることもあり、日本ほど通院の頻度は高くありません。その分、薬局が発達しているので、薬剤師さんに症状を説明して適切なお薬をもらい、十分な休養をとります。

そんな状況ですから、ドイツに来て初めて息子が40度近く発熱した時も、私の心配をよそにドイツ人の夫は「様子をみてみよう」と悠長に構えていました。しかし、息子は日本にいたときから気管支が弱い体質です。2日たって熱が37度まで下がりましたが、咳は相変わらず続いていました。息子が咳込んでいるときは本当に可哀そうでしたが、夜中に、咳で起きてしまうので、こちらも睡眠不足で辛くなってきました。

さらに、保育園でも複数のお友達が風邪をこじらせて、ついに病院で診察してもらったとのこと。さすがに夫も「もう病院に行った方がいいだろう」と言い出し、小児科に連れて行きました。

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広い待合室の中にある滑り台


小児科に到着すると、まず広い待合室に驚きました。壁一面に子どもたちが描いた絵が飾ってあります。息子はすぐさま滑り台や木馬で遊び出し、ご満悦。玩具や本もたくさん備え付けてあるので、熱が下がっている子どもたちは飽きることなく、順番待ちができます。やがて名前を呼ばれ、診察です。息子は女医さんにおとなしく胸の音を聞かせたり、口をあけてのどの様子を見せていたので、ご褒美にグミベアーをもらえました。日本の小児科ではいつもアンパンマンシールをもらっていましたが、ここではご褒美もドイツらしいです。

診察の結果は「胸の音もきれいだし、ただの風邪だから心配ありません。沢山水分をとって、できるだけ外に出てね。」とのことでした。

「ああ、よかった!」と胸をなでおろしましたが、一点気になることが。「今、できるだけ外に出てっておっしゃいましたか?外は氷点下で寒いのですが、まだ完治していないのに大丈夫ですか?」

「息子さんは熱も下がっているし、外に出て新鮮な空気を吸って、日光浴するのが一番よ。太陽の光は一番の薬なんだから。今日みたいなお天気の日は特にね。できれば森林浴みたいな自然の中で散歩するのが一番。そして呼吸器を強くするには、バルト海みたいなところで、潮風にあたるのもいいわよ。」

ちなみに、バルト海とは、ヨーロッパ大陸と北欧の間にある海。ベルリンよりさらに北の非常に寒いところです。

「そんな寒いところで大丈夫ですか?」

「子供の免疫力と体力を上げるには、積極的に、少しチャレンジングな環境にあえて身を置かせるのよ。そうしないと、強い大人になれないからね。」

「わ、わかりました。では、薬ですが、今のところ、薬局ですすめられた痰切りの薬を1日2回飲んでいるのですが。夜の咳が激しいので、他にお薬処方して頂けますか?」

「では、夜用に咳止めを出しておきましょう。1日1回だけ晩御飯の後に飲んでね。」

1種類だけしか薬を処方されなかったことに不安を覚えたので「あと、日本では同じような症状の時、こういう薬を飲んでいたんですけど...」と抗生物質、痰切り、咳止め、気管支を広げる薬、2種類の吸入の薬など、日本の医師に処方されていた薬セットのリストを先生に見せました。

しかし、医師はきっぱりとこう言いました。「これらの薬は一切必要ありません。特に抗生物質は使いません。時間がかかってもいいから、じっくり体の本来もっている治癒力で回復させるのです。保育園は今週はずっとお休みしてね。ただ、吸入はいい考えね。でも薬じゃなくて、潮風と同じ成分の塩水にしましょう。」

というわけで、診察終了。結局、処方された薬は、夜用の咳止め、吸入の機器と塩水のみ。日本のように「薬リスト」は必要ありません。ここでは、緊急時や高熱の場合以外、子どもの体調が優れない時は、できるだけ薬に頼らず、自然を利用し、じっくり体本来の力を引き出して、体力、免疫力を高めていくのが基本的な考え方のようです。

しかも、それを能動的に行って、また積極的に少し厳しい環境に身を置いて体力をつけていきます。ですから、保育園でも台風並みの悪天候でない限り、お散歩に出かけます。ベルリンは大都会ですが、緑や公園もとても多いので、自然たっぷりの散歩スポットにはことかきません。そうやって、成長する頃には厳しい気候に耐えられるだけの体力がついているのでしょう。

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待合室の中にある木馬


ちなみに、日本では毎年必ず受けていたインフルエンザの予防接種ですが、こちらでは「風邪にかかって体力をつける」「予防接種の副作用の危険性」という観点から、接種してくれないところが多い模様です。

最後に費用ですが、ドイツでは18歳未満は医療費・薬費は無料です。従って、この日処方してもらった吸入の機器は、日本の小児科で使用していたものと同じ大型の本格的なものでしたが、無料で頂けました。

このように医療制度や考え方は日本とは異なりますが、どの国に住んでいても健康第一は基本です。バランスのとれた食生活と十分な睡眠を、日本にいた時以上に心がけて生活するようにしています。

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処方して頂いた吸入器


筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。
慶應義塾大学総合政策学部卒業。
英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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