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【ノルウェー子育て記】第2回 高校の成績にコロナ禍の影響

前回の記事から少し時間がたってしまいました。気づけば季節は春。まだまだ寒い日もありますが、太陽がよく顔を出すようになってきました。以前住んでいたスウェーデンと同じように、ノルウェーの人も太陽がでると、ここぞとばかりに日向ぼっこを始めます。全身に日光を浴びるのは気持ちがいいものですね。数か月の暗くて長い冬が終わろうとしています。

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遠隔授業への切り替え

2020年から続くコロナ禍。あちらこちらで深刻な社会問題を生んでいますが、筆者の職場である高等教育の現場も例外ではありません。大学での対面授業が不可能になり、オンラインでの遠隔授業に切り替わったのが昨年の3月です。その後、小・中・高校でも遠隔授業が始まりました。昨年の夏以降は、小・中学校での対面授業は再開されましたが、新型コロナ感染の状況の変化により、対面授業になったりオンライン授業になったりと、2021年の春になっても不安定な状態です。

北欧諸国ではもともとインターネットの普及率が高く、利用頻度も高いため、オンライン授業への切り替えに伴う技術的な障害はあまりなかった様子です。しかし、対面授業の内容をオンライン授業の形態にあわせて変えたり、試験のやり方を検討したりと、現場の先生たちはかなりの作業を必要としていました。学生にとっても教師にとっても、パソコンの画面越しの授業を初めて体験した、という人は少なくありません。パソコンのカメラに自分を映して参加することに抵抗がある学生には、あえてカメラをオンにしなくてもよい、ということになったため、黒い画面が並ぶスクリーンの前で授業をすることに居心地の悪さを感じた教師はたくさんいるという話も聞きました。大学で教えている私自身も、このような状況の中でも授業が行えることに利便性を感じると同時に、学生との対話が極端に減ったことに寂しさを感じています。

「コロナ学年」

このたびのコロナ対応の一環で、どこの大学でも導入された遠隔授業を一通り経験したのち、教師間で授業に関する意見交換をする機会が増えました。そこでよく話題に上がるのは、試験の実施方法についてです。教室が使えないため遠隔で行うのですが、学生の手元が見えないので、画面の外で何をしているのか確認することができません。カンニングの可能性も否定できない状況で、すべての学生にとって公平な試験が行われているのか、ということが問題になりました。この課題への対策として、大学では筆記試験の代わりにすべてを口頭試問にする、時間制限を課して小論文を書かせる、などのアイデアが出されています。

さらに、これよりも深刻な問題として、昨年の春ごろからノルウェーのメディア等で議論されてきた問題があります。それは「コロナ学年(coronakullet)」と呼ばれている、2020年の6月に高校を卒業した学生たちの成績についてです。コロナ禍のなか、高校で授業が行われず、試験もできなかった高校生たちは、卒業に必要な筆記試験を免除されたため、例年よりも高校の最終評定の学年平均が高かった、というものです(参照1)。理由は様々だと思いますが、高校の先生がコロナ禍の混乱のなか、生徒たちのいままでの学業態度も考慮し、限られた時間で先生の裁量で成績を付けたので、例年よりも成績が甘く付けられたと解釈する人が多いようです。ノルウェーでは大学へ進学するための入試は存在せず、高校での最終成績を志望の大学へ提出することで、合格か不合格かが決まります。北欧諸国では高校を卒業しても、すぐに大学には進学せず、仕事をしてからまた学業に戻る人もたくさんいます。そのため、コロナ禍以前に高校を卒業した人は、この「コロナ学年」の生徒と同じ時期に大学へ願書を出す可能性もあるというわけです。このような理由から、2020年以前に高校を卒業し、これから大学への進学を希望する人には不利になるという議論が続いています。これに対応するための具体的な対応策は、いまのところ出てきていません。また、コロナ禍の影響で職を失った人たちが、大学への進学を希望する場合が増えており、これがさらに希望の学科への入学競争を厳しくしているという意見もあります。過去には、教師のストライキによって最終の筆記試験が行われなかった例もあるようですが、その場合も同じように特別な対応は無かった様子です。社会の変化や各学校での状況の変化に左右されないような、公平な評価を実施する方法をもう一度考え直す良い機会なのではないかと、個人的には考えます。

コロナ禍の影響

リモートワーク、オンライン授業など、働きかたや学びかたの変化が激しい昨今ですが、これによって遠方にいても仕事ができる、いままで会う機会が無かった人とも交流することができた、など良い面もたくさんあります。ただ、それと同時に外出の回数が減り、他人とのコンタクトが減ったことで精神的に参っているという人も多いようです。私の勤めている学科の学生についていえば、学業を途中で辞めてしまう人が増えたような気もします。このように学生のメンタルケアは、ノルウェーでも日本でも同様に、今後の課題となるかと思います。今後もしばらく続くであろう生活の変化にうまく対応し、健康に過ごすための知恵が必要だと強く感じます。

report_09_397_02.jpg 街なかにある新型コロナウイルス感染症の検査ステーション


筆者プロフィール
下鳥 美鈴

ベルゲン大学(ノルウェー)文学部外国語学科准教授。東海大学文学部北欧文学科卒業。ストックホルム大学で修士課程を終え、ウメオ大学(スウェーデン)で博士課程を修了。言語学博士。
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