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【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】 第47回 新型コロナウイルスのワクチン接種

要旨:

ドイツ国内での今夏の感染状況は非常に落ち着き、感染指数も5を切るまでになった。「通常の生活」が戻ってきているが、政府の「ウイルス検査とワクチン接種」政策の効果によるものだと言われている。昨年末から開始されたワクチン接種は、当初は3つの優先順位グループから行われていた。途中、アストラゼネカ製ワクチンの血栓問題などで接種状況が遅れたものの、大規模接種場を中心に順調に接種が進んだが、デルタ株の拡大に伴い、子どもを対象とした予防接種推進キャンペーンも展開されている。本稿では筆者の1回目接種体験を含むベルリンのワクチン接種状況をお伝えする。

キーワード:
ドイツ、ベルリン、新型コロナウイルス、対面授業、ワクチン接種、子どもへのワクチン接種、アストラゼネカ、ファイザー、モデルナ、大規模接種会場、シュリットディトリッヒ桃子

前回の記事を執筆中の5月初旬は、ドイツでは変異株感染の第3波の影響で、一日あたりの新規感染者数が2万人ほど、過去7日間の10万人あたりの平均新規感染者数(感染密度)も100程度、夜間外出禁止にするなど全国一律のルールを導入していました。あれから2か月たった7月上旬現在、ドイツの新規感染者数は一日平均500名前後、ベルリンでは0名の日もあり、また感染密度もドイツ、ベルリンともに5.0を切るまでになりました。

連邦政府がとっていた在宅勤務の義務措置は予定通り6月末で終了、学校も6月からは1クラス30人の通常対面授業に戻り、一般店舗の利用客の連絡先提出義務は廃止、映画館や博物館などの文化施設や、スポーツジムなども1年以上ぶりに再開するなど、皆が待ち望んでいた「通常の生活」が戻ってきています。

これらを可能としたのが、前回お伝えしたドイツ連邦政府の二本立てのロックダウン緩和策「ウイルス検査とワクチン接種」と言われています。前回は徹底したウイルス検査について記述しましたが、今回はもう一つの柱、ワクチン接種についてお伝えしたいと思います。

*本記事の記載事項は8月上旬時点でのものであり、規制内容などは随時変更される可能性があることをご了承下さい。

長いトンネルの先に見えた光

2021年が明けても、ドイツではロックダウンが続き、なお厳しい感染状況が続いていましたが、前年12月27日からアメリカのファイザー社とドイツのビオンテック社が開発したワクチンの接種が始まりました。費用は連邦政府が負担するため無料です。開始から1週間で既に22万人が接種を済ませたということで、フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領の言葉を借りると文字通り「長いトンネルの先に見えた光」となりました。

ただし、この頃はワクチン供給量に限りがあることから、国民を3つのグループに分け、下記のように優先順位をつけて段階的に接種を行っていくことが決められました。といっても、ワクチン接種は任意で、ドイツに居住もしくは日常的に滞在する者、ドイツに居住していないが特定の介護施設で働いている者なら誰でも受けることができます。

第1優先グループ:80歳以上の人々、高齢者施設や介護施設の入居者とその介護職員や施設職員、集中治療室や緊急治療、救急隊スタッフなどの医療関係者など。

第2優先グループ:70歳以上の人々、ダウン症・認知症・臓器移植患者など疾病リスクが高い人々、要介護者・妊婦等と濃厚に接触する者や警察機動隊員など。

第3優先グループ:60歳以上の高齢者、慢性腎臓病や慢性肝疾患、自己免疫疾患、がんなどの疾病リスクが高い者、警察官や消防士、保育士、教師、司法分野などの職員、家庭医や検査機関の職員、物流や交通機関の従業員、生活必需品の小売業の販売員など。

ここで特筆すべきは、ライフライン従事者が優先グループに入っていたことだと思います。ロックダウン中もスーパーなどの生活必需品小売業や交通機関は通常営業していましたし、経済をできる限り停滞させないために、親が働ける環境を守れるよう保育園の開園は多くの人が望んでいたことでした。

そして教育分野に関しては、対面授業ができないことによる子どもたちの教育の機会損失を最小限に食い止める、という目的があったようです。オンライン在宅授業は確かに非常時の学習形態としては機能しましたが、第45回の記事でお伝えしたように、地域格差や学習格差を拡大させてしまう、子どもたちの心身への悪影響が生じるなどのデメリットもありました。ですから、対面授業の復活は国としても優先度が高く、それに伴い、無症状患者が多いとされる子どもたちに日常的に接する教師をウイルス感染から守ることは、国としても自然な流れでの決断だったと思います。

ワクチン接種の進捗状況

冒頭に述べた通り、開始から1週間で既に22万人の人が接種を済ませ、ドイツのワクチン接種は順調な滑り出しを切ったように見えました。しかし、アストラゼネカ社製ワクチンに血栓症を引き起こす副反応の可能性があるとのことで、同社製ワクチンの使用をEU内で中止、または制限を設けるなどの混乱が見られました。ドイツ国内でも、何度も接種基準の変更が続き、同社のワクチン接種は60歳以上に限定されることとなりました(21年8月現在、この年齢制限は撤廃されています)。この混乱により、国内の接種状況もペースダウンすることとなってしまったのです。

教師である私も4月にワクチン接種券を受け取ってはいたのですが、そこには「アストラゼネカ社製の接種となります」と記述されていました。しかし、いったん接種計画はペンディングになり、結局、正式な予約手続きを行ったのは、5月に入ってからでした。

この他にも、ワクチンの供給が不安定になり、予防接種会場が一時的に閉鎖された時期もありましたが、これらの混乱が収まると、急ピッチで接種が進みました。ドイツ全土では約460か所の接種センターにて1日のワクチン接種回数が100万回を超える日が増え、5月上旬には130万回以上の接種が行われた日もありました。5月末にはドイツ全人口の約42%が1回、16%が2回接種済みとなったおかげで、6月上旬からは接種の優先順位は解除され、16歳以上であれば誰でも予約を取ることができるようになりました。

7月の終わりには希望者全員がワクチン接種を終えられると連邦政府は予想していましたが、同時点で約6割の国民が1回目の予防接種を終了しました。これは連邦政府が接種キャンペーンを大々的に進め、ワクチン接種者に特典を与えたことに寄与している部分が大きいと思われます。というのも、レストランや映画館などを利用する際、ワクチン未接種者はウイルス感染の陰性証明(48時間以内のPCR検査結果もしくは24時間以内の迅速抗原検査による陰性証明)を準備しなければなりませんが、ワクチン接種済みの人およびコロナに罹患し回復した人は、マスク着用は必要であるものの、そのような証明は不要です。他にも、接触制限、外出制限、自主隔離義務などもワクチン接種者および回復者は不要となっています。

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ベルリン大聖堂に掲げられたキャンペーンポスター(左)「コロナワクチンのために腕をまくろう」(右)
ワクチン接種会場および予約方法

では、ベルリンではどのようにしてワクチン接種が実施されているのでしょうか。当初はメッセ(見本市会場)や旧テンペルホーフ空港およびテーゲル空港などを利用した大型接種会場6か所(1日延べ2万回接種が可能)で行われていましたが、3月以降は診療所(家庭医や専門医)でも接種が可能になりました。現在は、このような大型接種会場、診療所、そして企業や団体主催の集団接種の3本建てに加え、新たに7月から設立された臨時会場(IKEAなどの大型ホームセンターなどの駐車場や大型ショッピングセンター内)でも接種が行われています。

この中で大型集団接種施設に関しては、既に国民の過半数の人口の接種が終わり、多くのスタッフを雇用する人件費と場所代がかかるため、秋には閉鎖予定、それ以降は診療所での接種がメインになるとのことです。

8月上旬時点での各会場での接種および予約方法は下記のとおりです。

診療所(家庭医など):直接主治医に連絡し、ウェイティングリストに載せてもらいます。診療所では、常にワクチンを用意しているわけではないので、いつ接種できるかはその状況によって異なります。また、医院や時期によって、扱うワクチンが異なるので、受けたいワクチンの種類に希望がある場合は、予約前にその旨、明確に伝える必要があります。

大型接種会場:オンライン予約のみでしたが、7月下旬より予約なしでも接種が可能となりました。ベルリン州の接種会場では現在、ファイザー/ビオンテック社およびモデルナ社の2種のワクチンが使われています。ワクチンの希望がある場合は、事前に予約しておきます。

企業や団体での集団接種:自分が勤務・所属している組織で集団接種をしている場合は、所属の管理部門に問い合わせします。集団接種が開催されない場合は、大型接種会場か診療所での接種となります。

ホームセンターや大型ショッピングセンターなどの臨時会場:さらに接種率を高めるため、7月以降に新たに設立されたもので、買い物のついでに予約なしでも気軽に立ち寄ることができます。モデルナ製やジョンソン&ジョンソン社製など場所によって接種可能なワクチンが異なります。

大型接種会場で予防接種を受けてきた!

上述のように教師である私は優先順位第3グループに入っていたので、一般の方々より一足先に大規模接種会場での接種となる接種券を受け取っていました。しかし、先述のようにアストラゼネカ社製ワクチンに関する混乱があったことと、私はファイザー/ビオンテック社製を接種したかったこと、そして副反応に備えて金曜日に受けたかった、という希望事項を優先して、インターネットで調べてみると、大規模接種会場の中でもアリーナ・ベルリン(Arena Berlin)という会場での接種が一番早いことがわかりました。といっても、6月に入ってからの接種となってしまい、その頃には周辺の優先扱いではない一般人でも接種が終わっている人が出ていたので、あまり優先順位第3グループに振り分けられたことは役に立ちませんでした。ちなみに、インターネットでは2回目の接種日も一緒に予約しますが、ドイツではワクチンの種類にかかわらず2回目接種は、1回目接種から6週間後となっています。

当日の予約時間は正午でしたが、前情報で会場は混雑しているとのことでしたので、少し早めに到着するようにしました。それでも予約の30分ほど前には、既に長蛇の列が! 一瞬ひるみましたが、どうやら前後の人々と距離を保つため、足元に立ち位置が記してあるため長い列になっていただけのようです。また、会場の誘導もスムーズで、比較的速く列が前進しており、入り口も3つ開けてあったので、10分ほどで会場に入ることができました。

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大規模接種会場のうちの一つ、アリーナ・ベルリン(Arena Berlin)。間隔を空けて人々が列をなしている。

入場口では、まずアルコールで手の消毒を行い、身分証明書のチェックが行われました。そして場内に入ると、順番に椅子に案内され、5分ほどで書類チェックブースへ、その後10分ほどで100ほどある接種ブースの一つに案内されました。スタッフがいたるところにいて、完全に流れ作業でスムーズに進むことができます。

いよいよ接種ブースに通されました。ブースの中は、書類を確認したり医師のアシストをしたりするスタッフと実際に接種を行う医師の二人体制ですが、私の番で、たまたまスタッフ交代のタイミングであったため、10分ほど待たされました。接種の緊張でなんだか落ち着かず、手のツボ押しなどして、気分を落ち着かせていました。

永遠に思われた10分後、新しいスタッフが来ると、「どちらの腕に接種したいですか? 利き腕と反対側をお勧めしますよ」など、やさしく話しかけてくれ、緊張をほぐそうとしてくれるのがわかります。

ほどなくして防護ガウンを着た医師の登場です。アレルギーや持病について質問され、「副反応が出る可能性があるが通常は二~三日で収まる。今日のシャワーは軽めに、運動せず安静にしておくように」などの注意事項を確認され、最後に「質問はありますか?」と聞かれます。特に質問がなかったので、いよいよ接種! 臆病な私は怖くて針が入ったところは見ませんでしたが、チクッとするも5秒もかからず終わりました。

安堵していると、観察場所と呼ばれる、椅子が100脚ほど並べてあるスペースで15分間待つように指示されます。隣合わせに2回目の接種者用のスペースがありますが、待ち時間が異なるので、1回目の接種の人とは真ん中で分けられていました。ここで初めて周りを観察する余裕が出てきました。高齢者の接種はほとんど終わっているため、多くの人は60歳以下、20~30代の若者が多い印象でした。接種人数は多いものの、多くのスタッフの誘導により完全に流れ作業で、スムーズに混乱なく、全ての工程が進められているのが見てとれました。

ちなみに、待っている間、高齢者がストレッチャーに乗せられ複数のスタッフにより処置室に連れられていく光景に出くわしましたが、いたるところにスタッフがおり、何かあってもすぐに対応してもらえることがわかり、安心しました。

また、この日は晴天で最高気温36度と猛暑日だったからか、お水がいたる所で配られていたのも印象的でした。筆者は接種後、念のため30分ほど待機していましたが、特に何も起こらなかったので会場を後にしました。

子どもの予防接種状況

コロナワクチン接種開始前の昨年末の時点では、国民の65%が接種を受ければ感染拡大が抑えられる、というのが連邦政府の見解でした。しかし、感染力が強いデルタ株が新規感染の大部分を占めるようになり、再び感染増加がみられる今夏、政府の研究機関であるロベルト・コッホ研究所は、感染拡大を防ぐには、12歳~60歳までの85%がワクチン接種済みであるべきと述べています。国民の12%はワクチンを受けない意向であることもあり、8月からの新学年開始に伴う感染爆発への危惧を強めた連邦政府は、さらに子どもも接種対象に含めるコロナワクチン接種キャンペーンを展開することとなりました。

12歳以上の子どもを対象としたワクチン接種は任意で、保護者とかかりつけ医の同意の上、6月上旬から開始されていましたが、連邦政府は、希望者は新学期までに接種が間に合うよう、8月末までに少なくとも1回目の投与を受けられるとの見通しを示していました。その後、連邦政府とドイツ全州は12~17歳の未成年者に対してもワクチンを供給することで合意し、子ども向け接種キャンペーンを行っています。実際に、私の子どもも先日ベルリン市から接種を促す手紙を受け取りました。このようなキャンペーンの甲斐あってか、8月上旬までにドイツ全土では、12歳~17歳の100万人以上が初回の予防接種(ファイザー/ビオンテック社もしくはモデルナ社製)を受けました。ロベルト・コッホ研究所によると、これはこの年齢層の22.5パーセントに相当するそうです。

最後に

今回はベルリンにおける新型コロナウイルスワクチンの接種状況をお伝えしました。今秋からのロックダウンや在宅学習は是が非でも避けたい連邦政府は、ワクチン接種をすすめることによってなんとか感染拡大を抑えたい意向です。一方で、成人はもとより子どものワクチン接種に関しては、長期的な副反応も含めてその安全性についてドイツ国内でも賛否両論分かれているところで、ある統計によると、12~17歳の子どもがいる保護者の過半数は自分の子どもには接種させない意向だそうです。

一方で、今夏はいったん感染拡大が落ち着いていたものの、夏休み明けで休暇から戻ってくる人や学校での通常授業の開始、そしてデルタ株の蔓延により、昨夏よりも早いペースで新規感染者数は増加しています。このような状態にも関わらず、ワクチン接種率は60%を超えてから伸び悩んでおり、連邦政府はさらに予防接種キャンペーンを進めるべく躍起になっています。いずれにせよ「長いトンネルの出口」が一日も早く近くなるように願う毎日です。


筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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