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【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】 第46回 4か月ぶりの登校と徹底したウイルス検査の実施

要旨:

息子の学校では、イースター休暇明けの4月中旬から4か月ぶりに全学年で対面授業が再開されることとなった。その新たな感染対策として、学校及び保育所の職員並びに全生徒に週2回の迅速抗原検査が義務付けられることとなった。ロックダウン緩和に向けた「二本の柱」の一つである迅速抗原検査だが、一般市民も週1回無料で迅速抗原検査を受けることが可能となった。ここで特筆すべきことは、一般店舗でのサービスを受けるためには、迅速抗原検査の陰性証明が必要になったことである。このようにして、ドイツ連邦政府は感染拡大に歯止めをかけつつ、停滞している経済活動を再開させ、少しでもコロナ前の生活に戻したい思惑である。本稿では、筆者の体験談などを基に、新型コロナウイルス検査に関する記述を行う。

キーワード:
ドイツ、ベルリン、新型コロナウイルス、PCR検査、迅速抗原検査、FFP2マスク、医療用マスク、在宅オンライン授業、対面授業、ワクチン接種、シュリットディトリッヒ桃子
4か月ぶりの登校

日本の中学1年生にあたるギムナジウム7年生の息子は、12月中旬からずっと在宅でオンライン授業を受け続けてきましたが、ようやくイースター休暇明けの4月から対面授業が再開されることとなりました。4か月ぶりの登校とあって、前日は少し緊張していたようでしたが、いったん登校してみるとオンライン授業とは異なる刺激がたくさんあり、充実した時間を過ごしてきたようで、親としても一安心しました。

対面授業を全面的に再開する時の学校における感染対策としては、クラスの人数を半分に減らしての授業(クラスを2グループに分けて、交代で週の半分は登校しての対面授業、残りは在宅オンライン授業)、校内での手洗いの実施、そしてマスク着用の徹底が挙げられています。特にマスクについては、大人の場合、公共交通機関や店舗、病院や役所など公の場では既に医療用マスク(FFP2)以外の着用は認められていませんが、子どもも14歳以上の場合は大人同様、FFP2マスク着用義務が課されました。14歳未満の子どもには通常の医療用マスク(サージカルマスク)の代用で可、とされています。いずれにせよ、上記2種類以外のマスク(布マスクなど)をしている人は当地ではほとんど見かけないのが現状です。

そして、今回の学校再開にあたっての感染対策の最大の目玉は、新型コロナウイルス検査の徹底です。事前に学校からウイルス検査キットが配布され、自宅で検査をし、所定の用紙に結果を記し、保護者がサインをして、その週の登校日初日に学校に提出する、というものです(5月に入ってからは、学校で検査を行うことになっているようです)。登校日の検査結果が陰性でなければ、登校してはいけない、という明確なルールが追加されたのです。

この背景には、イギリス変異株による子どもへの感染が急速に拡大していることがあります。安全な学校運営と保育のため、学校及び保育所の職員並びに全生徒に週2回の無料の迅速抗原検査("Antigen-Schnelltest")が義務付けられることとなったのです。本稿では、この新型コロナウイルス検査について記述します。

*本記事の記載事項は5月上旬時点でのものであり、規制内容などは随時変更される可能性があることをご了承下さい。

ロックダウン緩和に向けた「二本の柱」

ドイツで11月から続いているロックダウンですが、ベルリン市におけるロックダウンに関する条例は、5月9日まで延長されることになりました。といっても、さすがに全ての商店や施設を半年以上も閉鎖しているのは、望ましくない状況であることから、徐々にロックダウン緩和策も打ち出されています。その柱となっているのが、「ウイルス検査とワクチン接種」です。3月の記者会見でメルケル首相は「この二本柱を徹底することで、ドイツはコロナに打ち勝つ」と明確な指針を表明したのです。

3月までは、エッセンシャルワーカー以外で検査センターにて無料のPCR検査を受けられたのは、有症状者と感染者の濃厚接触者だけでした。しかし、3月8日以降は、ドイツ連邦政府の費用負担で、一般市民は無症状でも、週1回無料で迅速抗原検査を受け、検査結果の証明書を得ることができるようになりました。そして、国民はこれらの検査を受けることを強く推奨されています。

ロックダウン緩和の「非常ブレーキ」

そうはいっても、一気にロックダウンを緩和する状況にあるわけではありません。規制に関しては、ドイツでは連邦制をとっているため、各州で対応が分かれていました。しかし、4月に入っても新規感染者数の増加が止まらず、その数は多い日には2万人以上に上り、人口10万人あたりの7日間の新規感染者数(感染密度)も140人を突破するなど、第三波がなかなか収まらないことから、全国一律の厳しいルールが適用されるようになりました。

このルールは「非常ブレーキ」と呼ばれており、感染密度によって、規制の内容が変わってきます。例えば、3日間にわたり感染密度100人/10万人を超えた市町村では、下記の規制に従わなければなりません。

  • 夜間規制:22:00~5:00の時間帯の屋外滞在は1名または2名まで許可される(14歳以下はカウントされない)。
  • 私的な会合:家族以外の世帯の者1名までOK(14歳以下はカウントされない)。ただし、夜間21:00~翌5:00の時間帯は、他世帯の者の訪問は禁止。
  • 生活必需品の店(食料品店やスーパー等):人数制限&マスク着用で引き続き開店OK。
  • それ以外のすべての一般店:感染密度150人/10万人まではマスク着用で営業OK。顧客は店内が密にならないよう入店日時を予約し、迅速抗原検査の陰性結果を提示すれば、入店できる。感染密度150人超が3日以上続いた場合は閉店。
  • 飲食店:閉店。ただし、テイクアウトや配達はOK。
  • スポーツ:屋外では最大2人まで。接触のない運動は14歳以下の場合5人までOK。
  • 文化系施設は引き続き閉鎖。ただし、動物園及び植物園の屋外エリアに限っては開園OK。訪問者は、迅速抗原検査の陰性の結果を提示すれば、入園できる
  • 身体に接触するサービス業(理髪店、美容院およびフットケアなど)は、マスク着用で引き続き営業OK。顧客は、迅速抗原検査の陰性の結果を提示すれば、サービスを受けることができる
  • 自動車教習所、ボートや航空その他の学校施設:再開OK。生徒は迅速抗原検査の陰性結果を提示すれば、受講することができる
  • 学校:教師と児童・生徒に対する週2回の迅速抗原検査の実施で、学校は対面授業を開催することができる。教師、児童・生徒は迅速抗原検査の陰性結果を提示すれば、対面授業に出席することができる。ただし、感染密度が165人を超えた場合、対面授業は禁止される(卒業を控えた年次や特別支援学級は例外)。

このように、ドイツでは感染密度による明確な基準を設けて、規制を行っていますが、今回の政府の決定で特筆すべきことは、上記の規制中、下線で示したように、ある種のサービスを受けるためには、迅速抗原検査の陰性証明が必要になったということです。

例えば、本原稿執筆中のベルリンの感染密度はまだ100~150人の間なので、店内の人口密度を抑えるため、1店舗当たりの入店客数が限られています。ですから、一般商店を利用したい客は、「Click & Meet」と言われるサービスを通じて、インターネットか電話で店舗訪問の予約をした上で、さらに当日の迅速抗原検査の結果(陰性のもの)を提示すれば、入店できることとなります。ちなみに、店舗によっては、店舗周辺に検査会場を設けてあるところもあります。また、検査の陰性結果の提示が必要なのは6歳以上で、陰性結果は、24時間以上経過したものであってはならない、とされています。

このような迅速抗原検査が幅広く行われるようになった背景には、無症状の感染者を少しでも早く発見、隔離するということ、そして経済を同時に回していくことの重要性があります。従って、ドイツの新規感染者数だけに注目すると、かなり多く見えるかもしれませんが、あちこちで検査を行っていることもその要因だと思います。

また、経済に関しては、約半年間のロックダウンによる閉店後、ようやく3月初旬から、条件付きではありますが、書店、生花店及び園芸店、ヘアサロンなど身体の接触を伴うサービス、教習所及び航空学校が再開できることとなりました。しかし、3月はまだまだ感染率も高かったので、再開した全ての小売店などは、上記のように厳格な入場管理措置と徹底した衛生管理によって、サービスを提供することが可能となったわけです。

検査の種類

さて、これまでは徹底したウイルス検査が行われている現状をお伝えしましたが、当地で行われているウイルス検査には二種類あります。

1)PCR検査:こちらは既に症状が出ている人が新型コロナウイルスに感染しているかどうかを調べるスタンダードな検査で、市内9か所にある検査センターにて医療スタッフにより実施されています。鼻や喉の粘膜を綿棒で採取し、その分析は研究施設にて行われるため、結果が出るまでに1~2日かかります。

また、無症状のエッセンシャルワーカーや旅行者を対象に、この検査を行っている施設も市内にいくつかあるようです。筆者もこのPCR検査を昨年夏に受けましたが、その様子は「第43回 新学年開始と再ロックダウン」をご参照頂ければと思います。

2)迅速抗原検査:PCR検査同様、鼻や喉の粘膜から粘液を採取しますが、その場で分析が行われるため、15分ほどで結果がわかります。短時間で結果が出ることから、3月までは老人ホームや病院などの施設で働く人や居住している人を対象に、定期的に行われていましたが、4月からは上述のとおり、無症状であっても全ての市民が市内の会場で週1回は無料で受けられることとなりました。

迅速抗原検査の検査会場に関しては、ベルリン市内に現在約25か所あるようですが、医院や薬局、その他の組織などが検査を行いたい場合は、オンライン講座を受け、検査員の資格をとれば、新たに検査会場を開くことができます。ですから、その数は増加しているようで、実際、通勤途中などで「あれ、こんなところに検査会場ができたんだ!」と驚くこともあります。

このように、政府は検査会場を増やすことにより、さらに検査数を増やしたい意向です。予約が必要な会場もあれば、思い立った時に立ち寄れる会場もあります。さらに、陽性の結果が出た場合、無料でPCR方式の再検査を行ってくれるところもあります。いずれにせよ、証明書を無料で発行してくれるので、一般の店舗やサービスを利用したい場合は、基本的にこちらの証明書を持参する必要があります。

また、迅速抗原検査のキットをスーパーやドラッグストアで入手し、自分でテストを行うこともできます。これは誰かを訪問する際など、日常生活で自分や他人を保護するために行うもの、とされています。

このように、迅速抗原検査は短時間で結果が出てお手軽ですが、陽性と出た場合は、より精度の高いPCR検査を受けて、結果を確定させなければなりません。

迅速抗原検査を受けてみた:一般店舗にて

先日、筆者はホームセンターに用事があったので、まずインターネットで入店の予約を取りました。さらに、陰性証明が必要でしたが、入店24時間以内に検査センターまで行く時間もなく、そのホームセンターには検査場が併設されているというので、入店予定時刻より少し早めに現地に赴き、検査を受けることにしました。

すると、確かに店舗の入口近くに下の写真のようなテントが併設されています。「市民のための迅速抗原検査 無料でたった15分で終わります!」と大きなお知らせが貼ってあり、人目を引くようになっているので、見過ごすことはありません。幸い、検査を受けるため待っている人はおらず、がらんとしたテント内に受付1名、証明書作成者1名、そして防護服を着た検査員が1名、距離を十分とって作業をしているだけでした。

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店舗入口近くに併設されていた検査場

当日、同行した息子と私はまず入口にある机で、住所、氏名、生年月日、連絡先を記入しましたが、その際、使用したペンは使用前、使用後の2回アルコールスプレーで消毒されたのが印象的でした。その後、私は検査員の近くの椅子へ案内され、息子はそこから2メートルほど離れたテント内の入口近くで待たされることとなりました。テント内には上記の3名の作業者以外は、上限2名(被験者)までしか入れてはいけないそうです。

検査自体は、以前受けたPCR検査と同様、長い綿棒を鼻の中でぐりぐりとされるだけでしたが、PCR検査では両鼻と喉まで「おえー」となるまで徹底的にぐりぐりされたのに対し、今回は、右の鼻腔だけを数回ぐりぐりされる粘液採取で、本当にあっけないものでした。

「15分ほどで呼びますので、外で待っていてください」と言われ外に出たものの、この15分がなんとも言えず、長く感じられたのは言うまでもありません。学校と仕事以外はほとんどステイホームを続けている私たちは、ほぼ陰性だとは思っていましたが、無症状感染という可能性も捨てきれないからです。しかし、15分きっちり経つと、私たちの番号が呼ばれました。ドキドキして受付に向かうと「陰性です。お買い物を楽しんでください!」と陰性の結果証明をくれました。この時は、息子と二人、学校の合格証書をもらった気分で、思わずハイタッチしてしまいました。

自宅で迅速抗原検査を行ってみた!

前述のとおり、学校では週2回の検査が義務となったので、先日、息子は学校から5週間分(10セット)の検査キットをもらってきました。また、教師として働く私にも、勤務先の学校から迅速抗原検査のキットが配布され、検査結果の提出が義務となりました。

さらに、スーパーやドラッグストアでも3月上旬から迅速抗原検査キットの販売が始まったので、夫用に数セット購入、家族で自宅で検査を行ってみました。こちらの価格は1セット4~5ユーロ(約530~600円)が相場のようです。いずれの場合も、キットの中身は下の写真のようになっています。

report_09_401_02.jpg
迅速抗原検査キット:(左から)粘液入りの薬液を垂らすためのカセットが入っている袋、鼻の粘膜をこする長い綿棒、薬液が入っている容器、破棄用袋(使用後に全てこの袋に入れて破棄する)

検査手順は、上述の検査会場と同様、長い綿棒を鼻の奥で何回かぐりぐりと回し、粘液を採取します。かなり奥まで入れるよう手順書にて指示されているので、小学校低学年のお子さんはちょっと大変かもしれません。ちなみに、鼻炎アレルギーもちの息子はくしゃみが止まらなくなっていました。

その後、少量の薬液が入っている小さな容器(写真では紫のキャップがついているもの)に粘液がついている綿棒の先を浸します。そして、その液をカセットの上(下の写真でいうと、「S」の下の水滴のイラストが描いてあるくぼみ)に垂らします。すると、真ん中の窓(CとTの文字が表示されている箇所)に15分以内に線が現れます。線が1本なら陰性、2本なら陽性という結果になります。妊娠検査薬のような表示だといえばわかりやすいでしょうか。

この時も、感染している確率は低いだろう、と思ってはいたものの、無症状感染ということもありますし、やはり線が出るまではドキドキしていました。結果は親子ともども陰性、ほっとして大きなため息が出ました。

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陰性(1本だけ線が現れた)を表示したカセット

最後に

本稿では、感染対策の二本柱の一つである、ウイルス検査に関して説明してきました。対面授業実施や一般店舗で各種サービスを受けるためには、迅速抗原検査を行うことが前提となっていることがお分かりいただけたかと思います。

対面授業開催にあたり、週2回検査を徹底することにより、実際に近所の小学校では、無症状の児童の感染をいち早く発見することができたおかげで、そのクラスだけ2週間の自宅隔離、他のクラスは授業続行、と学校閉鎖を回避することができたそうです。

また、検査センターで無料検査が受けられるのも魅力的ですが、わざわざセンターまで足を運ばなくても、近所のホームセンターやショッピングモールなどでも受けることができますし、さらに自分でスーパーなどで気軽に入手し、自宅で好きな時に検査を行うことができるお手軽さも利点だと思います。時節柄、少しでも体調が悪いと「すわ、ウイルス感染か?」と精神的に動揺してしまうこともありますが、自宅で検査できれば、落ち着いて対処することができます。

このように、検査の徹底は、感染拡大防止という物理的な面と、長引くコロナウイルスの蔓延で心身ともに疲弊している私たちに安堵感を与えてくれる良策だと思います。

さて、もう一つの柱、ワクチン接種に関しては、現在こちらも急ピッチで進められており、2回のワクチン接種を終えた者は、接種15日目以降、迅速検査の陰性結果の提出が必要な場所(店舗など)であっても検査不要で利用できることとなりました。次回はワクチンについて記したいと思います。



筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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