CHILD RESEARCH NET

HOME

TOP > 論文・レポート > 子育て応援団 > 【ニュージーランド子育て・教育便り】 第16回 ロックダウン時の子どもの学習

このエントリーをはてなブックマークに追加

論文・レポート

Essay・Report

【ニュージーランド子育て・教育便り】 第16回 ロックダウン時の子どもの学習

村田 佳奈子

2020年6月 5日掲載

要旨:

ニュージーランドでも新型コロナウイルスの感染予防のため、子どもたちが通常通り通学できない状態が続いています。今回は、このような状況の中、特に小学生の教育に関してどのような対応がなされているかをご紹介します。小学生の娘が実際にどのように一日を過ごしているのかについても書いています。

現在、世界中が新型コロナウイルスによる影響を受けていますが、ニュージーランドも新型コロナウイルスを抑え込むため、2020年3月25日(水)深夜から4週間の計画でロックダウンに入りました。これにより、生活に必要不可欠な医療や食料品店などの職種を除き、在宅以外の勤務も禁止され、学校も閉鎖措置がとられたため、子どもたちも通学することができなくなりました。4月28日(火)からは警戒レベルが一段階下がりましたがi、通常通り子どもたちが学校に通うことのできる状況になるには、まだまだ時間がかかりそうです。

アーダーン首相が48時間後からのロックダウンの開始を発表したのは3月23日(月)の午後3時前でしたが、この時の会見で、ニュージーランドの子どもたちがオンラインや遠隔でも学習できる環境を整備するための期間をとるために、学期休みの前倒しも発表されましたii。そのため、ロックダウン開始時はターム1(1学期)の途中だったのですが、その週の3月27日(金)に2週間繰り上げてターム1は終了しました。そして、イースター休暇明けの4月15日(水)からがターム2(2学期)になりました。ターム2は、普段より2週間長くなっています。

4月8日には、遠隔教育支援として、教育省の大臣から4つの方策が打ち出されましたiii。どの子どもも、このうち少なくとも1つにはアクセスできる状況を目指しています。

  • 学習のためのデジタル・デバイスやインターネット環境の充実
    これは、家庭にデジタル・デバイスやインターネット環境のない子どもたちに対して、デバイスを配ったりインターネット環境を整えたりするというものです。デバイスは4月8日の時点で、国全体で17,000台が確保されており、更に海外にも発注しているとのこと。この支援は、経済的に恵まれない地域の高校に通い、単位取得に相当するようなNCEA(National Certificate of Education Achievement)という試験を受けている子どもが優先的に受けられるそうです。ちなみに、娘の通っている小学校はこの支援の対象外だそうですが、もしも子どもの学習デバイスが家庭になければ、数に限りはあるものの、学校で所有しているものを貸し出してくれるという連絡が小学校からありました。この支援の対象外であっても、なんとかすべての子どもにデバイスを配ろうとしている姿勢を強く感じました。
  • 学習テレビの開設iv
    ターム2が始まる4月15日からは、2つの局で教育番組の放映が始まりました。1つは、5歳から15歳を対象にした英語の番組です。急遽作成しているため、数日前にならないとプログラムの詳細は分かりませんが、本来学校のある平日の午前9時~午後3時の間で、5分から30分弱の教育番組が次から次へと放映されています。午前中は低年齢の子ども向けで、午後に向けて徐々に対象年齢が上がっていきます。もう1つは、0歳から18歳に焦点を当ててはいるものの、全世代に向けた教育番組を、マオリ語放送のテレビ局が流すというものです。
  • 学習セットの送付v
    4月15日からは各学年の学習レベルにあった問題集、本、ノート、文具などの詰め合わせである学習セットが、順次家庭に配達されています。こちらもインターネット環境やデバイスを持っていない子どもたち、また学習にハンディーキャップのある子どもたちが最優先されています。この学習セットは、小学校の判断で教育省に依頼することで、家庭に配達される仕組みになっているようです。
  • 家庭学習を充実させるためのオンライン教材の充実vi
    教育省のウェブサイト上では、オンライン・リソースも、ロックダウン前より充実させているようです。もっとも、娘の小学校ではもともと活用されていたオンライン教材があり、教育省のウェブサイト上に掲載されているものはまだ利用していないため、どの程度の更新があったのか、私には判断できません。また、家庭からオンライン学習の相談がしやすくなるような方法も整備されたようです。

さて、娘の小学校では直接上記①~④を活用していませんし、各小学校により状況は大きく異なるとは思いますが、現在の娘の小学校の対応を、一例としてご紹介したいと思います。

娘の小学校では高学年を3名の先生で担当しているのですが、その先生方が話し合って決めたという1週間の大きな方向性が、月曜日に学校のウェブサイト上で示されます。在宅学習期間中も特に重視したい学習科目は、リーディング、ライティング、算数だそうです。その他に、家でも意識して話題に挙げて過ごしてほしいという科学のテーマ、それに関連する工作、健康でいるための運動についても、課題が紹介されています。毎日、2時間半ほどで子どもたちが仕上げることのできるような課題を与えるようにするとのことです。通常、小学校は午前9時に始まり午後3時に終わりますので、ロックダウン前と比べると、学習の負担は相当軽減されています。通常と同じ方法や量の学習をしようとすると無理が生じるので、今は人間らしさ(humanity)を重視したいという学校の方針もあるのかもしれません。

毎日の具体的なリーディング、ライティング、算数の課題は、担任の先生が出してくれます。算数とリーディングについては、もともと使っていたそれぞれのオンライン・リソースの中で、生徒一人ひとり個別に課題が指定されています。各生徒に割り振っている内容は、担任の先生が個々の生徒のレベルに合わせているそうです。課題が難しすぎる場合や簡単すぎる場合には、先生にメールを送ることで調整してもらうことができます。リーディングはウェブサイト上だけではなく、実際の本を手に取って次々に読んでもらいたいという思いから、学校の図書館の本を人と接することなく借りられるような仕組みを近日中に整える予定だそうです。ライティングについては、基本的には毎日ひとつ先生が課題を出します。このライティングの課題については、朝10時から30分程度のオンライン授業で先生が説明してくれています。最近では、ライティングの課題の説明に加えて、先生が一人ひとりの生徒と一言ことばを交わすということが日課になってきました。先生は通常の学校の時間である午前9時から午後3時まではパソコンの前に待機していて、時間内は常に子どものサポートができる体制でいるとのことで、学習内容の質問をしたり課題を提出すると、比較的短時間で先生から返信がきます。

ロックダウンと学期休みが重なっていた期間は生活のリズムが崩れがちだった娘ですが、ターム2に入ってからは落ち着いてきました。10時から30分間のクラスメイトと交流できる時間、その前後に学校の先生から出される約2時間半の課題に取り組み、近所の散歩や運動、ピアノの練習、1時間ほどの友達とのビデオ通話などで、一日が過ぎていきます。ニュージーランドはもともとICT教育が進んでいたとはいえ、ロックダウン開始当初からうまくいったわけではありません。通常の使い方とは違うツールの使い方を工夫しながら、徐々に子どもの生活の質が上がってきたというのが実情です。ロックダウンになってすぐのターム1の終わり頃は、算数とリーディングのオンライン・リソースから課題が与えられる程度でした。ロックダウン後しばらくして、普段なら子どもたちが教室で音読している様子などの動画が親に共有されるツールを使用して、先生からのビデオメッセージが共有されました。「伸ばしていた髭を剃りました!vii」というユーモアたっぷりの動画は、娘を楽しませてくれました。今は、先生がそのツールを通じて課題を出し、娘は先生やクラスメイトに対して、家庭での学習の様子を共有しています。先生も子どもも、こうしたツールの新しい使い方を少しずつ覚え、徐々に使いこなしていったように思います。また、先ほど触れたライティングの課題を説明しているオンライン授業も、初日からうまくいったわけではありません。最初に使ったウェブ会議のシステムでは、クラスメイト28名中3名がつながりませんでした。翌日に他のツールを試すと、全員がつながりました。そのため、現在はこの2つ目に試したツールで、クラスメイト全員の顔が表示されるようにした状態でつなぐようになっています。初回は、「クラスメイトクイズ!」といった他愛もない内容で、娘は1時間半ほどクラスメイトとにぎやかに騒いでいました。その後の数回も授業というよりは、"遊び"ながら過ごし、時間もとても長いものでした。全員が慣れてきた頃を見計らって、ようやくライティングの"授業"が始まりました。そして授業時間も、1日30分くらいが、今のクラスの子どもたちに適しているということも分かってきたようです。

3月の学校のニュースレターには「今は先行きが不確かで家庭環境が大変な人もいるでしょう。家庭での学習がうまくいってもいかなくても大丈夫。なんでも大丈夫」といった趣旨の、校長先生のメッセージが書いてありました。私自身もとても励まされたことを思い出します。ターム2に入ってからも「遠隔教育はほとんどの人にとって未知の世界です」と書かれていました。そんな中、試行錯誤しながら子どもの学習機会を整えていこうとする学校の先生方の姿勢を見習い、私自身も子どもとの過ごし方を探っていきたいと思っているところです。

次回は、幼児教育の年代の子どものロックダウン時の様子について取り上げます。



筆者プロフィール
村田 佳奈子

東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。幅広い分野の資格試験作成に携わっている。7歳違いの2児(日本生まれの長女とニュージーランド生まれの長男)の子育て中。2012年4月よりニュージーランド・オークランド在住。
このエントリーをはてなブックマークに追加

TwitterFacebook

遊び

メディア

特別支援

論文・レポートカテゴリ

所長ブログ

Dr.榊原洋一の部屋

小林登文庫

PAGE TOP