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【国際都市ドバイの子育て記 from UAE】 第16回 水はどこから 1

森中 野枝

2019年11月22日掲載
ドバイが誇る観光地の一つ、ドバイ・ファウンテン

宇宙からも見えるというドバイ・ファウンテンの噴水ショーは、噴水の高さが150m(ビル50階に相当)にまで達し、噴水全体の端から端までの長さは275mにわたり、ギネスブックに載ってしまうほどの規模。そのショーは世界最大のドバイ・モールの敷地内で、しかも世界一高いビル、バージ・カリファの目の前で繰り広げられるという贅沢さで、インスタ映え間違いなしです。ドバイ・モールでのショッピングの合間に、バージ・カリファをバックにドバイ・ファウンテンショーを見るという、その心憎い配置もあって、観光客が殺到するスポットです。

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ドバイ・ファウンテンショー
report_09_344_02.jpg バージ・カリファのレジデンスに住むお友達のお部屋から見下ろしたドバイ・ファウンテン。
伝統的な小舟に乗って間近から観賞することもできる。

噴水ショーは、昼は2回、夜は18:00から23:00の間30分おきに無料で開催されるというのだから太っ腹。ショーのBGMは世界中から来た観光客を楽しませるため、有名なオペラの歌曲から、マイケル・ジャクソンのスリラー、アラブや中国の民族音楽まで全35曲がラインナップされ、毎回変わります。その曲の雰囲気に合わせ、ライトアップされた噴水がダンサーのように踊る、水と音楽と光のコラボレーション。わずか5分のショーはため息が出るほど美しく芸術作品のようです。 我が家の3人の子どもたちもみんな噴水ショーを見るのが大好き。何度見ても初めてのように「すごい!」「きれい!」と感嘆の声をあげ、わざと近づいてしぶきを顔いっぱい浴びてはしゃぎ、目をキラキラさせて大きな拍手をします。大興奮の妹と弟をしり目に、じっと見ていた当時中1だった長女がぽつりと言いました。

「ここって砂漠の国だよね。この水ってどこから来ているの?」

ドバイを訪れた人はきっと長女と同じような感想を持つのではないでしょうか。年間降水量は100ミリに満たず、一年を通して水が流れている川は一本もないこの国で、どうやって水を確保しているのだろう、と。

今回は、ドバイを中心にUAEの水事情についてご紹介していこうと思います。

水は作るもの~海水淡水化~

水が豊富な日本に住んでいると、水は雨によって自然にもたらされるものという意識が強いですが、ドバイは違います。年間降水量が100㎜に満たない極乾燥地のUAEで雨がいかに珍しいかを、連載の第10回「雨が降ると・・・」で紹介しました。

中東生活が長い我が家の子どもたちは、日本に一時帰国中に雨が降ると待ってましたとばかりに傘をさして長靴を履いて勇んで庭に出ていき、雨の中延々と遊んでいます。

ドバイに赴任して半年くらいの日本人学校の先生が少しホームシック気味で、寝るときに雨の降る音を流すと落ち着くと言っていました。しとしとと雨が降る音、ざあざあと窓ガラスに打ち付ける雨、日本人にとっては普通のことがここではとても貴重に思えてきます。

そんなドバイでは、水は黙っていて自然に手に入るものではなく、自らの手で作るもの。車や家電製品のように、工場で生産するものなのです。 では、実際にどうやって水を作るのかというと、アラビア湾に豊富にある海水を利用します。

海水を脱塩し真水を作り出す、いわゆる海水淡水化(desalination)です。 海水淡水化にはいろんな方法がありますが*1、ドバイで採用されているのは、古くから使われている「蒸発法」と最近開発が進んできた「膜法」です。

「蒸発法(evaporation method)」とは、海水を加熱して蒸気を発生させ、その水蒸気を冷やして再び水に戻して、淡水を作り出す方法です。加熱した海水から発生する水蒸気には塩分が含まれない仕組みを利用したものです。UAEでは、発電の過程で出る廃熱を利用して海水を加熱し淡水化を行うため、淡水化プラントは火力発電所などの廃熱が出る施設に併設される、いわゆる「ハイブリッド型工場」が多く、双方にとってメリットが大きくなっています*2

ドバイフリーゾーンのジュベル・アリ*3にある全長4kmにわたる工業プラントでは、天然ガスを燃料にして10ギガワットの電力を発電し、発電時に発生する熱を1日20億リットル以上もの海水の淡水化に利用しています*4。しかし、蒸発法はコストが高く、CO2発生量も多いという欠点があります。その蒸発法にとって代わろうとしているのが「膜法(Reverse Osmosis)」です。

膜法とは、海水に高い圧力をかけて膜(フィルター)に通し、ろ過して淡水を濾しだす方法です。フィルターの品質向上に伴って近年幅広く採用されており、現在世界で淡水処理された水の7割が膜法で作られています。日本企業は高いフィルター生産技術をもっており、RO膜のシェアの80%は日本企業が占めています。

このようにドバイでは毎日、「蒸発法」「膜法」の海水淡水化技術を駆使して、大量の化石燃料を使って、オリンピックプール数百杯分もの海水を淡水化しています*5。 作られた水は、主に水道水や飲料水として使われます。水の再利用も進んでいて、ゴルフ場の芝生や街路樹にまかれるスプリンクラーの水、そしてドバイ・ファウンテンの水には、もちろん水道水ではなく下水処理水が利用されています。

海水淡水化はUAEだけではなく、サウジアラビア、カタールなど渇水に悩む石油産出国で広く普及しており、最先端の技術を用いて、大量のエネルギーと莫大な費用をかけて水を作っている国は珍しくないのです。

プールとスキーとスケートが同時に楽しめるドバイ

「水」と肩を並べて砂漠では手に入らない物。それは「雪」。しかしドバイでは、そのあこがれの「雪」も「水」と同じように簡単にアクセスできるものにしてしまいました。

ドバイのモール・オブ・アラビアにある室内スキー場、スキー・ドバイ。真夏は50℃に達する砂漠の国に作られた1500人を収容できる施設で、複数のスキーインストラクターが常駐し、一年中スキーを楽しむことができます。ただ雪に触れてみたいというお遊びの体験から、本格的なスキー・スクールまで豊富なプログラムがあり、ドバイ生まれの友人のお子さんはここでスキーのインストラクターの免許を取ったというのですから、驚きです。長期休暇を利用したサマー・スクールなども開かれます。

物心ついてからずっと中東に住んでいる次女と長男の三大あこがれ(気象部門)は、「雪」、「雨」、「台風」。中でも一番恋焦がれているのは、言うまでもなく夏休みに日本へ一時帰国では触れ合うことのできない「雪」です。そんなわが子の願いをかなえようと、ドバイ名物スキー・ドバイに行ってきました。

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スノー・スーツ、ブーツ、グローブ、ヘルメットはすべて貸し出し
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リフトに乗って85mの高さまで上がり、難易度の異なる5本のスロープの中から自分にあったレベルを選んで滑走する。スロープは最長400m
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スキーエリアのほかに、アスレチックや雪遊びができるエリアも
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巨大なボールの中に入って、雪の上を転がり滑るアクティビティ

一緒に入場したタイやアフリカなど雪に縁のない国の人たち(大人)が大はしゃぎするのと一緒にわが子もテンション・マックス。ペンギンとの触れ合いコーナーでペンギンを触ったり、ボブスレーのようなそりに乗ったり、アクティビティも充実していて大満足。ゲレンデの隅には山小屋も用意されていて、ホットチョコレートを飲んで凍える体を暖めることが出来ます。

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ゲレンデの隅の山小屋

スキーだけではなく、スケートもドバイでは手軽なスポーツで、私たちが住んでいたアパートの1階にはスケート場があり、プールと並んで一年中楽しめる一番身近なアクティビティでした。

休日、用事がないときは子どもたちにこんな風に尋ねていました。「今日はプールに行く? それともスケートにする?」
考えてみれば、プールかスケートか選べるなんて普通ではありえないことです。プールとスキーとスケートを同時に楽しめてしまうドバイなのです

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スケート1回20AED(約600円)住人割引あり(2013年当時)
過剰消費の裏側で ~サステナブル・シティ~

スキー・ドバイやスケートリンクに代表されるように、エネルギー過剰消費のイメージが強いドバイですが、世界的に株式市場が暴落した2009年のドバイショック以降、実は安定的未来を目指して持続可能な都市の創造に取り組んでいます*6

日本で人気のクイズ式海外レポート番組*7で、その象徴のような住宅が特集されていたので一部引用して紹介します。

ドバイ中心部から車で30分、新しく開発された「サステナブル・シティ」には500軒の住宅があり、その名の通り持続可能な未来を目指した住宅地。コンセプトは「すべてのエネルギーを街の中で作り出す」で、電気を作り出し、水、ごみなどの資源を再生可能にしています。

電気を作り出すために、あらゆる屋根や屋上に太陽光パネルが設置され、住宅すべての電力の消費量を上回るエネルギーが生産されています。

また、住宅地の中心には共用の11基のドームがあり、夏には50度近くになる外気を気化熱で冷やし一年中適温を保って、農作物が栽培されています。住民は好きなものを自由に持ち帰って食べることができ、消費しきれなかったものは出荷されるという画期的な住宅地です*8

世界一が好きなドバイの人々の手にかかれば、環境問題にもアッと驚くような画期的なアイデアが次々と採用されていくのです。

海水淡水化の問題点

環境への負荷が高い海水淡水化も、立ち止まって再考する時期が来ているようです。
近年、UAEで海水淡水化の環境への影響が議論されるようになりました。環境への影響として考えられるものには以下が挙げられます。

  • そもそも海水淡水化には、大量のエネルギーが必要で、工場建設費、人件費、運営費などの多額のコストがかかる。
  • 海水を海から大量にとる際、プランクトンなどの生物も一緒に吸い込んでしまい、生態系に影響を与える可能性が排除できない。
  • 淡水化した後の残りの水は、製造の過程で薬品を混ぜており、塩分濃度も高くなっている。その水を海に戻すときに与える環境への影響。
  • 蒸発法は、化石燃料などの大量のエネルギーを消費し、CO2発生量が多い。
  • 膜法は、大量のフィルターゴミが出る。

では、砂漠の国で、海水淡水化以外にどのような方法で水を確保することができるのでしょうか。次回は続けて、淡水化以外の水確保の方法を模索するドバイについて見ていきたいと思います。


  • *1 海水淡水化の方法には、大別すると6つの方法があります。蒸発法・電気透析法・LNG冷却熱利用法・透過気化法・太陽熱利用法・逆浸透膜法です。
    (福岡地区水道企業団ホームページよりhttp://www.f-suiki.or.jp/facility/kaitan-center/kaitan-qa/
  • *2 松尾雄司『アラブ首長国連邦におけるエネルギー需給の現況とその長期展望及び省エネルギー技術導入の効果 』p16参照  https://eneken.ieej.or.jp/data/5527.pdf
  • *3 ジュベル・アリ・フリーゾーン(Jebel Ali Free Zone Autority) 1985年に設立されたドバイ初の経済特区。ドバイの最もアブダビ寄り、アラビア海に面した場所に位置し、現在は7100社以上の多様な業種の企業が入所している。
  • *4『エコ都市を目指す ドバイ』ナショナルジオグラフィック日本版 2017年10月号p126 引用
  • *5『エコ都市を目指す ドバイ』p121引用
  • *6 ドバイ政府は2050年までに消費エネルギーの75%を再生エネルギーで賄うという目標を掲げています。
  • *7 「TBS・日立世界ふしぎ発見!」『砂漠に築き上げられた観光都市ドバイ。その驚異的な発展の裏にあるドバイを治めるカリスマ一族の壮大な計画とは?』2018/2/17放送
  •  
  • *8 『エコ都市を目指す ドバイ』参考
筆者プロフィール
森中 野枝

都立高校、大学などで中国語の非常勤講師を務めるかたわら、中国語教材の作成にかかわる。
学生時代中国・北京に2度留学したあと、夫の仕事の都合で2004-2008 北京に滞在。2011-2013カナダ・トロント滞在。2013-2017 アラブ首長国連邦ドバイ滞在。現在はサウジアラビア、ジェッダに住んでいる。
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