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【インドの育児と教育レポート】 第2回 ムンバイの食生活

深町 澄子

2019年5月17日掲載
モンスーン期の生活

インドの国土は約3,287,000km2と、世界で7番目に広大な面積を誇ります。北部は冬になると雪が降りますが、ムンバイでは冬でも朝晩に肌寒く感じることはあっても、日中は半袖で過ごすことができます。モンスーン時期の6月から9月はインドの農業には欠かせない恵みの雨が降りますが、人々の生活は夏(3月~5月及び10月~12月)や冬(1~2月)の乾期とは一転し、歩いて外出するのは困難になるほどの雨が連日降り続きます。

他の東南アジア諸国のように、一日のうちに何度か雨がスコールのように降っては止み降っては止みの繰り返しではなく、インドのモンスーン期間は延々と途切れることなく雨が降り続くのが特徴です。

道路は川と化し、土地の高低差の多いムンバイ市内では、特に低い土地の市街地が浸水し、学校や役所が閉鎖され、交通網が麻痺することがあります。野良犬の多いインドではその排泄物や下水からの汚水が混じって滝のように流れてくることがあり、初めての年はショックを受けました。モンスーン期には、ビニール製のビーチサンダルを履くようにしており、雨水に浸かってしまった時は、帰宅後にアルコールで消毒をして足を清めています。足に小さな切り傷などのけががある場合には、絶対に水に浸かることがないよう長靴を履いて破傷風などの病気の予防をします。

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洪水の市街
ムンバイの市場 野菜編

ムンバイ市内の大きなショッピングモールの中にはスーパーマーケットが必ず入っており、真夏の猛暑の日でもモンスーン期の大雨の日でも快適にショッピングができます。私たちの生活は、どこへ行くにも車移動のため、モールの中のスーパーマーケットには駐車場も完備されておりとても便利に買い物ができます。スーパーには、バラエティ豊かな野菜や果物がきれいに陳列されています。インドでは青果の価格がとても安く、日本の約5分の1程度で手に入ります。また、インポートの野菜もタイや中国などから入ってきていますが、こちらは逆に日本の数倍の価格で販売されています。インドは関税が高いため、野菜に限らずインポートの食品の価格の高さに驚きます。オーガニックの野菜も3年前に比べると少しずつ増えてきており野菜や卵のパッケージなどに「ヘルシー」という言葉が書かれているものが多くみられるようになりました。健康と食生活への関心が市民の間で高まってきているようです。

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高級スーパーマーケットの地場野菜

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スーパーで売られている卵~フリーレンジ(放し飼い)~

一方、市街地の路上にはたくさんの露天市場があり、新鮮な野菜や果物がところ狭しと積み上げられ、多くのインド人で賑わっています。トラックで青果販売をする行商もあちらこちらに見られます。決まった顧客がいるらしく、いつも同じ場所で停車して、1日に8時間ほどお店を開いています。季節によって旬の果物が変化しますので、マンゴーの山積みが見られるようになるとそろそろモンスーンが近づいてきているなと感じるなど、街の野菜や果物から季節を感じることができます。

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路上の果物ワゴン

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トラックマーケット

これらは、スーパーマーケットよりも安価で購入することができます。1kgの価格が決まっているので、欲しい数量を伝えると、今や日本ではほとんど見ることのない天秤ばかりで計測し、手際よく袋に詰めてくれます。子どもたちが初めてその秤を見た時は、とても興味深く手元を見つめており、古びた分銅が置かれるたびに声をあげて感心していました。

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天秤ばかり

しかし、これらの野菜は路上の埃が付着したり汚水で洗われたりしているため、食の安全が保障されておりません。私たちは、スーパーマーケットで購入したものも露店で購入したものも、全て家庭で水洗いをし、さらに浄水器の水で丁寧に洗浄します。

農薬も多く使用されているので、トマトやブドウなど皮のまま食べられる青果も、全て皮を剥いてから使用することが多いのです。

ムンバイの市場 肉・魚 編

ベジタリアンが多いインドでは、野菜や果物の店舗に比べて肉や魚を扱う個人商店はとても少ないです。また、イスラム教徒は豚肉を食べることはなく、ヒンドゥー教徒は牛肉を食べません。州ごとの法律で宗教に関わらず牛肉の食用を禁止しているため、インドで牛肉といえば、バッファロー(水牛)を意味します。こちらはムンバイでも購入することができ、レストランでも提供されていますが、現地のインド人で水牛を食べるのは、とても少数のようです。

したがって、インドでは鶏肉の消費が一番多く、ムンバイ市街には鶏肉を売る個人商店がいくつかあります。足元のケージの中には元気な鶏が鳴いていますが、その上の調理台には今まさに食用に切り分けられようと横たわる鶏が目に入ってきます。

私たち大人でも一瞬、硬直して目を背けたくなるような光景が街の商店街の軒先に突然現れるのですから、子どもたちも「怖い」「いやだー」「気持ち悪い」「かわいそう」などと、思いを口にします。しかし、実際にそれを調理して毎日の食卓で頂くことを通して「食べ物への感謝」の気持ちが自然と家庭の中で養われていきます。

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街中の鶏肉店

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露店の魚市場~真夏の炎天下~

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郊外の放牧鶏舎の看板と野良牛

インドの子どもたちの食生活

子どもたちの食生活は、まずその家庭の経済状況や宗教上の理由により大きくはベジタリアンかノンベジタリアンかに分かれます。この定義はとても難しく家庭の中でそれぞれ独自のルールが定められているようで、ベジタリアンだけれども卵は食べられるエジタリアンや、両親はベジタリアンだが子どもはノンベジタリアンという場合もあります。ヒンドゥー教徒は牛肉は食べませんが鶏肉やラム肉は食べます。また、イスラム教は豚肉は食べませんが鶏肉や水牛肉やヤギ肉を食べます。しかし、それらの宗教の中にもベジタリアンとノンベジタリアンがいたりするのです。結局のところ、「あなたは何が食べられますか?」と本人に確認する以外、その全てを知りえることができないと思われます。中には、ジャイナ教徒のように宗教上の理由から土の中に育つ野菜は食べないという習慣の人々もいます。大根、玉ねぎ、ニンジン、イモ、ニンニク、生姜など根菜類なしの食生活をしています。

レストランでは、メニューがベジタリアンとノンベジタリアンに分かれていて、それぞれ「ベジ」「ノンベジ」と表記されています。また子どもたちや文字の読めない人にもわかりやすく、ベジは緑色、ノンベジは茶色のマークが全てのメニューに付与されています。この色による識別はインドで生産・製造された全ての食品に必ずつけることが法律で義務付けられているため、子どもの食べるスナック菓子やチョコレート菓子なども子ども自身がパッケージを確認して食べても良いのか悪いのかを判断します。小学生くらいの年齢になると友達とスナックを分け合う姿も見られますが、各自、自己責任で選択しているようです。

娘の学校では、教師が1人1人のアレルギーや食事に関する情報を把握していますが、家から持参するスナックについては、自己責任となっています。日本から持ってきているお菓子や食材を持たせるときには「グミにはゼラチンが入っているからベジタリアンのお友達とはシェアしないように」「焼きおにぎりはかつおだしが入っているから気をつけて」と毎回、確認をしています。

インドの子どもの大好きな食べ物

インドには、カレーと一緒に食べるパンの種類がたくさんあります。カレーは主にダルという豆のカレーやサグというホウレンソウのカレーなど野菜のカレーが主流です。その他たんぱく質源として、パニールという豆腐のようなチーズを入れたカレーもポピュラーです。私たちが知っているバターチキンカレーもノンベジの子どもたちには人気のカレーです。一般的に有名な「ナン」は実はインドではあまり家庭料理としては食べられることは少なく、タンドール(窯)を持っているレストランなどがそれを提供しています。

日本ではナンはとても大きいですが、インドでは手のひらサイズで1人前は2~3枚です。家庭では、イドゥリー(米とレンズ豆を発酵させて手のひらサイズの円形の型に流して蒸したもの)、チャパティ(全粒小麦粉を水でこねて薄くのばしてフライパンで焼いたもの)、パラータ(小麦粉を水で溶いて薄くのばし油を塗りながら何層にも重ねてパイのように仕上げ、フライパンで焼いたもの)などのパンを手作りしています。どの家庭にも生地を伸ばすためのめん棒と平台、そしてそれを焼くための平らなフライパンがあります。子どもたちは、これらのパンが大好きで朝食やおやつとして毎日食べています。各家庭によって少しずつ味が違うので、娘はお気に入りの味を求めて友達のお母様にスマートフォンからメッセージを送っては、そのレシピを手に入れています。

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チャパティ

インドの全日制の私立幼稚園や私立の学校に行く子どもたちは、登校前に朝食をとる習慣のある家庭は少なく、学校についてから10時ごろのスナックタイムに家庭から持参したサンドイッチや手作りのインドのパンを食べます。「チャットニー(チャツネ)」というスパイスの効いたソースをサンドイッチやパンにつけて、フルーツと一緒に食べています。

ほとんどの学校はランチタイムにベジタリアン給食がでますがナッツや卵を排除したアレルギー対応をしています。娘のインターナショナルスクールでは、ランチタイムにはカフェがオープンし、フルーツ、サラダ、ヨーグルト、パスタ、カレー、パンなどの日替わりのベジメニューから好きなものをビュッフェ形式で選ぶことができます。また、それ以外に売店では、チキンやポテトフライやバーガー、デザートなどノンベジメニューも提供されます。これを利用するには、親のクレジットカードの事前登録が必要で、生徒個人のIDカードで、キャッシュレスで購入することができるしくみになっています。その都度、金額と子どもが何を購入したのかが親のスマートフォンにメッセージとして届くため、ランチにポテトやチキンを食べた日には、夕食にはあまり揚げ物や肉類を多く摂取しないようにするなど、親が献立を調整するのにも役立っています。

インドの公立学校は午前の部と午後の部に分かれた二部制で、教師も子どもたちも完全に入れ替え制となっています。これは人口が多い上、学校の数も人口に対して少ないことや校舎のキャパシティの問題があるためです。

この場合は、朝も昼も子どもは家にいることになるため、食事は家庭で取ることが基本となり、学校で食べるのはおやつのみとなります。子どもたちは、家庭から水筒と塩味やマサラ味のクラッカーのようなものをスナックボックスに入れて学校に持参します。

このように、インドの子どもたちは育つ環境や宗教によって、食生活も大きく異なります。

近年、インドでは高齢者の健康志向が高まっており、朝のジョギングやヨガなどの運動に加えて、油分や糖分の摂取量を減らそうという動きが広がっています。古くからの「肥満=富の象徴」という考えにより、インド人の富豪の多くは太っていましたが、近年は、ジムなどで身体を鍛えて筋肉をつけたり食事のカロリーをコントロールすることなどをテレビや新聞で推奨しています。

インド人は、幼いころから油分や糖分を摂りすぎてしまうため子どもの肥満率が高く、学校給食では、管理栄養士による献立に、野菜や果物やヨーグルトを多く用いてカロリーを抑えた食事があります。

ムンバイで暮らす日本人の駐在員の子どもたちは、安全のため日頃からスクールバスやドライバーさんによる送迎で登下校するため、日本に比べて歩いたり運動したりする機会がとても少なくなります。週末にクラブ活動や地域のサークルなどに参加してサッカーやテニスを楽しんだり、親子で公園を散歩したりするなど、食生活と健康に気をつけて生活しています。また、インド人の講師を招いて、ムンバイならではの「ボリウッドダンス」を習っている子どもたちもいます。

私自身は、インドに来て以来、レストランで食べるカレーのおいしさに魅了され、体重が一気に増加しました。真夏の暑い日に飲む甘いソーダ水や、仕事で疲れた後に頂くお砂糖たっぷりのマサラチャイは、ほっこりと気持ちを和らげてくれます。甘味の誘惑は日本でもインドでも同じかもしれません。かかりつけのドクターから「あなたも体重を減らすプログラムに参加しませんか?」というダイレクトメールが定期的に届くとしばらくは間食を我慢しますが、見た目も美しいナッツと砂糖の固まりのおやつには、いつも心を奪われてしまいます。

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甘い誘惑、インドのお菓子

筆者プロフィール
sumiko_fukamachi.jpg 深町 澄子 静岡大学大学院修士(音楽教育学)。お茶の水女子大学大学院博士課程(児童・保育学)にて発達支援及び読譜を中心とした音楽教育の研究中。
約30年間、子どものピアノ教育及び音楽教育に携わり、ダウン症、自閉症、発達障害の子どもたちの支援を行っている。2016年12月よりムンバイに移住。
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