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【ベトナムの子育てレポート】 第1回 西洋文化が息づく東洋の南国、ハノイへ

要旨:

ハノイでの約1年半の生活の末、小学校への入学を控えた長男と4歳の娘を連れて、夫に先立ち日本へ本帰国したのが、2016年3月末。子どもを通して見るベトナム、ハノイはとても刺激的で、日々、驚きと発見、学びの連続でした。日本を離れて初めてわかったこと、ハノイを離れて改めて感じることなど、今だからこそ思えるさまざまな事柄について、私自身の少ないながらも濃密だった実体験に基づき、ハノイでの生活と子育てについてご紹介させていただきたいと思います。

Keywords: ベトナム、ハノイ、気候、駐在、子ども、ベトナム語、歴史、文化、アイテム、イオン
1、決断

2014年6月、ベトナムの首都、ハノイへの夫の赴任が決まりました。いつかはあるだろうと予期していたものの、やはり最初に報告を受けた時には、一瞬頭が真っ白になったのを覚えています。

旅行先として人気のある暑い国、アジアの中でも日系企業の進出がさかんで成長著しい国...くらいのイメージしかなく、そんなところへまだ小さな子どもたちを連れて行き、育てていくことへの不安感。また、ハノイへ行くということは、私にとっては「退職」を意味し、子どもたちはもちろん、自分自身の人生にとっても大きな変化をもたらすであろう決断を迫られているような緊迫感。一方で、これまでに無いような貴重な経験を積むことができるに違いないという期待感。さまざまな感情が交錯しましたが、熟考の末、会社を退職し、11月にハノイへ渡りました。

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旧ノイバイ国際空港へ到着。日系企業の看板がひしめき、印象的だったのは砂っぽい空気と空の色

2、西洋文化が息づく国

長くフランスの植民地支配下にあったベトナムは、フランス文化の影響を大きく受けていると言われています。東南アジアならではの街並みの中に白壁の西洋風の建物が突然現れたり、街の中心地はフランスの街並みが再現されたのだという話を、ベトナム人の友人から聞いたこともあります。フランス料理屋も多く、現地に住む日本人にとても人気があります。本格的で想像以上に味も良く、手頃とあって、私にとっては嬉しいサプライズでした。

また、ベトナム語はローマ字で表記されますが、これもフランスによる植民地支配以降に普及したもので、そもそものルーツは漢字(中国語)にあり、ほとんどの単語を漢字に置き換えることができます。ベトナム語で「ありがとう」は「Cảm ơn.(カム オン)」と言いますが、漢字では「感恩」と書きます。11の母音、6つの声調があり、習得するのが非常に難しい言語ですが、このような言語の成り立ちを知ることは、ベトナム語や、ベトナムという国の歴史的背景を理解することにも非常に役立ちました。長いフランス支配からの独立を日本が支援したという歴史的背景もあり、日本人に対してはとても友好的なように感じます。

1975年、つい42年ほど前までベトナム戦争の渦中にあった国です。決して恵まれた環境とは言い難い光景を目にすることも多い一方で、私が出会った多くのベトナムの人たちは外国人に対して優しく温かく、そこに暮らす人たちや街全体から放たれている並々ならぬエネルギーは、日本では感じることができないもののように思えました。

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ホテルの部屋から見たハノイ中心街の街並み。あらゆるところで高層ビルの建設が進んでいます

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旧市街の様子。狭い道沿いに小さな店が軒を連ね、1日じゅう人と車、バイクがごった返しています

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旧市街の中心、観光客に人気のエリア

3、四季のあるハノイ

年間を通して高温多湿、南国気候のベトナムですが、国土は南北に細長く、1年を通しての気候が地域によって大きく異なります。南部に位置する常夏のホーチミンに対し、北部に位置するハノイは温帯性気候帯に属し冬(12~3月頃)があり、10℃以下までぐっと気温が下がることも珍しくありません。特に雨が降ると凍てつく寒さで、外出の際にはダウンコートが必須です。「季節の変わり目」が非常に短いのも特徴で、感覚的には、春と秋が2週間ほどで終わり、ある日を境にうだるような暑さ、凍える寒さが一気に襲ってくるようなイメージ。特に冬への過渡期は一日の中での寒暖差も大きいため、子どもも大人も、体調管理がとても難しい時期です。南国のイメージからは想像できないような冬の寒さです。西側は山岳地帯、東側はすべて海に面しており、フーコックやニャチャン、ダナンなどのビーチリゾートは年々人気が高まっています。

また、真っ青な空をなかなか拝むことができないのも、ハノイならでは。年間を通してどんより曇り空の日が多く、日の光を浴びることができないためか、頭も体も覚醒せずにぼうっとしている...ということも多かったように思います。そんな日々のなかで稀に、白に近い薄い青空の日があるととても嬉しくなりましたし、スコールのような激しい雨の後、空気中の塵が落ちた澄んだ空気の中で見る燃えるような夕焼け空は、心を打つ美しさでした。

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雨上がりの夕焼け。燃えるような空の色

4、ハノイの夏と冬

夏(主に4月~10月頃)は特に湿度も気温も高く、少し軽めのサウナにいるような感覚。特に6月~8月頃は猛烈に暑く、気温が40℃を超え、湿度が90%超え...というような日は、外に出たとたんに汗が吹き出します。子どもたちもひたすら汗だくで、一日に何度も着替えるので洗濯物はかなりの量です。肌を刺すような日差しが非常に強く、日本にいるときよりも太陽が随分近いように感じました。現地の人たちでさえ、夏の昼間は「暑すぎる」と警戒し、外での活動を控えるほど。人々の活動も子どもの外遊びも、日が沈みかけたころ、夜も近い16時、17時頃からスタートします。早ければ4月頃から、外でのプール遊びができるほどの暑さになり、10月頃にかけての暑さの厳しい時期は、雨の多い雨季でもあるため、日除けの帽子と、レインコートや傘が欠かせません。

冬(主に12月~3月頃)も日本に比べると湿度が高く、80%前後を保っている状況なので、有難いことに乾燥とは無縁です。しかしこの時期は特にカビに注意が必要で、油断しているといろんなものが犠牲になってしまいます。ものだけではなく、部屋の壁などがカビてしまうこともあり、そうなると健康被害を招きかねないため、周りのお母さんたちも随分気を遣っていました。

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(左から)
①夏の間は17時頃からレジデンス内の公園で子どもたちの外遊びがスタート。親子共にここでたくさんのお友達ができました
②キッズスペースを兼ねたカフェやレストランも多く、日中の子どもの遊び場所として重宝します

5、持っていって正解だったもの(不要だったもの)

正解だったものは、まずは何といっても空気清浄機と除湿器。家族の健康にも関わりますし、一年中使うことになるので、投資する価値はあります。ハノイに降り立ち、おそらく多くの方がまず最初に感じるのが、日本との空気の違い。持ってくればよかった...と思って現地で買おうとしても、なかなか手に入らないのが高品質の家電用品です。駐在で多くの日本人が暮らすようなレジデンスには、家具や家電が備え付けてある場合がほとんどですが、さすがにこの二つはなかなかありません。炊飯器とオーブントースターも持っていき重宝したものです。

他には、直接肌に付けたり服用するもの。例えば虫よけスプレー、虫さされ薬、日焼け止め、お風呂で使う石鹸やクリーム類、歯磨き粉、消毒液、飲みなれている常備薬などもあれば、ある程度揃えておくと安心です。もちろん、現地にもいろんなものがありますが、良し悪しを見極めることがなかなかできませんし、病院にかかるにしても日本とは勝手が違うため、特に最初はなるべくトラブルを避けたいというのが正直なところです。

逆に、案外多くは必要なかったと思ったものは、食品と本の類です。2015年の10月にハノイにもイオンができたおかげで、トップバリュ商品をはじめとした日本製の食品などを現地で購入しやすくなりました。子ども用の下着類、離乳食やオムツなどの赤ちゃん用品、書籍まで、若干割高ではありますが日本製のものを購入することができます。イオンができて、現地の日本人の生活は相当便利になったと思います。

また、駐在員家族の生活支援のためのサービスを用意している企業もあります。例えば日本製の各種調味料からお米、お菓子、お酒や簡単なキッチン雑貨、市販の常備薬など、常温で運ぶことができる生活必需品を定価で購入することができるサービス。関税のことを心配せずに2か月に一度、日本から食料などを取り寄せることができ、自宅に届くという制度で、私自身も随分助けられました。特に食品は賞味期限があるので、日本で大量に購入した挙句、使い切れずに捨ててしまう...とはならないようにしたいものです。同じように書籍(通信教育教材なども含む)についても、定期的に定価で日本から取り寄せ購入できるサービスを利用できることがありますので、事前に会社に確認し、どんなものを購入することができるのか確認しておくとよいと思います。また、現地で暮らす日本人が更新するブログはそこでの生活を生々しくリアルに綴っていることが多く、些細なことでも何かについて知りたいときの情報入手ツールとして非常に有効です。

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イオンの売り場の様子
(左から)
①食品売り場にはトップバリュ製品が並びます。日本価格の店頭価格の1.5~2倍くらいでしょうか
②子ども用の下着。オーガニックコットンのものは1枚約1,000円程度
③本屋さんには日本の幼児向け書籍が並びます
※参考レート:1JPY=200VND

参考)イオンモール ロンビエン http://aeonmall-long-bien-en.com/


このようなことを踏まえ、ハノイでの生活がスタートするわけですが、到着早々にまず決めなければならないのが、なんといっても子どもの幼稚園でした。次回は主に、ハノイの幼稚園事情についてご紹介したいと思います。


参考)ベトナムの基本情報(外務省HP)http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/vietnam/data.html

筆者プロフィール
天達 彩子
東京女子大学を卒業後、教育系企業に就職。夫の海外赴任を機に退職し、当時2歳と4歳の子どもたちと共に渡越。2014年11月から2016年3月までハノイで暮らし、帰国後は紙・パルプ系企業に転職。現在も会社員として従事。
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