ニュージーランドに来て以来、子どもたちに読書好きが多いということをずっと感じてきました( 【ニュージーランド子育て便り】 第24回 オークランドの図書館 )。娘が小学生になってからも、日本の子どもたちよりたくさん本を読んでいるような印象をうけます。娘も娘の友だちも、今誰が何を読んでいるのかを把握していて、競って読んでいるようにさえ思います。ニュージーランドのリーディングの授業では教科書がなく、ある程度の読む力がついた後は、宿題も「寝る前の15分間読書と、読んだ本のタイトルを書く」という自由度の高い内容になっています。子ども自身が何を読むか考えなければならないという状況も、読書へのアンテナをはっている理由かもしれません。今回は、こんな子どもたちが更に本への関心を高め、読書を楽しむ機会になっていると思われる学校のブックウィークをご紹介します。
娘の通う小学校では、年に1回ブックウィークというものがあります。読書週間というと真面目な感じがしますが、とても楽しい1週間です。この1週間、学校に出張本屋が来て、一つの教室を本屋のようにしつらえて本を売ります。小学生の子どもたちに適した、たくさんの本を持ってきてくれます。この本の売り上げの一部は学校に提供されます。ニュージーランドの学校で開催されるイベントに共通して言えることですが、必ずといってよいほど学校の資金集めにもつなげようという傾向があります。資金集めのためとなると、親も本屋の運営を手助けします。そのため、本を買う必要性がなくても、学校のためになるなら、ということで、ほとんどの子どもたちが放課後に親を引き連れてこの出張本屋に行き、本を買ってもらいます。娘も今年もまた一冊お気に入りの本を手に入れることができたので喜んでいます。
メインイベントは、ブックパレードと称した、子どもたちが好きな本のキャラクターに扮した仮装パレードです。
先生方も仮装をしてきます。娘が小学校に入ったばかりのブックパレードでは、担任の先生のあまりにも本格的な仮装にびっくりしました。今年は、そのパレードで一番うまく仮装した子、楽しい歩き方ができた子を、それぞれ審査員の先生が選び、その子たちには賞品として上述の出張本屋から本が1冊プレゼントされました。ブックパレードの仮装で選んだキャラクターの本を持参して、クラスメイトにその本の内容を紹介する活動を行うクラスもあるようです。
小学校入学当時の娘は「アナと雪の女王」のエルサになりました。その当時大流行していたので、クラスにはエルサがいっぱいいました。次の年は「ビリービーブラウン」というニュージーランドで人気のシリーズ本の主人公、そして今年は「魔女の宅急便」のキキに扮しました。
かなり本格的な仮装をする子どもを毎年写真に収めて楽しんでいる親が多いように思います。肝心の子どもの感想が気になり、娘に聞いてみたところ、低学年の頃は楽しんでいた娘が、現地の小学校で4年生になった今、「何でやっているかはわかるけど、少し恥ずかしい」などと言うので、高学年になってもこのイベントを純粋に楽しいと思えるかどうかは性格による部分もあるかもしれません。ただ、娘は、友だちがそれぞれの年で、何に扮装したかもよく覚えていて、その本に関心をもったりしているので、本に楽しく触れる良いきっかけであることには変わりないように思います。仮装として毎年人気があるのは、ドクター・スースの絵本の登場人物、「ハリーポッター」のハリーやハーマイオニー、ロアルド・ダールの本の主人公などで、これらは毎年見かける気がします。また以前、このパレードに本のキャラクターのマスコットが来たこともありました。
ブックウィークは多くの学校で開催されているようです。内容は、好きな本の絵を描いたり、栞をつくる工作をしてみるといった子どもが行うものから、学校に本の作者や挿絵作家に来てもらい話を聞くといったものまで様々ありますが、メインイベントはやはりパレードの事が多いようです。遥か昔の曖昧な記憶になりますが、私の小学生時代にも日本で読書週間というものがあった気がします。その際には、実際に毎日何分かの読書をしたように思います。しかし、ニュージーランドのブックウィークは、読書そのものというよりも、読む一歩手前の楽しさで子どもの興味を惹きつけるところを重要視しているのかもしれません。読書そのものを強制しないからこそ、ブックウィークを経験した楽しさが記憶に残り、本への興味が増すのかもしれないなぁと、このイベントの期間になると思います。