CHILD RESEARCH NET

HOME

TOP > 論文・レポート > 子育て応援団 > 【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】 第14回 大人も楽しむハロウィンパーティ

このエントリーをはてなブックマークに追加

論文・レポート

Essay・Report

【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】 第14回 大人も楽しむハロウィンパーティ

要旨:

ベルリンではアメリカほどではないが、年々ハロウィンが浸透してきている模様。今年は一家で保育園時代の友人のハロウィンパーティに参加したが、そこで、当地では、大人と子どもの世界が明確に分けられていることを再認識した。親も子どもも一人の人間として捉え、「親が幸せでないと、子どもは幸せに育つことができない」という考えが根底にあるからか、親のみならず地域で助け合って子育てを行っている印象を受けた。

Keywords:
ドイツ、ベルリン、ハロウィン、子どもと大人の世界、添い寝、子どもの就寝時間、シュリットディトリッヒ桃子

10月31日はハロウィンでした。この季節になると、日本では美味しいかぼちゃのスイーツが出回っていたと記憶しています。また、かつて筆者が住んでいたアメリカでは、街中にかぼちゃの中身をくりぬいて作った「ジャック・オー・ランタン」があふれ、当日は大人も子どもも、魔女やお化けのコスチュームを身にまとい大騒ぎ!特に子どもたちが"Trick or Treat!(お菓子をくれなきゃ、いたずらしちゃうぞ!)"と言いながら、近所の家々を回ってお菓子をもらっていたのを思い出します。

しかし、ここベルリンでは元々そのような風習はなく、街中は至って通常モード。10月下旬のデパートの軒先は、ハロウィンを飛ばして、既に、伝統的な行事であるクリスマスのディスプレイでキラキラしています。

また、私たちの住んでいるマンションでは、昨年、お化けのお面を被っただけの普段着の子ども3人ほどが部屋を回っていましたが、お菓子をもらえる成功率は低かった模様。特に、シニア層はハロウィンには馴染みがないらしく、"Süßes oder Saures!("Trick or Treat!"のドイツ語)"と子どもたちが唱えたとたんに目の前でドアを閉めてしまうなど、少し子どもたちが可哀そうな様子でした。

我が家も、息子がドイツ語と英語のバイリンガル保育園に通っていた頃は、アメリカ人の保育士を中心に開かれたハロウィンパーティに毎年参加していたのですが、卒園後の去年は特に何もなく、自宅にそれらしいお花を飾る程度でしたので、ベルリンにはハロウィンの風習はそれ程浸透していないのだと思っていました。

report_09_191_01.jpg
ジャック・オー・ランタンのデザインの鉢に入ったお花

ところが今年は、保育園時代のドイツ人のお友達F君から「ハロウィンのポットラック(持ち寄り)パーティをやるから来てね!」とお誘いを受けたので、一家でハロウィンパーティに参加することになりました。息子は従兄のおさがりの全身ガイコツ模様のコスチュームを、夫と私は頭がい骨の絵が描いてあるTシャツを身に着け、食べ物と飲み物を用意して、いざ出陣です!

report_09_191_02.jpg
息子のガイコツコスチューム

F君宅へ向かうハロウィンの日の夕方、街の多くの子どもたちが本格的なコスチュームを身に着け、顔にはばっちりお化粧を施して歩いているのを目にして、私たちは大変驚きました。子どもたちを中心に、確実にベルリンにもこの風習は広まっているように感じたからです。

さらに、クラブなどで一晩中遊び続けることも少なくないベルリンのパーティ好きな若者たちも、子どもに負けじと、顔を真っ白に塗ったり、ボロボロの服を着たりして、ビール片手に電車に乗っています。そういえば、クリスマス商品に比べれば、売り場も品ぞろえもまだまだ少ないですが、以前に比べると、今年はハロウィンの衣装や小物を揃えているお店が増えてきた印象を受けました。

さて、F君宅に到着すると、既に何人かのお友達とその親たちが揃っていました。驚いたのは、ここでも皆、本格的に仮装していたこと!ホストのF君とママは勿論、他の親たちも見事なメークを施し、青やオレンジのウイッグを被ったり、魔女や外科医、ミイラやモンスターに仮装したりしています。頭がい骨のTシャツを普通のジーンズの上に着ていただけの夫と私は、何だか逆に居心地が悪い気がしてきましたが、この日は大人も子ども以上に楽しむんだ!という心意気が伝わってきました。

この日の予定では、F君宅に集まった子どもたちは、まず近くに住んでいるお友達Mちゃん宅へ出向きます。そこで、Mちゃんを含む同じ保育園時代のお友達数人に合流し、皆で近所の集合住宅に事前のお願いなしで"Süßes oder Saures!"とお菓子をもらいにいく、ということです。

息子はこのようなイベントに参加するのは初めてですし、私もドイツ流の"Trick or Treat"に興味があったので、Mちゃん宅に向かおうと思い、子どもたちに同行しようとコートに手をかけました。すると、すかさず魔女の格好をしたF君ママがこう言いました。「モモコは私たちと一緒にここに残って楽しむのよ!Mちゃんのうちは道を渡ってすぐだから、そこまでの付き添いは大人一人で十分!さあ、シャンパンを開けるから、こっちへいらっしゃい!」

夫も「心配ないよ」と言っていましたし、何よりその勢いに押されて、気付いた時には私もシャンパングラスを片手に皆と乾杯していました。そうです、このパーティは、日頃、子育てに追われている親たちが子ども抜きの「大人だけの時間」を楽しむために企画されたものでもあったのです!その証拠に、Mちゃん宅まで付き添いで行った母親は、すぐにF君宅に戻ってきてしまいました。

ドイツに住み始めてから気付いたのですが、ここでは大人の世界と子どもの世界は日本より明確に分けられているようです。例えば、義理の家族の誕生日パーティでは、親戚一同20人ほどが集まるのが常ですが、子どものテーブルと大人のテーブルは別のところに設置されています。興味深かったのは、息子の従兄が16歳になった年。それまで子どものテーブルに着いていた彼は、大人のテーブルに着くことが許されたのです。ドイツではビールやワインが16歳から許可されている、ということも影響しているのだと思います。

また、私の周りでは、ほとんどの子どもはパーティなど特別な行事がない限り、通常午後8時には就寝します。たとえ、眠くなくても、自分のベッドに入って静かにするよう躾けられています。これは、午後8時以降は大人だけの時間、というルールに基づいたものです(同じ理由から、多くの場合、子どもの寝室と親の寝室は赤ちゃんのうちから分けられており、添い寝という概念はありません)。

ですから、夜のリビングは大人だけのもの。本や新聞を読んだり、テレビを見たりと、一日の疲れを思い思いに癒します。また、夫婦水入らずで映画を観に行ったり、公演やコンサートに行ったりすることもあります。このように、午後8時以降は、親も子も「一人の人間」として過ごす時間と考えられているようです。ちなみに、親が出かける場合、子どもの世話は、親戚(祖父母を含む)や近所に住むママ友、信頼できるベビーシッターに頼むことが多い模様。

さらに、F君が住んでいる集合住宅では、週一回、そこに住んでいる子どもたちを集会場に集めて「お泊まり会」を催しているそうです。 1泊8ユーロの費用がかかるそうですが、集合住宅の管理会社から派遣された大人の見守りの元、夕食時から次の日の朝食まで、子どもたちはお互い親交を深めることができ、親たちは週一回、自分だけの大人の時間をもてる、ということで大好評だそう。シングルマザーでもあるF君ママは「この日は一人でゆっくりリラックスしたり、友達と飲みにでかけたり、週一回リフレッシュできる大切な一日なの」と言っていました。

当地でよく耳にするフレーズは「親が幸せでないと、子どもは幸せに育つことができない」。つまり、親も人間、時には息抜きをしないと、子どもにも悪い影響が及ぶ、ということなんだと思います。この考え方を出産後初めて夫から聞くまで、私は「子育てをするにあたって、ある程度、自分を犠牲にすることも仕方がない」と思っていましたが、確かに親の心身の健康が保たれないと子育てどころではありません。息子には赤ちゃんの頃から、就寝時間がくると一人で寝る習慣がついています。

さて、シャンパンを飲みながら、皆が持ち寄ったお料理をつまんだり、おしゃべりや音楽をゆっくり楽しんだりしていると、1時間ほどして子どもたちが大量のお菓子を抱えて戻ってきました。どうやら、F君宅の近所には多くの子どもたちが住んでいることもあってか、私が思っていたよりもずっとハロウィンが浸透しているようです。

一気ににぎやかになったF君宅ですが、F君ママはすかさず、子どもたちを一つの部屋に集めて、ビデオ上映会を始めます。子どもたちは、戦利品のお菓子を口に運びながら、映画の世界に吸い込まれていきました。そして、大人たちはロウソクの火がユラユラゆれるベランダやリビングで、引き続き、飲み物片手に談笑しています。

report_09_191_03.JPG
子どもたちのビデオ上映会

その後も遅れてきたゲストが到着するなど、パーティの輪はどんどん大きくなりました。夜の9時も回るころになると、「これから○○(映画や別のパーティ)に行くから、うちの子よろしくね。明日の朝、迎えにくるわ!」とF君ママに言い残して、出かけてしまう夫婦も出てきました。

私たちは次の日予定があったので、帰りたがらない息子をなんとか説得し、親子3人で帰路につきましたが、今回はドイツの風習の一面をのぞくことができて、非常に興味深いハロウィンパーティになりました。

report_09_191_04.JPG
戦利品のお菓子の山

筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
このエントリーをはてなブックマークに追加

TwitterFacebook

遊び

メディア

特別支援

論文・レポートカテゴリ

アジアこども学

所長ブログ

Dr.榊原洋一の部屋

小林登文庫

PAGE TOP