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【スウェーデン子育て記】 第17回 読書の秋

下鳥 美鈴

2016年11月18日掲載

スウェーデンの秋が深まってきました。風が冷たくなり、黄色い葉っぱがあちこちにたくさん落ちています。秋学期の中ごろとなる10月末から11月始めの1週間は、スウェーデンの学校は秋休みに入ります。この「秋休み」が導入されたのは比較的近年のことらしく、1980年代頃から徐々に定着し始めてきた休暇だそうです。もとをたどれば、100年ほど前までのスウェーデンでは農業を営んでいる家庭が多かったため、子どもたちはこの時期に作物の世話を手伝うために休みをとっていたものが形を変えて秋休みとなったそうです。そういった理由で、100年前は「ジャガイモ休暇(potatislov)」と呼ばれていたとのこと。

カール・ラーションというスウェーデンの画家が1905年に発表した画集があります(資料1)。1年を通して見られる伝統的なスウェーデンの農家の仕事や、家族の様子を描いた作品が収められています。その作品のなかに、秋のジャガイモ休暇の時期に家族全員でジャガイモを収穫する姿を描いたものがあります。お父さんたちが掘り起こした畑に、お母さんや子どもたちが入り、みんなで協力して収穫をしています。現在はもちろん見ることができないスウェーデンの秋の景色です。

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カール・ラーション(1853-1919)「ジャガイモ拾い」

秋休み中の読書

2016年の秋休みはハロウィーンのある10月31日からの1週間です。小学校では学童に申し込むこともできますが、多くの子どもは学校を休んで、色々な行事に参加しています。日本では芸術の秋、読書の秋などという言葉がありますが、スウェーデンでも外が寒くなってくるこの季節には、室内で過ごす時間が増えるので読書が勧められます。

スウェーデンでは読書をする人が多い、という印象を私はもっているのですが、スウェーデン国内での本の売り上げを調べてみると、印刷された紙媒体の本の売り上げは近年、減少してきているそうです。しかしそれとは逆に、電子書籍や音声書籍(俳優や作家本人が本を読みあげるCDや音声ファイルのこと)の売り上げが増加しているとのこと(資料2)。インターネットの普及率が非常に高いスウェーデンでは当然の傾向かもしれません。しかしその弊害かもしれないなあ、と思うのは、印刷された本の販売数が減っていることが要因となって、本一冊の平均的な値段は上がってきているということです。以前から、スウェーデンは本の値段が高いなあ、と思っているのですが、これ以上値段が上がっていくようになると紙媒体の本を好むものにとっては辛い状況ですね。参考までに、上記の資料によれば小説などのハードカバーの平均的な値段は一冊1750円。そしてペーパーバックは一冊710円です。

児童書のほうはどうかというと、2013年から毎年少しずつ売り上げが伸びているそうです。中でも一番売り上げがいいのは、9歳から12歳の小学校高学年を対象にした児童書です。ちなみに、1年で一番本が良く売れる時期は12月です。クリスマスプレゼントに本を贈ることが人気であることが要因であると思います。毎年、本屋さんのクリスマスセールにはかなりの人が集まっている姿が見られます。その次に本が売れるのは新学期が始まる9月。秋も本がよく売れる季節です。外が寒くて暗くなると本が売れるんですね。こういったことから予想できる通り、多くの人が旅行に出かける夏は、逆に売り上げが落ち込んでいます。

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素敵な秋のカーペット

子どもの読書量はどのくらい?

スウェーデンのヨーテボリ大学にあるノルディック・インフォメーションセンター(Nordicom)が9歳から79歳までを対象に、読書について電話でインタビューした調査があります(資料3)。1994年から2015年までの調査結果をみると、毎日読書をしているという人の割合は90年代には全体の40%ほどであったものが、2015年になると35%前後に減少しています。男女別では、男性よりも女性の方が読書の習慣があるようで、女性の40%以上がほぼ毎日読書をしているのに対して、男性は30%ほどとなっています。

非常に興味深いのは年齢別の読書習慣の違いです。同じ調査の結果をみると、よく読書をしているのは圧倒的に9歳から14歳の子どもたち。60%ほどの子どもたちが毎日読書をしているようです。しかしこれが高校生以上になると35%以下に減ってしまいます。さらに、仕事もあり家庭もある社会人になるとさらに本を読む時間が減るようで、30%まで減ってしまうとのこと。残念なことですが仕方ありませんよね。しかし定年を迎える年齢になると、読書する習慣がまた少しだけ戻るようです。

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2015年調査結果 スウェーデンで毎日読書する人の割合
(出典:ノルディック・インフォメーションセンター)


9歳から14歳までの読書習慣が一番充実していることの背景には、学校での読書の時間があることや、放課後の自由な時間があることが大きな理由であろうと思います。一体どんな種類の本を読んでいるのかというと、圧倒的に純文学や児童文学であり、学校の教科書や実用書はあまり読んでいないという結果もでています。近所の図書館で人気の本のランキングを調べてみると、ファンタジー作品が一番の人気のようです。スウェーデン人作家のものも人気がありますが、やはりハリーポッターなどは根強い人気のようですね。小中学生の読書は、70%が児童文学書なのですが、高校生以上になると、文学作品は40%以下に減り、教科書や実用書を読む割合が増えてくる傾向があるようです。やはり、好きな読書を思い切りできるのは子どものうちなのだなあ、と改めて実感します。我が家の子どもたちも、ぜひともこの秋休みには、読書の秋を満喫してもらいたいものです。

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スウェーデンの秋




資料1 カール・ラーション画集「Spadarvet - mitt lilla lantbruk」1905
資料2 http://www.forlaggare.se/sites/default/files/boken_2015_web.pdf
資料3 http://www.forlaggare.se/boklasningen-0
筆者プロフィール
下鳥 美鈴

東海大学文学部北欧文学科卒業。ストックホルム大学で修士課程を終え、ウメオ大学(スウェーデン)で博士課程を修了。言語学博士。
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