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【ニュージーランド子育て便り】 第25回 ニュージーランドの子育ての大変なこと・助けになること

村田 佳奈子

2015年4月24日掲載

要旨:

これまで、多くの人からニュージーランドで子育てをする大変さについて質問を受けてきた。そこで、今回は、私の感じた大変さと、ニュージーランドにおいて提供されている子育て支援の情報をまとめた。オークランドでは、多くの移民が同じような思いを抱えて子育てをしていることにも心強さを感じる。

「海外で子育てをするのは大変ですか?」「何が大変ですか?」と、これまで多くの方に質問されました。大変さを知ってから海外に行きたいと思う人や、大変さを知って支えたいと思う人は多いのではないかと実感しています。そのため、今回は、私がニュージーランド(以下、NZ)で感じた海外での子育ての大変さ、そしてNZの育児支援をはじめ、助けになったことを少しまとめてみたいと思います。

英語での子育て

私が最初に難しかったものは、子育ての英語です。考えてみると、日本で私が使っていた英語というのは大人同士が使う英語でした。しかし、子育て英語は、未知の世界。子ども同士がおもちゃを取り合っていたり、危ないことをしていたり、泣いていたり、と言ったシーンで、どのように声をかけるべきなのか、とても戸惑いました。動き回る子どもたちを見つつ、往々にして理路整然としてはいない子どもの英語を理解しようとするのは至難の業でした(今思うと英語だけの問題ではなく、日本のようなきめ細やかさで子どもたちに対応しようとしすぎていた気もします)。こちらはプレイグループ*1や図書館*2などで他の大人の子どもへの接し方を見て、徐々に慣れました。

子どもに起きる緊急事態時の英語もやや特殊です。娘は、夫が出張中の夜中に高熱を出して病院へ行ったり、急いでいる時に大事にしているぬいぐるみや帽子を落としたり、忘れてきたり・・・なぜこのタイミングで、という時に大人だけの状況なら使わないような英語が必要とされる事態を次々と持ち込んでくれました。結果的には、どうにか乗り越えてしまいましたが、NZには医療英語の通訳依頼*3、各種機関への問い合わせ時に利用できる通訳機関*4も存在することを後から知りました。そういった機関を予め知っておけば、安心感が増したのだろうなと思います。

親のストレス

子どもの適応のことばかり考えて親は後回しとなりがちですが、海外では親自身も、慣れない生活でストレスを抱えることが多いと思います。私自身は深刻なホームシックや悩みは抱えませんでしたが、日本の良さを頻繁に思いだす時期はありました。海外適応には、様々な段階があり感情にも波があると言われていますので、普通のことなのでしょう。日本でも、異文化間の生活で生じる葛藤を扱うカウンセラーの情報などが充実してきていますが*5、NZでも移民の適応に関することはカウンセラーの主要な相談事項としてあげられています。

私は、最近、娘の態度に倣うことも増えてきました。順調にことが運べば問題ないのですが、NZでは、何かトラブルが起きるとなかなか解決しないこともあります。例えば、先日は、買いたい物が実際手に入るまで3回も違うものが届いたこともありました。娘は「次は何が来るかな。また壊れているかな」など、毎回お気楽なコメントをしていました。他にも、私ならショックを受けそうな間違いがおきても「間違っただけだからね」と娘はすぐに許します。今でこそそんな娘ですが、2歳くらいまでは、私がもっと話したいなという人の前で大泣きをしたり、逃げ出したりは日常茶飯事。こんな時期、気分転換は海外においてもとても大事だなと思います。NZでは、子どもをベビーシッターやパパに子どもを預けて出かけることは、普通のことです。NZの雰囲気に後押しされ、私も平日の夜、友人と映画を見にいったりしていました。

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美しい海岸にて

育児の相談やアドバイス

娘が3歳になる前頃、プランケット*6という支援団体の、定期健診などを行ってくれるナースに娘を診て頂く機会がありました(通常、何も問題がなければ2歳健診が最後になるそうですが、私の連絡が遅く、3歳になる直前になりました)。ひと通りの検診を終え、「何か心配なことはありますか?」と聞かれ、「敢えて言うなら、ママが好きすぎる気がするんです」という私。もちろん、これはとても嬉しいことですが、この頃はやや度を越えているような感じがあり、少し心配もしたものです。それに対し、プランケットのナースは、「小さい頃にNZに来た子にはよく見られることですよ。だって、言葉も十分に分かっていない環境で、あなただけが頼りなんだもの。本当によく見られることです。この先、ずっと自立できなくなるならその時は心配だけれど、今のところ全く心配しなくて良いでしょう」と答えてくれました。娘も、きっとどこかに不安があったのかなと思え、合点がいきました。些細なひと言ですが、なるほどここは移民の国、移民の悩みに対する経験知はとても豊富なのだなとも思ったものです。また、SKIPという団体も育児に役立つ情報を提供してくれています。こちらは英語以外の19カ国語でも9種類のパンフレットを出しています。日本語のものもあり、NZらしいポジティブな育児のアドバイスが書かれています*7

ニュージーランドのこと

日本では、外国人に「日本ではね...」と日本のことを語ることが多いのではないでしょうか。夫は日本で外国人として過ごして来て、「日本ではね」と日本のことを教えてもらったことを非常に楽しんでいました。知識が増える楽しさ、そして知ることによって、より快適な生活になることを実感してきたのです。それはもちろん、裏を返せばある程度外国人に日本流を強いているということでもあるのかもしれません。一方、NZですが、NZの人に「NZではどうするのですか?」と聞くと、しばらく考えた後に「自分の好きにすればいいんじゃない?」と答えられることが多くあります。そんなわけで、一体みんなどうしているのか、当初、非常に掴みにくく感じていました。国籍がNZ人といっても、本人や親の世代で移住してきていたり、配偶者が別の国出身であったりするので、「私の生き方がNZ流」という意識は、あまりもっていない人が多いのかもしれません。結局、今は、自分の生き方を尊重してくれるのがNZ流と思っています。良い教育も良い子育てのあり方も、人それぞれ何を重視するのか違うのです。

一方、移民のお友達同士で集まってNZと母国(アジア、ヨーロッパ、中東などなど)を比較する中では、「In New Zealand,...」という言葉をよく聞きます。移民同士の会話は、NZを知るうえでもたくさんの視点を与えてくれます。また、NZに対する知識は、移民向けの各種案内をしている移民支援サービス(Settlement Support)*8に教えて頂いたことがとても役に立っていると感じます。

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火山円錐丘からオークランド中心地を望む
(オークランドは火山地帯です)

日本語の維持

NZでは母語で生活していて後ろめたく感じる雰囲気もなく、家庭内では日本語で話しています。そのためか、娘も今のところ、日本語を話すことができています。英語ではない言葉を話す恥ずかしさのようなものは、感じていないようです。英語を母語としている人たちには「すごいね」と褒めてもらえ、移民の家族の中には、子どもが親の母語は話せず、英語しか話せないという家庭が多い中で、とてもうらやましがられます。こういった雰囲気は、娘が自信や誇りを失わないために、非常に助かっています。
オークランドには日本人補習校、日本人幼稚園をはじめ、日本語を維持したり、伸ばしたい人に向けたサービスは豊富にあります。


「海外での子育ては大変ですか?」の問いに答えるのは容易ではないのですが、私は、恐らくNZで提供されている多くのサービスに支えられていたことを今回書いてみて初めて実感しました。日本の家族や友人、知人に支えられている部分も大きいと思います。わが家のNZでの生活は、子どもがいるからこそ大変になることもあれば、子どもがいるからこそ出会いがあったり大変さを克服できたりもしていると思います。成長した娘は、今では私の大きな助けになっています。こんな時はこういう言葉をかけるとか、お友達はパーティにどういう物を持っていくのだとか、NZの常識を教えてくれるのも娘です。また、こうした大変さは日本人のみならず、NZで子育てする外国人たちとも共通することが多く、様々な国からきた人たちと今回とりあげたような大変さを話題に話も盛り上がります。移民が多く、同志が多いことも心強く感じています。


  • *1 小さな子どもと親向けに遊ぶ場所を提供しています。詳しくは第1回に記載。
  • *2 図書館にも小さな子ども向けの各種プログラムがあります。詳しくは、第24回に記載。
  • *3 NZの医療制度の対象となる人は、医療機関へ依頼することで無料で通訳をつけることができます(http://www.adhb.govt.nz/Sites-Services/interpreting.htm)。NZの医療制度に含まれない人は、保険会社が各自医療通訳を保証している場合が多いようです。NZの医療事情については、第3回記事に記載。
  • *4 Lauguage Line(http://ethniccommunities.govt.nz/how-language-line-works-japanese)。各種機関の問い合わせに電話で通訳をつけてもらうことができます。
  • *5 例えば、多文化間精神医学会など(http://www.jstp.net/index.htm)が、異文化間で起こるカウンセリングの情報を提供しています。また、帰国後の親子を支える団体も多いようです。
  • *6 Plunket(https://www.plunket.org.nz/)。5歳以下(主として0~2歳)の子どもの健康管理、健診などを提供しています。娘の小学校就学前の健診もプランケットで行いました。
  • *7 SKIP(http://www.skip.org.nz/resources/other-languages/japanese.html)。コミュニティや親に対して、子育てに有用な情報を無料で提供しています。リンク先には、日本語のパンフレットがあります。
  • *8 Settlement Support(http://www.settlement.org.nz/)。 移民を対象に各種セミナー、英語のコースを開催したり、NZの生活に関わる情報提供をしています。教育制度に関するセミナーもおこなっています。また、多文化プレイグループの情報も提供していました。

  • * 参考情報:外国人向けに特化した情報ではありませんが、NZの子育てに対する経済的な支援、コミュニティ内にあるサービスなどの情報がまとまっています。 http://www.workandincome.govt.nz/individuals/how-we-can-help-you/families-and-children.html
筆者プロフィール
村田 佳奈子

お茶の水女子大学卒業、東京大学大学院修士課程修了(教育学)。資格・試験関連事業に従事。退社後、2012年4月~ニュージーランド(オークランド)在住。
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