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【ニュージーランド子育て便り】 第16回 「子育てがしやすい国」で働く

村田 佳奈子

2014年6月 6日掲載

要旨:

ニュージーランドには、男性も女性も、仕事と家事や育児を両立しやすいような雰囲気があるように思う。合計特殊出生率も先進国の中では、2.0を超える高い数値を保っている。今回は、夫の職場の様子も交えながら、オークランドの生活で感じる家族や子育ての事情に寛容な雰囲気を取りあげたい。

2011年のWHOの統計によれば、ニュージーランド(以下、NZ)の合計特殊出生率は2.2、一方の日本は1.4です*1。私がNZに来てから知り合った方も、子どもが2人以上の家庭がとても多く、中には3人、4人という家庭もあり、子どもが多いなぁという印象をもっています。また、要職に就く女性も多く、女性が活躍しやすい国でもあるようです。

NZは、妊娠や出産にかかる費用は基本的に無料ですが、手当ての出る産前産後休暇は14週間(うち産前6週間)のみで*2、産後8週間たてば職場復帰する女性も少なくありません。そのうえ保育園の費用も高額です*3。私自身、子育てにかかる金銭的な負担は日本と比べると大きいのではと思うこともあります。それでも、一般的にNZは家族を大事にできる「子育てがしやすい国」だと認識されています。身近に豊かな自然環境があることや、まだ経験していない学齢期以降の子育て環境に依るところもあると思いますが、今回取り上げる子育てしやすい寛容な雰囲気が職場や社会全体に溢れていることも1つの理由ではないかと思います。

思い返せば私たちがNZに来るという決断をする時にも「子どもを育てるには良い国」だと強調されたものです。またNZに来た当初、NZの滞在歴が長い日本人の方たちには決まって「NZは、ご主人の残業がなくていいでしょう?」と聞かれました。我が家の場合、日本でもNZでも夫の労働時間に変化はなかったのですが、大多数の日本から来た方たちは、日本に比べて労働時間が短くなり、家族と過ごす時間が増えているようです。

夫の働く現地企業も、家族を持ちながら働きやすそうだなと感じます。1つは早く帰宅することを大事にしていることです。夕方5時半をすぎればオフィスは人もまばらになるとのこと。遅くまで働くことはストレスをためることであるとして推奨されておらず、とにかく早く帰ることに熱心なのです。忙しい時は、残業より早朝出勤する傾向があり、朝7時半から働くような人もいるそうです。また、新任のスタッフが部署に入ってきた時の食事会、チームメイトの退職や異動などの食事会も、帰宅時間に影響しないようモーニングティ、ランチ、アフタヌーンティとして行われることがほとんどです。日本では夜の飲み会となりそうなものですが、子どもがいて参加できない女性を多く見てきた私には、とてもうらやましく思えます。

2つ目は、役職や性別に関わらず、誰もが家族の体調不良や家族の事情で休みをとっていることです。家族の具合が悪いという話題になれば、むしろ周りが休ませようと努力しているほどです。また、体調に関わらず、結婚記念日やパートナーの誕生日とわかれば、「休んだら?」と言われることも。家族が元気で私生活が充実しているということが、仕事をする上でも重視されているように思います。私のこともよく「ホームシックになっていないか?NZに馴染めているのか?」と夫の会社の方たちに心配してもらっているようです。

このような環境で、夫は、保育園が職場の近くであることもあり、毎朝娘の送りを担当してくれています。娘も「パパと保育園に行くと楽しい気持ちになる」と言い、朝はパパと行きたいそうです。また、昨年末の平日に行われた保育園の発表会でも、夫の上司や同僚が「行っておいで」と言ってくれたとのことで、夫婦そろって参加することができました。周りもお父さん、お母さんそろって来ている家庭が多くありました。

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娘と浜辺で遊ぶ夫

帰宅時間を大事にするのは、夫の会社に限ったことではないようです。夕方になると、街にも仕事をしている人たちが「早く帰りたい」と思っている雰囲気が漂います。お店や公共機関や金融機関においても終了時間は働いている人が帰る時間だと認識されていることが多く、終了時間のだいぶ前からサービスが受けられなくなるほどです。この「帰りたい」雰囲気も、サービスを受ける立場になると、複雑です。5時半で閉まると思って駆け込んだ店で、店員に「もう片付け中だから今日は終わり」だと告げられてがっかりしたことは一度や二度ではありません。

また、サービスを受けていても頻繁にいろいろなミスや変更に遭遇します。最初は、その都度びっくりすることも多かったのですが、NZでは客側も概して寛容です。ミスや変更であっても寛容なわけですから、サービス提供者の家族や体調などの急な事情での予定変更も客側が受け入れる傾向があります。先日も車の点検を予定していたのですが、車を店に持っていくと担当者の体調が悪くて急に休んだという理由で日程変更になりました。既にNZ流に慣れている夫も「大丈夫だよ。」と言って帰ってきました。こうしたサービスの質を目の当たりにすると、働く人や家族を大切にできている背景には、客の寛容さもあるのかなと感じます。

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のんびりと歩くプケコ
(NZは鳥たちがのんびりしていて、寛容な人々の雰囲気と重なります。)

もちろん職場や職種による違い、各家庭の違いも大きいでしょう。とは言え、このような家族や子どもの事情に寛容な雰囲気は、多かれ少なかれ、街中や職場に存在します。それは家族や子どもが大事だと思っているだけではなく、子育て家庭が様々な消費をすることが、産業の少ないNZには経済面でもとても大事なことだと、多くの人が肌身に感じていることも影響しているように思います。また、他国のビジネス界で成功をおさめた人、他国で医師や歯科医といった資格を取ったという専門職の人で「家族を大事にできる国だからNZに移住した」という人に頻繁に会います。NZにはこうした志向の人が移住してきているということもあるでしょうし、この「家族(子ども)を大事にできる」雰囲気は海外の人々を惹きつける「NZの売り」として国民や移民に大事にされていることもあるのかもしれません。

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カウリの巨木を眺めて


筆者プロフィール
村田 佳奈子

お茶の水女子大学卒業、東京大学大学院修士課程修了(教育学)。資格・試験関連事業に従事。退社後、2012年4月~ニュージーランド(オークランド)在住。
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