妊娠中も仕事を続けることは可能ですが、妊娠の経過や体調には個人差があり、妊娠前と変わらず仕事に取り組める人もいれば、それが難しい人もいます。同じ人でも、つわりがひどい時期は、普段のように仕事をこなせないなど、体調の変化や波があるというのが、二度の妊娠を経験した私の率直な感想です。
自分とお腹の赤ちゃん達のためだけでなく、職場のためにも、上司や同僚と相談し、無理をせず仕事が続けられるように工夫してください。男女雇用機会均等法で定められ、妊娠中の女性は、負担の大きい作業の制限、勤務時間の短縮、時差通勤、休憩時間の延長などを申し出ることができます。主治医に「母性健康管理指導事項連絡カード」(規定書式あり)に必要な措置を記載してもらうと、職場との相談もスムーズに行くのではないでしょうか。
私の場合、ワーキング多胎妊婦生活はこんな感じでした。
★妊娠初期~中期★
6年前に長男を妊娠した時、つわりに悩まされることはありませんでした。今回は、妊娠5ヶ月までつわりに苦しみました。つわりの原因は解明しきれていないそうですが、医師によると、妊娠初期に分泌される「HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」というホルモンとつわりには関係があるのではないかという説があり、双子の場合は、HGCの分泌量が単胎より多いため、つわりもひどくなるのでは、ということでした。私の場合は、吐くことはありませんが、常に胃がムカムカした感じがあり、通勤途中の自動販売機で炭酸飲料を買っては飲んでいました。
働いていてよかったのは、つわりで気分が悪くても、仕事を開始すると気持ちが引き締まり、胸やけも落ち着いたことでした。オフィスに着て行く服や下着を早めにマタニティ用の物に替え、身体を無理に締め付けないようにしたことも心地よく仕事をするために役立ちました。
つわりも落ち着いてきた妊娠中期は、お腹は大きくなってきましたが、体調も安定し、仕事も生活も妊娠前と変わらずこなすことができました。私は、退社後は、電車に40分乗って地元に戻り、長男を保育園に迎えに行き、夕食づくり、洗濯などの家事もしましたが、特に問題はありませんでした。ただし、主治医より、運動・旅行は禁止されました。マタニティスイミングやマタニティヨガなど、妊婦を対象とした運動プログラムであっても、双子の妊娠の場合は、控えるように言われていました。
★妊娠後期★
いよいよお腹も大きくなり、デスクワークの私でも、座り続けているとお腹が張って苦しくなりました。昼休みには、職場の保健室のベッドで休憩をとり、辛く感じた時には、処方された張り止めの内服薬(ウテメリン)を服用し、短時間でも横になるようにしていました。私は、上司や同僚に配慮して頂きましたが、体調のことは本人しか分からないものであり、胎児を守れるのは妊婦本人しかいないのだから、辛い時は辛いと言う勇気を持って頂きたいと思います。また、周りも、妊婦さんが過ごしやすい雰囲気づくりを心がけてあげてほしいと思います。
特筆したいのは、電車での通勤です。「第一回妊娠出産子育て基本調査」(2006年・ベネッセ次世代育成研究所実施)でも、妊娠中の声として、公共交通機関で席を譲ってもらえない辛さを訴えるたくさんの声が寄せられました。厚生労働省や一部の自治体では、妊婦であることがわかるように"マタニティマーク"を作り、キーホルダーなどにして配っています。私も、マタニティマークを通勤用のバッグにつけていました。行きも帰りもラッシュアワーだったこともあり、毎回、席を譲っていただけることはなく、脳貧血になってしゃがみこんだりしたこともありましたが、中には、マークを見て席を譲ってくださる方もいらっしゃいました。譲ってくださったのは、現役パパ世代の男性、中年女性、若い女性が多かったように思います。妊娠中期以降は、立っているとお腹が張りやすかったので、席を譲っていただいた時は、その方を拝みたいくらいでした。見知らぬ人に「席を譲ってください」というのは、職場で休みたいというより、言い出しにくいものです。マタニティマークがもっと認知され、命を育んでいる存在を社会全体で大切にするようになってほしいと願います。

このキーホルダーは、通勤で使っている駅や、自治体の健康課で妊娠届を出した際、もらえました。通勤用のバッグにつけて電車に乗っていました。
席を譲っていただくためだけでなく、まだお腹が目立たない頃、優先席に座っている時には、自分が妊婦であることをそれとなく周りの方々に伝えることができ、気が楽になりました。)
*information*
「母性健康管理指導事項連絡カード」:各都道府県労働局雇用均等室に問い合わせ。(厚生労働省のホームページからダウンロードもできます。)
産休について
産休とは、妊婦さんが取れる産前・産後の休暇のことです。休暇中は、給与の6割が支給されます。単胎妊娠の場合は、産前は出産予定日の6週前からですが、多胎妊娠の場合は14週前から取ることができます。出産後は、単胎、多胎ともに8週間取ることができます。産後の休暇は法律で取ることが義務付けられていますが(ただし、6週間後、医師の許可があれば復帰することができます)、産前の休暇は義務ではありません。
私の場合は、体調も妊娠経過もよかったので12週前まで働くことができました。しかし、痛感したのは、気持ちや頭は働けても身体がついていかない!双子が入った大きなお腹は、もうラッシュアワーの通勤や、座りっぱなしのスタイルでは耐えきれなくなっていました。多胎の妊婦さんは、早めに仕事の引継ぎを行い、14週前から産休を取ることをおすすめします。
妊娠生活を快適に過ごす
多胎妊娠は、単胎妊娠に比べてリスクも高く、注意は必要ですが、妊娠は病気ではないので、心配しすぎないように過ごしました。私が心がけて、役立ったことをご紹介します。
1.妊婦健診には必ず行く:多胎妊娠は、安定期でも2週間に一回の健診がありました。健診は健康保険が適用されないので、お金はかかりますが、必ず行きましょう。特に一卵性の双子の場合は、「双胎間輸血症候群」の症状が出る可能性もあり、早期発見のためにも、必ず健診は受けるようにしてください。
2.相談できる病院を職場の近くに持つ:私が通っていた総合病院は、自宅からも職場からも離れたところにありました。また、規模の大きい総合病院のため、妊婦健診も予約制で、風邪などのちょっとした体調不良では気軽に行きづらいところでした。そのため、私は、いつでも気軽に受診できる産婦人科を職場の近くにみつけ、通い分けていました。
3.身体を冷やさない:自宅やオフィスにいる時の冷え対策に、湯たんぽが大活躍しました。足、腰などに当て、温めていました。また、カフェインの含まれていないハーブティーを飲んでいました。ハーブティーは、妊娠中の飲用は避けるべきハーブもありますので、注意してください。
4.腰痛・恥骨痛対策:妊娠8ヶ月には、単胎の妊婦の臨月サイズのお腹になる多胎妊婦は、後期ともなるとお腹の重さで腰や恥骨が痛みがちです。息子を妊娠時は、ガードルや妊婦帯はあまり使わなかった私ですが、双子を妊娠中は、ガードルでしっかりお腹を支えていました。さらに、助産師からの薦めで、骨盤を支えるベルトを購入し、装着指導を受けて使用していました。
5.妊娠線対策:妊娠4ヶ月に入り、お腹が膨らみ始めた頃から、毎朝・毎晩、欠かさず妊娠線予防のクリーム・オイルをお腹と胸に塗り、マッサージしました。そのお蔭で、腹囲103.5cmまでお腹は大きくなりましたが、妊娠線は一本もできませんでした。
体重管理について
双子の妊娠の場合、妊娠前に標準的な体型の人は、12~13kgの増加が目安のようです。ある産科医の先生は、15kgくらい増えてもよいとおっしゃっていました。私の場合は、妊娠32週の終わりに管理入院し、ベッドで安静になってから4kg増え、最終的には14kg増でした。しかし、出産直後で7kg減り、出産後2ヶ月で残りの7kgも減りました。
多胎妊娠の場合は、子宮が大きくなり胃を圧迫するため、たくさん食べることができなくなるので、食べすぎによる体重増加はあまり気にしなくてよいそうです。私も、病院食も食べきれないことが多かったです。
食事については、量よりも、栄養をバランスよくとること、特に鉄分と食物繊維をきちんととることが大切です。大きな子宮が腸を圧迫するためか、妊娠全期間を通して、便秘がちで、主治医の指示により「酸化マグネシウム(通称カマ)」をのんでいました。妊娠中に薬を服用することについては不安もありましたが、双子の妊娠の場合、いきまずに便を出すようにした方がよいとの主治医の指示でした。その他、妊娠後期には貧血になり、鉄剤も処方されました。
(病院での食事。妊産婦用に、一日2,100kcalになるように計算されていました。入院後、安静にしていたのに、入院食で痩せた妊婦さんもいました♪)