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【双子のいる生活】 第3回 切迫早産で管理入院

要旨:

妊娠32週目、風邪で高熱を出した息子の看病中、切迫早産のため緊急入院、帝王切開出産の日まで1ヶ月間入院した。妊娠8ヶ月位で、単胎時の臨月並みにお腹が大きくなり、張りを頻繁に感じるようになる。早産を防ぐ為この頃から管理入院を勧められることもある。お腹が張ってしまう切迫早産や、子宮頚管の長さが短くなって管理入院になるケースが多い。多胎妊娠した人は、予定日より早めの入院を想定し、妊娠8ヶ月に入る頃までに入院準備、新生児を迎える準備、入院中の子どもの預け先手配などを済ませておくとよい。筆者の管理入院生活や役に立った管理入院グッズを紹介。また高額医療費や医療保険のこと、多胎妊娠・出産・育児に関する本なども紹介する。

多胎妊娠の場合、妊娠8ヶ月くらいで、単胎妊娠の場合の臨月サイズのお腹になります。そのため、妊娠8ヶ月を過ぎるとお腹(子宮)の張りを頻繁に感じるようになります。病院の方針によっては、この頃から、早産を防ぐために管理入院を勧められます。


私は、医師からは張り止めの錠剤(ウテメリン)を処方され、張りが強い時に頓服として服用するように言われていました。そして、妊娠34週になったら、いつでも入院できるように準備をしておくように言われました。私にとっては、自分が管理入院中の息子の預け先が一番重要なことでした。34週以降の、保育園の後、夫が帰るまでの息子の預け先を手配し、カレンダーを作りました。

ところが、妊娠32週5日目、私は切迫早産のため、緊急に入院することになりました。その前日から、息子が風邪をひいて高熱をだし、私は大きなお腹を抱えて看病に明け暮れました。看病二日目のお昼過ぎから、お腹に張りと鈍痛を感じるようになりました。張り止めの薬を飲みましたが、一向に治まりません。夜になっても治まらないので、病院に電話したところ、張り止めをもう1錠服用し、1時間、横になっていても治まらなければ受診することになりました。

夫はまだ仕事から帰って来ません。息子は39度の熱でグッタリしています。入院の準備も、明日からの息子の預け先の手配も、全くしていません。祈るような気持ちで張り止めを服用し、じっと横になりましたが、1時間経っても、張りと鈍痛は消えませんでした。

20時、タクシーを呼び、息子を伴って病院へ。診察を受けた結果、そのまま入院することになりました。着の身着のまま病棟へ移動し、子宮収縮を抑える点滴につながれました。後から駆けつけた夫が泣きじゃくる息子を連れて帰った後、病室の天井を見ながら、まるで夢を見ているような気がしました。そしてそのまま、帝王切開の手術を受ける日まで、1ヶ月間、私は入院したのです。


入院生活

切迫早産の治療は、36~37週を目指して子宮収縮を抑えます。私の入院した総合病院では、症状に合わせた濃度の子宮収縮抑制剤(ウテメリン、ウテロン)を点滴または内服し、妊婦は安静生活を送ります。安静のレベルも、患者の症状によって異なります。

入院中は、朝と夜の2回、胎児心音を聴きます。また、定期的に超音波検査やノンストレステスト(胎児の心拍、動き、子宮の張りを測定する検査)、内診、血液検査、血圧測定等を行い、妊娠の経過や胎児の様子を観察します。

私の場合は、「点滴をしたままでのシャワーと病棟内の歩行が可能」という安静レベルでした。手術前の2週間は、毎日、約1時間のノンストレステストが行われました。

子宮収縮抑制剤の点滴は、腕の血管に針を刺し、テープで固定します。一度針を刺すと、長くて2週間程度もつそうですが、私の場合は血管が輸液に負けてしまい、早い時は数時間で、針の周りが赤く腫れて輸液がつまり、針の交換になりました。腕の血管は限られているので、そのうちに刺す場所がなくなってしまい、肘の内側から肩の静脈にカテーテルを通して輸液を送りました。シャワーの時は、点滴の針が刺さっている付近がお湯で濡れないようにカバーして浴びます。着替えも腕を通す時に、看護師を呼ばねばならず、面倒でした。

私自身の身体は健康で元気一杯ですから、安静生活は精神的に耐えがたいものでした。食事をベッドで取る、食べ終わったら寝る、という生活は怠惰なものに思われ、まるで点滴という鎖につながれ、病室という牢屋に閉じ込められた気分になりました。しかし、横になっていることで重力から開放され、立っているだけでもきしんで痛かった恥骨や骨盤の痛みは消えました。

胎児も、36週の終わりには、一人ひとりの推定体重が2,500g近くにまで成長しました。入院仲間もでき、「赤ちゃんが生まれたら忙しい毎日になるのだから、今のうちに体力を温存しよう」と励ましあって不自由な生活を乗り切りました。今では、管理入院もいい思い出です。

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入院準備


多胎妊娠の場合、私のようにお腹が張ってしまう切迫早産や、子宮頚管の長さが短くなって、管理入院になるケースが多いそうです。一卵性の場合は、一つの胎盤を二人の胎児が共有しているため、二人の血液のやり取りが生じ、一方が多血、もう一方が貧血になってしまう「双胎間輸血症候群」というトラブルのために20週前後から入院(病院により手術も出来るところがある)になるケースもあります。

そのため、多胎妊娠した人は、予定日より早くから入院することも想定し、自分自身の入院用品と、新生児を迎える準備は、妊娠8ヶ月に入る頃までにはしておくことをお勧めします。(ただし、双子の場合は、低体重で生まれることもあるので、ベビー服は最低限の数だけ揃えておけばよいと思います。)

管理入院が長くなると季節も変わり、パジャマなどは買い換える必要も出てきます。妊娠・出産用品を扱う通信販売のカタログを取り寄せておき、入院中に注文するのも便利です。病棟内での私用インターネットの使用は禁止されているので、通常ネットで注文する人も、カタログは冊子で取り寄せておくと便利です。

また、健診のついでなどに、病棟を下見しておくと便利です(売店で売っている物、コインランドリーなどの設備など)。

また、しばらく髪を切れなくなりますので、余裕を持って美容院に行っておくこともオススメします。

私が役立った管理入院グッズをまとめてみました。

□パジャマ、ラウンジウェア(4~5着)
*病院内にコインランドリーがあれば、自分でも洗濯することができる(医師の許可が必要)。家族に洗濯を頼む場合は、家族の来院頻度によるが、枚数は4~5着あると気持ちよく過ごせる。
*入院中の服装は、産前産後兼用のロングパジャマ+パンツの人が多い。 *病棟内は空調管理されていて冬でも暖かいので、薄手の物が過ごしやすい。寒い時にはおれるガウンやストールなどがあると便利。
*点滴をつけたまま入浴する場合は、看護師に頼んで、パジャマの袖を点滴のチューブに通してもらわないと着替えられない。通販では、自分で着替えられる点滴装着時用のパジャマも扱っているので、利用するのも手。
□下着、靴下(4~5着)
□お風呂用品(洗髪、沐浴)
*容量の多いボトルは、シャワー室への移動の際、重くて辛かった。ボトルは小さめの方がよい。
□スキンケア用品、歯磨きなど
*病室に日差しが差し込む場合は、紫外線ケアも必要。妊娠中はシミができやすい。
□妊娠線予防クリーム・オイルなど
*管理入院中も、毎日クリームでお腹をマッサージ。腹囲は103cmになりましたが、妊娠線は出来ませんでした。
□携帯電話と充電器
*病室で充電が許可されていない場合、使い捨ての充電器が必要。
□アロマグッズ(香りを楽しんだり、マッサージしたり)
□雑誌や本、手芸用品など暇をつぶすための物
*充電の必要な物は、病室で充電が可能かどうか、事前に確認のこと。
□連絡したい人の連絡先リスト
□日記帳や便箋、切手、筆記用具、メモ帳など
□時計
□妊娠・出産・新生児用品の通販カタログ
*入院中、病院から注文できます。
□耳栓(相部屋の場合、あると便利)
□洗濯グッズ(洗濯ネット、汚れ物・洗った物を入れる袋、洗剤)
□抱き枕
*多胎妊娠の場合、お腹が大きいため、とても寝づらくなる。お腹を優しく支える抱き枕があると大変便利です。


入院のサポート制度

高額療養費
一ヶ月を単位として、同じ月に同じ医療機関に支払った医療費の合計が自己負担限度額を超えた場合、超過分が加入している健康保険から払い戻される制度があります。

妊娠・出産は、健康保険の適用外ですが、私のように切迫早産などで管理入院したり、帝王切開で出産したりして健康保険が適用された分は、この制度の対象となります。

一旦、支払いをした後、加入の健康保険に申請をすると、自己負担限度額を超えた分が戻ってきます。一ヶ月が単位なので、管理入院が続くことがわかれば、病院への支払い前に加入の健康保険組合に申請して「認定証」を発行してもらい、病院に提出すれば、自己負担超過分は請求されません。

自己負担限度額の計算は、所得に応じて3パターンあります(社会保険庁のホームページに載っています)。

私の場合、2月21日に入院し、4月2日に退院しました。健康保険適用の医療費が自己負担限度額を超えたのは3月1日~31日の一ヶ月分でした。一旦、自分で支払った後、約2ヵ月後に、加入している健康保険組合から、限度額超過分が戻ってきました。


保険の加入内容のチェックを
生命保険の医療特約や、医療保険に加入されている方は、管理入院中に契約内容のチェックをおすすめします。入院給付金や、帝王切開などの手術保障など、保険金が支払われる場合があります。

(参考)「赤ちゃんができたら考えるお金の本2008年版」ベネッセコーポレーション


がんばったパパと息子~管理入院中の息子の世話~

出産前から管理入院になることも多い多胎妊娠、子どもがいる方は、自分が入院中、誰に子どものめんどうをみてもらうのか、とても気がかりなことだと思います。

私が入院した総合病院の産婦人科病棟にも、上に子どもがいる妊産婦さんがたくさんいました。祖父母に子どもをお願いしている方が多かったです。小学生の子どもがいる方は、放課後は、学童クラブに子どもを預けられていました。

我が家の場合、息子は当時、保育園の年長クラスに在籍しており、平日は閉園時間の19時まで保育園で過ごしました。多忙なサラリーマンの夫は、閉園時間までに迎えに行くことができず、息子は降園後、いろいろな場所で父親の帰りを待ちました。

・自治体の子ども家庭支援センターの「ショートステイ」を利用。「出産・入院」が事由のため、この制度を利用できました。保育園への送迎や、施設での宿泊も可能で、一日1,500円。ただし、一ヶ月に利用できるのは7日間まで。

・自治体のファミリーサポート制度で、以前から残業や出張時にお世話になっていた二人の協力会員さんに保育園に迎えに行っていただき、その方のおうちで保育。

・息子の祖母たちに週1泊ずつ泊まりに来てもらい、保育園まで迎えに行き、自宅で保育。保育園が休みの時は、祖父母の家に泊まりに行くこともありました。

・保育園を卒園後、年度が替わって4月1日からは、学童クラブに入所しました。

母親の私が突然入院して心細かっただろうに、激動の毎日を、息子は体調も崩さず、よく頑張ってくれました。夫も、仕事の都合をつけて、遅くとも21時には預け先に息子を迎えに行きました。

岡山県と愛媛県に急な出張が入った時には、夫は子連れ出張を決行しました。夫が仕事中、息子は現地の託児所で過ごし、夜は夫とホテルで寝泊まりしたそうです。出張に息子を連れて行くと夫から聞いた時、私はとても驚きましたが、息子にとっては、父親の働く姿を見ることができ、旅行気分でよい思い出となったようです。

父と息子で頑張った40日間は、思わぬ副産物をもたらしました。夫の奮闘ぶりを見た上司の計らいで、思いがけず、夫は双子誕生後に育児休業を取れることになったのです。

また、これまで私に任せきりだった、保育園や二重保育先への送迎と平日の家事・育児を一人で行い、夫は初めて、私の仕事と家庭の両立の苦労を理解できたそうです。「これまでどれだけ大変だったか実感した、これからは二人で頑張ろう。」というメールを夫からもらい、これからは夫と力を合わせて、育児と仕事に取り組んでいけるのだと嬉しく感じました。夫のお蔭で、私は安心して、病院でお腹の双子を育てることに専念することが出来ました。

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私が入院中は、父親と二人暮らし。夕食を父親と一緒に作る6歳の息子(夫撮影)


双子の妊娠・出産・育児に関する本


私が読んで役立った書籍をご紹介いたします。時間がたっぷりある管理入院中に一読するのはいかがでしょうか。

「双子&多胎の本―妊娠・出産・育児のすべてがわかる」 (ベネッセ・ムック―たまひよブックス) ・・・帝王切開の手術の様子などが、写真入で紹介されていて、心の準備ができました。

「双子&三つ子ママの妊娠・出産・育児」 (たまひよ新・基本シリーズ+α)

「双子・三つ子ママの妊娠出産育児安心ブック」竹内正人 (主婦の友生活シリーズ―プレベビBOOKS)・・・一卵性のそっくり双子姉妹の月齢ごとの成長ダイアリーが楽しい。

「ふたごの妊娠・出産・育児~もしもふたごを育てることになったら~」レーネ・ロノウ著・ビネバル出版・・・双子の妊娠から育児について、懇切丁寧に文章で書かれた本です。

「赤ちゃんができたら考えるお金の本2008年版」ベネッセコーポレーション・・・出産・育児生活を支える経済的支援について分かりやすくまとまっています。


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