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【ニュージーランド子育て便り】 第15回 ニュージーランドのICT教育事情

村田 佳奈子

2014年4月18日掲載

要旨:

ニュージーランドでは、テクノロジーから子どもたちを遠ざけるのではなく、適切に触れさせるという考えがあるようである。小学校でもICT教育が行われており、中高生くらいになるとパソコンやタブレット端末を持って学校に行く子どもたちも多い。娘のプリスクールでもタブレット端末を使うセッションを行っている。子どもたちのICT教育事情を、紹介したい。

子どもがパソコンやタブレット端末を使うことに関しては、まだ新しい技術ですし、考え方は様々だと思います。私自身は、敢えて教えてまで子どもに使わせなくてもよいのではないかと思っているくらいです。ところが、ニュージーランド(以下、NZ)では、こうしたテクノロジーを子どもから遠ざけるというよりは、適切に利用していこうという考えが多いようです。これも「今のところは」ということで、気軽に方針転換をするNZでは何かをきっかけに、また方針転換するかもしれません。

NZは1月末~2月初めに新学期を迎えます。この時期に、学校にいく子どもたちは1年分の文房具を買いそろえるそうですが、こうしたBack to School Sale(新学年セール)のカタログにはパソコンやタブレット端末も掲載されています。学校や年齢にもよりますが、多くの子どもたちが勉強のツールとして学校にパソコンやタブレット端末を持って行っているとのこと。調べ物をする学習などでもインターネットの使用を前提とした課題が出されることも多いようです。また、昨今、話題となったのは特定メーカーのタブレット端末の持参を義務とした私立の高校があるというニュースです*1。端末を指定した点と、持参を義務としたという点において、特に話題となったようでした。この事例は極端なものではありますが、子どもたちにとってパソコンやタブレット端末は身近な存在になっているということがこうした話題からうかがえると思います。

娘のプリスクール(保育園)*2であるKindercare®*3でも独自にCherry.bytes®というセッションがあり、3歳を過ぎた子どもを対象に専属の先生が来て、テクノロジーと触れ合う機会があります*4。1週間に1度、30~45分程度のセッションで、今年度は2人1組でタブレット端末を使っています。この時間への参加は必須ではなく、親が承諾して初めて参加できるものなので、参加していないお子さんもいるかもしれません。娘には、これも1つの体験だと思い、参加させています。タブレット端末を使って何をしているかと言うと、季節にちなんだ絵を描いたり(例:生徒の顔をカメラで撮影し、その写真をペイントツールで加工してサンタクロースの服を着せる)、ゲームをしたり(例:着替えをし、帽子をかぶり、日焼け止めを塗って、ビーチに行くというような子ども向けゲームアプリ)、アルファベットで自分の名前を書いてみるといった感じのようです。最近の娘はこのセッションがある日は早起きして張り切っていますし、お迎えの時もクラスの入り口に飾ってある成果物を誇らしげに見せてくれます。このプリスクールは公立ではありませんし、決してNZ全体を代表しているわけではありませんが、こうした試みをしているプリスクールがあるということ自体、興味深いのではないでしょうか。 また、先に取り上げたこのプリスクールのウェブサイトには、セッションについて説明するページに、自分の子どもに適切なアプリケーションを選ぶときのコツも載っています*4
  • 楽しいもの、年齢相応のもの、双方向的であること。
  • 小さな子どもたちが探究や経験をするのに十分な時間を設けていること。
  • コミュニケーションを促すものであること。
  • 学習者にすぐにフィードバックが与えられ、問題解決の機会を与えられること。
  • たくさんの学習レベルが設定可能であり、学習者の学習ペースに合わせることができること。
  • 学ぶことが楽しいことだと感じさせること。
客観的に子どもにとって良いアプリケーションについて考えたことがなかったので、初めて意識させられたような気がします。

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張り切って登園!

オークランド中心部の図書館の子どもコーナーは現在改装中ですが、改装前にはゲームのできるテレビ端末が設置され、小学生くらいの子どもたちが群がっていました。博物館の子どもコーナーにもタブレット端末が何台も設置されており、博物館のテーマに関係するパズルなどで遊べるようになっています。また、近隣の小学校のウェブサイトでも、多くの学校がICT教育の内容を紹介しています。このような環境でも、なぜか日本にいた時のように、「こんなに子どもたちがデジタル漬けで大丈夫なのだろうか?」と心配にならないのは、日本にいた頃と比べると、NZ第一の経済都市であるオークランドでさえ、現実が圧倒的に非デジタルな環境だからかもしれません。良くも悪くも人工的な物も場所も少ないので、自然の中で遊ぶ機会の多い子どもたちは「使いすぎ」「デジタルだけ」には、なり得ないような気がするのです。

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オークランド博物館にあるタブレット端末

ところで、IT環境が整い、いつでもインターネットを使える状況は、私の海外での子育てにも大きな影響を与えていると思います。娘は、分からないことはその場で解決したいという欲求が強いところがあります。例えば「お腹出していると雷さんにおへそ取られるよ。」と言えば「雷さんって何?日本に住んでるの?どうやって取るの?パソコンで見せて!」、「日本では、新幹線という、とっても速い電車が走っているんだよ。」と言えば「パソコンで見せて!」という具合です。特に会話に日本がかかわると、確かめずにはいられないようです。こんな時、パソコンで見せると本当に興味津々です。一昔前、海外での子育ては今よりはるかに物を伝えるのが大変だっただろうなぁと想像します。日本にいる私の両親や親戚とビデオ通話ができ、知人や友だちといつでも気楽に連絡がとれる状況も、孤独を感じずに過ごせている要因なのだと思います。もっとも日本の状況が分かりすぎるのは、NZの価値観を吸収するには良くないように感じることもあり、これでいいのかというとまた別の話ですが...。こうして子どもたちのICT教育事情を紹介している私自身、「適切に利用する」ということについては、「言うは易く行うは難し」といったところです。

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日本に置いてきてしまったお雛様とテレビ電話で対面


筆者プロフィール
村田 佳奈子

お茶の水女子大学卒業、東京大学大学院修士課程修了(教育学)。資格・試験関連事業に従事。退社後、2012年4月~ニュージーランド(オークランド)在住。
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