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【12月】ロンドンから来た嬉しいメール ~幼老複合施設について考える~

小林 登 (CRN 所長、東京大学 名誉教授、国立小児病院 名誉院長)

2012年12月21日掲載
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最近、CRNの英語サイトにとって嬉しいことが二つ起こった。特に嬉しかったのは、私が若い頃の1960年代に勉強していたイギリスのロンドンから来た二通のメールであった。一通は、ロンドンの有名なTimes誌の女性コラムニストMs. Daisy Greenwellさんからの、もう一通はロンドンの北東に住んでおられる二児の母親のMs. Angela Coleさんからのものである。偶然それらは二通とも、2008年9月30日に書かれた私のブログ英訳版(2008年11月28日に掲載)を見て書いて来られたものであった。もっとも、お二人は事前にお互い話し合っておられたのかもしれない。

2008年の私のブログは、ベネッセスタイルケアが運営している東京郊外の大泉学園にある保育園と老人福祉施設を組み合わせた施設の試みの紹介と、その感想を書いたものである。当時のことながら、保育園と老人ホームを同じ屋根の下に併設する、あるいは結合させて、お互いの交流の機会を作ることは、双方にメリットがあることは確かであると思う。

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本年度の最後のコラムを執筆するにあたり、日本保育協会に「幼老複合施設」についてどのような研究があるか尋ねてみたところ、第一生命経済研究所の北村安樹子研究員を紹介された。電話ではあるが、直接いろいろお伺いしたところ、驚いたことに既に2003年と2005年に調査研究の結果が発表されており、いろいろと大変勉強になった。

第一生命経済研究所のホームページに載っている北村先生の論文は、2003年8月の「幼老複合施設における異世代交流の取り組み―福祉社会における幼老共生ケアの可能性―」と2005年1月の「幼老複合施設における異世代交流の取り組み(2)―通所介護施設と保育園の複合事例を中心に―」の二つである。いずれも、第一生命経済研究所のホームページで見ることができる。

まず驚いたことは、保育園と老人ホームの組合せは、そのメリットではなく、複合施設にすることによる経済効果を考えたものも少なくないということであった。確かに、建築費や運営費を軽減できることは明らかである。ただし、複合することによって、残念ながら職員数を増加せざるを得なくなることもあるという。

幼老施設の複合化では、ハード面については入口、通路、ホール、食堂、更に機能訓練室などの特殊な目的の部屋などの空間の配置に、子どもと高齢者の直接交流を促したり、視覚を介した間接交流を促したりする工夫が必要であることを、北村先生は指摘している。

ソフト面では、自然な交流を目指して、いろいろな取り組みを行う施設がある一方で、ほとんど交流のない施設もあることが指摘されている。ベネッセスタイルケアの施設のひとつである大泉学園は、幸いその前者であって、私も特に印象付けられた。子どもと高齢者との交流は、定期的な実施のほか、お誕生会やひな祭り、端午の節句のような行事の日を利用した交流レクリエーション、創作芸術活動、食事、会話などのいろいろな事例が紹介されている。

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2003年8月の論文で北村先生が紹介している社会福祉施設等の調査によると、保育園総数に占める老人福祉施設の併設率は、1997年は310施設で1.4%、それが2000年に入ると552施設で2.5%、すなわち1.8倍になっていた。まさに21世紀のトレンドといえるであろう。

20世紀の社会は、何となく縦割り傾向が強くなり、人間性が失われてきたと感じる。21世紀こそ、発想を転換して、横に繋げる必要があるのではないか。そのことを以前のブログで、当時の感想として述べた。小さな子どもが高齢者と共に同じ家の中で過ごして、お互いに触れ合う機会ができる。それが高齢者にとっては生き甲斐に、子どもにとっては心の発達にとって何らかの力になっていることは間違いない。それでは、保育園と老人ホームの複合施設をよりよくするためには、どうしたらよいか。現在考えなければいけない時になっている。まずは情報を集め、いろいろな立場の人が一緒に話し合い、アイディアを出し合って「子ども学」的に考えなければならない時にある。

最近、世田谷区で「子どもの声」がうるさいというクレームが保育園に寄せられたということが、雑誌AERAの2012年11月26日号に載っていた。日本もいよいよここまで来たかという感じである。少子化は、まさに我が国の滅亡のシグナルである。それを変えるには、子どものいる社会を作らなければならない。明治時代の前に日本を訪れた外国人が皆、日本の子どもたちの目の輝きと、日本人の子どもを大切にする姿に印象付けられたということは周知の通りである。そんな社会を取り戻すために、高齢者と子どもが社会の中で触れ合える行政的な仕組みを、まさに子ども学的に考えてつくる必要があるのではないだろうか。

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