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【12月】新しい年、2012年を迎えるに当たって

「光陰矢の如し」で、早くも2012年、平成24年を迎える日が近づいてきた。今年は特に、3月11日の東日本大震災、しかも東日本の太平洋側では大きな津波による想像を絶する深刻な大被害、その上福島の原発事故というわが国にとって初めての体験まで加わった。1853年の黒船来航、1945年の第二次世界大戦敗戦に続く、第三の国難といえる出来事が起こったと言えよう。そのためか、まさに矢の如く時間が飛んだ。

考えてみれば、1945年の第二と2011年の第三の国難に、大きな共通点が見える。その第一は、2011年の国難で津波によって裸になった町の姿と、1945年の国難でアメリカの焼夷弾爆撃、さらに原爆の被害を受けて裸になった日本全国各地の町の姿である。第二は、2011年には原子力発電所の事故によって、1945年には原爆投下によって、原子力による放射線の影響が大きく問題になっていることである。

裸の町も、放射線の影響も、第二の国難後の回復の経過を考えれば、今回の第三の国難でも、時間はかかるものの、おそらくより手際良く回復できると思っている。特に、放射線の問題は、原爆投下後2週間程の広島でほぼ一日過ごし、水まで飲んだ私個人の経験からも、過剰に心配する必要はないと考えている。科学・技術の正しい目で、現状を正しく捉え、着々と冷静に処理すれば良いのではなかろうか。時間が経てば、それもそんなに遅くならない内に、何とか解決出来るものと思っている。

しかし、更に重要なことがあることを忘れてはならない。それは、心の立て直しである。第二の国難の後、わが国は急速に、しかも思いの外早く敗戦の焼野原や荒廃から立ち直り、豊かな社会を築くことが出来た。ある意味で、その物質的な豊かさが裏目に出て、物質万能主義、拝金主義がはびこり、日本人のもっていた豊かな心を失い、子ども問題ばかりでなく、犯罪や行動など社会問題が蔓延してしまった。19世紀末日本に来て東京大学で教え、『日本、その日その日』を著したモースがみたらびっくりするような状態であろう。

それを立て直すのは、広い意味での教育である。科学・技術を高める教育がまず挙げられる。しかし、3・11以降いろいろな出来事をみると、それを利用する人の倫理観・道徳観などの心も育てなければならないように思われる。したがって、われわれが関心をもって取り組んでいる育児・保育・教育(乳幼児教育・就学前教育)も含めた教育のあり方を考えなければならないのである。

第一の国難は、教育勅語とともに西洋式の教育の導入、また第二の国難は、民主主義教育の導入によってその国難を乗り越えた。第三の国難も、育児・保育・教育を含めて、広く教育の在り方を捉えなおし、発想を転換した新しい教育体制を確立しなければならない。それ無しには、わが国の科学・技術のレベル向上は勿論のこと、社会の在り方を正す模範・道徳・倫理も、社会の連帯を固める共感の心も育たないであろう。育児・保育・教育の研究を柱とするCRNの果たす役割は、ますます大きくなる。

2012年も引き続き皆さまのご指導、ご支援をお願いしたい。
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