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【ニュージーランド子育て・教育便り】第40回 数学のコンペティション

要旨:

ニュージーランドの学校では、小学校高学年、インターミディエイト・スクールに入った頃から、勉強が得意な子どもたちがコンペティションに参加させてもらえることが増えてきます。オークランドの学校が多数参加している勉強における楽しいチーム戦とはどのようなものなのか、今回は娘が参加した数学のコンペティションについて取り上げています。

ニュージーランドの学校では、小学校高学年もしくはインターミディエイト・スクールに入った頃から、学校が主体になって勉強が得意な子どもたちをコンペティションに参加させてあげようとすることが増えてくるようです。多くの学校が参加するものもあれば、ある分野が得意な子どもに対して先生が見つけてきて参加させるようなものもあるようで、テスト形式のものもあればチーム戦など形式は様々です。今回は、娘が参加したチーム戦の数学のコンペティションを取り上げます。

学校の代表に選ばれるプロセスは、恐らく学校ごとに異なるのだと思います。娘の場合には、学校で参加希望者に対して試験を実施し、その結果が上位だった子どもが各学年12名、補欠3名という形で選考されたそうです。その12名を4名ずつ3チームに分けました。後ほど説明しますが、1チームの1名はランナーとして登録することになります。チームを組んでからというもの週に一回、この4名でランチを食べながら、数学の問題を解いたり、議論をしたりしながら過ごしていたそうです。

このコンペティションのルールですが、20問の問題を30分以内に解くことが求められます。20問の問題は一度に与えられるのではなく、1問解くとランナーが採点者のいる場所に走って回答を持って行き、正答していると2問目がもらえるということになっています。全チームのランナーが走る距離が均等になるように、走る方向が一定に決められています。誤答であった場合、再び走って戻ってチームで再考することになります。3回誤答が続くと回答権を失い、その次の問題が与えられます。時間制限は30分ですが、速く正確に20問を解いたチームから順位がつけられます。

さて、その3チームでまずは、地区予選に出場します。ここで学校ごとに上位2チームが、後日オークランド大会に進出します。娘の所属するチームもこうして地区予選を経て、平日の夜に行われたオークランド大会に参加してきました。会場は、バスケットボールの試合などが行われる競技場で、その本格的な仕組みに到着早々、驚きました。一時間近く早く到着してしまった我々は、手が空いていたので夫が会場設営まで手伝いました。写真はその時のものです。その後、続々と子どもや家族が集まってきて会場は満員になりましたが、気合の入っている学校などは横断幕まで掲げていました。結局、オークランド中から集まった数学好きなチームの数は、1学年120チームもあり、会場は熱気にあふれていました。

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テーブル一つを1チーム4名で使用。走る向きが→で示されている。
写真左側が採点者のいるテーブル。

試合が始まると大声援と、会場の子どもたちが数学を解きあう声で大盛り上がり。これは数学の試合なのか、スポーツの試合なのか、そのどちらも融合した新しい競技で、こんなに人が集まり大声援をあげるなんて、コロナ以降初めてで楽しい体験になりました。娘のチームも健闘し、30分内に全問正解して決勝を終えることができました。チームメイトの保護者の方たちに挨拶をしたのもこの時が初めてですが、子どもの興味関心が近いご家庭と会話ができるのも、とても良かったと思います。

勝つことを最優先に考えれば、「のんびりとランチを食べながら議論しているよりも、多少数学の力が劣っても、ものすごく早く走れるランナーがいたらいいのでは?」「走り方や机の使い方の練習をしたらいいのでは?」などと数学以外の対策がある気がしてしまいました。ただ、「そんな余地が残っている面白さも、純粋に数学の順位が出てしまうよりも学校対抗戦としては開催しやすいのかな?」とも思いました。他にも文学が好きな子たちなどは、本当に楽しいだろうなと思えるような、読書知識を問うようなチーム対抗コンペティションも開催されています。中学校くらいの勉強は個人でするものとなりそうなものですが、このように勉強が好きな子たちもチーム戦の楽しさを味わえるのは、素晴らしいなと思います。

筆者プロフィール
村田 佳奈子

東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。幅広い分野の資格試験作成に携わっている。7歳違いの2児(日本生まれの長女とニュージーランド生まれの長男)の子育て中。2012年4月よりニュージーランド・オークランド在住。
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