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【ニュージーランド子育て・教育便り】第30回 牧場に移住しての子育て

要旨:

ニュージーランドでは、牧場経営や牧場管理のスキルをもつことに対して、人々が敬意を払っているように感じます。牧場で子育てをしたいと夢見る人も少なくありません。先日、息子の友人家族が生活拠点を郊外に移し、牧場に引越しをしたので招いてもらい、家族で遊びに行ってきました。自宅で馬を飼い、子どもを育てたかったという夢を実現したご家族の牧場はとても美しいものでした。そこでの暮らしぶりを紹介して頂いたので、今回はその様子を取り上げています。

ニュージーランドは酪農国家ということもあってか、牧場の経営や牧場を管理できるスキルをもつ人々への敬意が高いように感じます。都市部に住んでいる人でも、牧場生活に憧れを抱き、その生活を思い描くことも多いようで、実際に移住する話も時折聞きます。滞在9年の私たち家族にとって身近な友達家族の中でも、2組がオークランドの都市部から牧場に生活の拠点を移しました。そのうち1組は、男の子二人の兄弟をもっと自然豊かなところで育てたい、自然と共に生きるスキルを教えたいということで4年ほど前に移住したケースです。そして今回ご紹介するのは、息子の園での大の仲良しの友人家族が、今年の始め頃に牧場への移住を決めて遠方に引越しをしたケースです。偶然かもしれませんが、やはり男の子の二人兄弟です。自宅で馬を飼いながら、二人の息子を育てたいという思いが徐々に強くなっていったのだそうです。そして夢を実現してしばらく経ち、その暮らしぶりを案内して頂きました。

ニュージーランドでは、牧場と一口にいっても、その規模や目的に応じて大きく分けると3つの種類に分けられます。①「商業用の牧場(commercial farm)」、②「趣味の牧場(hobby farm)」、③「自作の牧場(homestead)」となります。①の「商業用の牧場」は国内への供給、世界中への輸出を視野に入れた大規模な牧場で、牛肉、羊肉、乳製品といったものの中から1、2品目といったように取り扱う品目も多くはありません。日本でもニュージーランドの牧場というと大体このタイプをイメージされるのではないかと思います。②の「趣味の牧場」というのは、ニュージーランド生まれで資産のある人では所有していることが特に珍しくなく、オークランドに立派な自宅を構えているほかに、少し郊外に別荘のような小規模な牧場を所有し、週末や休暇に訪れて余暇の楽しみにしたり、子どもに牧場での生活を体験させたり、自然を楽しむようなものが該当します。最後の③「自作の牧場」は、家族で住む主たる場所が牧場で、牧場以外の収入が主たる所得の場合に該当するようです。家畜、野菜、果実など数多くのものを少しずつ育てているのが特徴です。私たちの友人家族のケースも、あえてライフスタイルとして選択している③の「自作の牧場」ということになります。

分類上の自作の牧場というと、小規模なイメージをもつかもしれませんが、オークランドの都市部から訪れた私からすれば、写真をご覧いただけると分かる通り非常に広大な土地です。そこで、最初に案内して頂いたのは、ワイン用のブドウ畑です。このブドウからどの程度の量のワインができるのかはまだわからないとのことでした。ブドウの手入れをする知識がないため、管理は委託を検討しているのだそうです。その隣には、飼い始めた若い馬が2頭いました。今は小さな馬ですが、5年後くらいには子どもたちが乗れるようになるのではないかとのことでした。子どもの成長にあわせて馬を育てて、いつか乗れるようになるとは羨ましい限りです。更に進むと、隣の土地との境に池があり、たくさんのアヒルが飼われています。雨水を貯水している池の水は太陽光で発電されたポンプでくみ上げられ、乾燥している時期には、動物の飲み水や牧草の水やりに使われるそうです。更に進むと、柵で囲われているスペースに牛が6頭いました。この牛たちは牧場の草を食べてもらうために若い牛を買ってきたのだそうです。5年ほど経つと出荷することもできるようですが、食肉としての利益が目的というよりは、草の手入れのために飼うことに決めたそうです。更に、美しく整備された野菜畑があるほか、レモンやミカンなどの果物の木も家のそばに植えられています。大きな防風林も家のそばに植えられており、冬場には枝を切って暖炉の薪にするそうです。説明を聞くにつれて、牧場全体が一つの仕組みとして完結するように美しくデザインされていることがよく分かりました。案内をしてもらっている間、息子の友人はまだ3歳半にもかかわらず、牧場の様々な場所の約束事(池に近づきすぎない、電気の流れている柵に触らない、といったこと)を熟知しながら自由自在に駆け回っている様子が印象的でした。

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仔馬と我が家の娘

徒歩で一周して戻ってきた後、牧場での手入れに欠かせないという専用の車に乗せてもらいました。タイヤが6個ついており、斜面でも安定して走行できる優れものというこの車は、肥料をまいたり、枝を整備したり、様々な物を運ぶ際の必需品だそうです。乗せてもらった子どもたちは大喜びでした。

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牧場に欠かせない車

友人家族の牧場は、どこを切り取っても美しく絵になるような光景ばかりでした。こうした美しい牧場を整備し所有していることそのものが、こうした生活をしている人々の誇りでもあり、次の世代に受け継ぎたいことのようです。ちなみに、ニュージーランドの牧場経営が主流の地域の小学校には、Calf Clubiといって、しばらく子どもが子牛や子羊の世話をして、数か月後にその成長を学校で披露するような文化が残っているところも多いようです。子牛や子羊の入手の仕方は、小学校から保護者宛に子牛や子羊を提供してくれる地域の牧場のリストが渡され、保護者が直接牧場主と交渉して手に入れるようです。オークランドで出会う大人でも、小学生の時に子牛や子羊のお世話をした思い出話を語ってくれることがあります。

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息子と仲良しのお友達

このような素敵な牧場を所有することは、誰もが実現できるわけではありませんが、都会を離れた理想の子育ての一端が見えたように思います。どんどん頼もしくなるであろう息子のお友達に、次に会いにいくのが楽しみです。


筆者プロフィール
村田 佳奈子

東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。幅広い分野の資格試験作成に携わっている。7歳違いの2児(日本生まれの長女とニュージーランド生まれの長男)の子育て中。2012年4月よりニュージーランド・オークランド在住。
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