CHILD RESEARCH NET

HOME

TOP > 論文・レポート > 子育て応援団 > 【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】 第44回 ロックダウンの年末年始とメルヘン(童話)

このエントリーをはてなブックマークに追加

論文・レポート

Essay・Report

【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】 第44回 ロックダウンの年末年始とメルヘン(童話)

要旨:

新型コロナウイルスの感染拡大が続くドイツでは、12月中旬から完全ロックダウンとなったことから、年末年始は例年になく静かなものとなった。学校や保育園も閉鎖されてしまったが、想定内だったからか、息子の学校では大きな混乱もなく、スムーズに自宅オンライン学習に移行した。年が明けても、感染拡大に歯止めがかからないことから、さらに規制が強化、延長された。このように「ステイホーム」生活が長引く中、ドイツの年末は毎年、メルヘン(童話)がテレビで放映される季節でもあり、グリム童話をはじめとする多くのメルヘンが放映され、人気を博している。我が家でも、例年通り家族で鑑賞したが、メルヘンのようなハッピーエンドを強く願わずにはいられなかった。

キーワード:
ドイツ、ベルリン、新型コロナウイルス、グリム兄弟、メルヘン、童話、在宅学習、オンライン授業、感染拡大、クリスマス、ロックダウン、シュリットディトリッヒ桃子

*本記事の記載事項は1月下旬時点でのものであり、規制内容などは随時変更される可能性があることをご了承下さい。

静まり返った年末年始

昨年は世界的に厳しい年となってしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。今年こそは自由に人と会ったり、移動できるようになるよう心から願っています。

report_09_196_01.jpg
ドイツのラッキーチャーム:豚、テントウムシ、そして煙突掃除人

さて、年が明けても、欧州では相変わらず厳しい状況が続いています。ドイツでは昨年11月初旬から「ソフトロックダウン」が導入されましたが、前回の記事でも述べたように、レストラン(持ち帰りや配達のみOK)、バー、映画館や劇場などの文化施設やスポーツ施設は営業停止となった一方で、それ以外の一般商店は開店しており、市中の公共交通機関も通常通り運行していたため、非常に緩い規制で、街中は通常通りの人出でした。

案の定、この「ソフトロックダウン」の効果はほとんどなく、12月に入るとドイツ国内の新型コロナウイルス新規感染者が一日あたり、3万人を超える日も出てきました。連邦政府は当初より、感染者を追跡できるような「過去7日間の人口10万人あたりの新規感染者数50名」という数字を目標にして感染対策を行ってきましたが、都市によっては10万人あたり800名を超える感染者が確認されるなど、拡大に歯止めがかからない状況に陥ってしまったのです。

クリスマスを前にして、さらに状況が悪化することが予想されたことから、12月中旬から規制が強められ、ドイツ全土で「完全ロックダウン」となってしまいました。一般商店(スーパーや薬局、銀行、郵便局など日常生活に必要な店を除く)や美容院など身体に接触する業種は全て営業禁止、公共の場での飲酒も禁止です。特に、クリスマスを前にグリューワインと呼ばれる温かいワインをクリスマスマーケットなど屋外で楽しむ人が増えるのですが、こちらも人が集まることを避けるため、禁止となってしまいました。

また、当地のクリスマスは、日本のお正月同様、一年に一度家族が勢ぞろいする最も大切な行事です。みなが帰省するため、人の移動も一年で一番大きなものとなっています。しかし「完全ロックダウン」となった今年は、12月24~26日の間だけは、親子関係にあるなど近しい間柄4人までの招待はOK(13歳以下の子どもは例外)、それ以外の日の個人的な集まりは2世帯以内、集まる人数は合計5名まで(13歳以下の子どもは例外)という厳しい規制が敷かれました。

そして、普段の大晦日は毎年あちこちで花火が上がり、パーティが開催され、大変にぎやかですが、今年は花火の販売自体が禁止、既に持っているものも使用しないよう要請が出たこともあり、例年にない静かな年越しとなりました。

保育園(緊急用を除く)や学校も12月16日から閉鎖となりましたが、オンライン授業を導入するかなどの判断は州ごとに委ねられました。息子が通うギムナジウムでは、学校所在地周辺の感染状況が悪化していたことから、クリスマス休暇前の1週間は「ハイブリッド授業」といって、通学しての授業と自宅でのオンライン学習の混合時間割が元々発表されていました。ですので、通学授業の分がオンラインに切り替わり課題が出されることとなっただけで、幸い大きな混乱はありませんでした。

ロックダウンの延長、更なる強化

この「完全ロックダウン」は12月中旬に発表された時点では、1月10日までと定められていました。しかし、年が明けても、ドイツ国内の75%の市郡において、過去7日間の人口10万人あたりの新規感染者数が100人を超え、さらに70以上の市郡ではこの値が200人を超えており、上述の目標からは程遠いことから、結局、上記の制限措置を1月末まで延長することが、年明けの政府と各州知事の会議にて決定されました。

さらに、過去7日間の人口10万人あたりの新規感染者数が200人を超えた感染が深刻な市郡においては,移動が許されるのは自宅から半径15キロメートル以内となりました。この行動制限に当てはまる市郡は1月初旬時点で、ドイツの6分の1に該当するそうですから、その感染拡大の深刻さがわかります。

また、私的な集まりに関しても、2世帯以内合計5名までOKだったのが、さらに厳しくなり、他世帯の1名までと制限されてしまいました。つまり、プライベートで同居家族以外の人に会う場合は、1人にしか会ってはいけない、ということです。

これらの「完全ロックダウン」は1月中旬の会議で2月15日まで再々延長され、公共交通機関や店舗内では医療用マスクの着用が義務となるなど、内容もさらに厳しいものとなりました。

このように措置をたびたび再強化しなければならなかった背景には、感染力が非常に強いと言われているイギリスなどからの変異種がドイツにも入ってきていること、集中治療を受ける重症患者が昨春の2倍に達していることがあり、医療システムの崩壊をどうしても避けなければならないという政府の決断だったように思えます。

一方、学校での対面授業は、少なくとも1月25日まで中止とされましたが、こちらも再々延長され2月12日まで中止となりました。ただし、日本でいう中学校終了資格試験や大学進学の資格試験(アビトゥア)を控えた上級学校の10、12、13年生*に限っては、1月11日以降に小規模グループでの授業を実施可能とし、授業形態は各校で決定する、とされました。

息子の通うギムナジウムでは、年が明けても、計画どおり、語学の授業はオンライン対面授業、その他の科目はクラウド上にアップされた課題を各生徒がこなして提出しており、在宅学習が毎日行われています。昨春にも実施していたホームスクーリングですし、今回も特に問題がないことから、学校閉鎖中は引き続き、在宅学習を行い、通学して対面授業が始まるのは、今のところ冬休み明け2月15日からと予定されています。ただし、アビトゥア受験を控えた12年生に限っては、保護者と学校の話し合いの結果、1月25日より1日1時限まで学校での対面授業が行われる模様です。

我が家の年末の過ごし方:メルヘン(童話)鑑賞

ところで、当地は緯度が高いため、12月は日の出が8時過ぎ、日の入りも午後4時前後と日が特に短く、天気も連日どんよりと曇り、時に雨や雪がぱらつき、気温も0度前後と、まさに暗くて寒いじめじめとした陰鬱な季節です。従って、新型コロナウイルスが広がる前から、毎年この時期に人々は「ステイホーム」を実行しており、あたたかい家で、くつろぐことが多かったのです。

そんな中、この季節になるとテレビで繰り返し放映されるのが、子どもたちに人気のメルヘン(童話)です。ドイツはメルヘン発祥の地と言われており、「メルヘン」という言葉もドイツ語(Märchen)由来です。そして、ドイツ各地で口頭で語り継がれていたメルヘンを文書としてまとめたのがグリム兄弟で、彼らが編纂したものが「グリム童話」と呼ばれているわけです。

そんなグリム童話は、本国ドイツでは誰もが知る古典で、書籍としてはもちろん、オーディオブックとしても人気を博しています。また、多くの物語は子ども向けにドラマ化されて、テレビのクリスマス特番や年末特番でも数時間連続で放映され、複数の異なるテレビチャンネルで目にすることができます。ちなみに、お隣デンマークのアンデルセンの童話も同様に人気です。

驚くのは、そのほとんどが1950~60年代に制作されたもので、これらの古い映像が毎年同じ時期に流されることです。ベルリンで生まれ育った夫もこれらの童話や同じドラマに慣れ親しんで育ってきた、ということで、その伝統を継承するべく(?)、息子にも小さい頃から積極的にこれらの番組は観せています。

中でも定番は、日本でもお馴染みの「ヘンゼルとグレーテル」や「かえるの王様」「ラプンツェル」「灰かぶり姫(シンデレラ)」、そして映画「アナと雪の女王」の原作であるアンデルセンの「雪の女王」です。世代を問わず安心して楽しむことができる内容となっています。

これらの映像は、かなり年季が入っているのですが、子どもはもちろん、私たち大人も思わず画面にくぎ付けになってしまいます。CGもアクションも何にもなく、実写ができなかったと思われるシーンは、そこだけアニメに切り替わるなど、時代を感じさせる品質ではありますが、そこが返って素朴で、深い味わいを醸し出しています。

さらに、当地の子ども向け絵本では、童話であっても、結構残酷なシーンが多く描写されているのですが、テレビ番組ではマイルドな仕上がりになっていて、安心して観ていられるのも、小さな子どもでも観賞できるポイントだと思います。また、ストーリーの多くは勧善懲悪でハッピーエンドなので、後味が良く、水戸黄門のドラマをついつい見てしまう感覚と似ているでしょうか。このように年末に多く放映されるメルヘンですが、普段はハリウッドのアクション映画が大好きな息子もいまだに見入っています。我々大人も「こうして親子代々同じ番組を観るのもなかなか悪くないなあ」と温かいお茶を飲みながら、一緒にくつろいでいます。

昨年は、ほぼ一年間、家に引きこもっていたので、メルヘンのように「現実の世界でも早くハッピーエンドが訪れないかな」と思いながら、空想の世界であるメルヘン鑑賞を楽しんだ年末でした。


  • * ドイツでは、小学校卒業後、大学進学を念頭に置いた場合、日本でいう「中高一貫校」のイメージに近いギムナジウムや統合中等学校(Integrierte Sekundarschulen)に進学することとなります。ギムナジウムは多くが12年生で卒業となるのに対し、統合中等学校ではもう1年時間をかけてアビトゥアを受験するため13年生まで在学することが多いようです。


筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
このエントリーをはてなブックマークに追加

TwitterFacebook

遊び

メディア

特別支援

論文・レポートカテゴリ

アジアこども学

所長ブログ

Dr.榊原洋一の部屋

小林登文庫

PAGE TOP