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【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】 第42回 学校再開とコロナ下の学校生活

要旨:

3月中旬から閉鎖されていたベルリン市内の学校は、5月以降、進学を控えた最終学年から段階的に再開された。優先順位が一番低かった息子の学年もようやく6月上旬から再登校を始めたが、授業は主要科目のみ、給食なしの1日3時間のみの通学が、1週間あまり続いただけだった。夏休みは予定どおり6週間あり、夏休み明けからは通常どおりの授業に戻った。学校以外でも、6月より保育園やサッカークラブの練習も再開されるなど、生活がコロナの状況下以前のものに戻ってきているのを実感しているが、一方でクラスター感染の発生や、夏休みに旅行先で感染した人たちが戻ってきたりと、依然、ウイルス拡大は続いているため、夏休み後も感染が爆発的に拡大しないよう願っている。

Keywords:
ドイツ、ベルリン、新型コロナウイルス感染症、在宅学習、オンライン授業、学校再開、保育園再開、テレビ会議、感染拡大、規制緩和、シュリットディトリッヒ桃子

前回は、コロナ禍によりベルリン市内で3月中旬から学校が閉鎖されたために行われた息子の在宅学習についてお伝えしました。本稿では、その後、学校が再開された経緯や再開後の学校生活などについてお伝えしたいと思います。

学校再開への動き

3月17日に閉鎖されたベルリン市内の学校は、当初はイースター休暇の始まる4月3日まで3週間休校の予定でした。しかし、感染のさらなる拡大とともに、イースター休暇明けの4月20日以降も閉鎖が続くことが4月中旬に決定しました。その後、12年生が受験するアビトゥア試験*(ドイツの大学入学資格取得試験)は、中止か延期かなどの議論を経て、結局予定より約1か月ほど遅れて4月27日より開始されました。一方、学校のその他の学年の再開は、その翌週の5月4日以降、段階的に行われることとなりました。まずは卒業試験や進学試験を控えている最終学年の通学が再開され、その後、順次再登校が許可されることとなったのです。しかし、6年生といっても上級学校であるギムナジウム**(詳しくは第30回参照)入学2年目の息子は、最終学年ではないため、いつから通学できるようになるのか、学校再開後もまだ不明でしたので、家族でやきもきしていました。

5月に入り、ドイツ国内の新型コロナ感染者の実効再生産数が1未満(0.7台)になり、新規感染者数が落ち着いてくると、アンゲラ・メルケル首相は「学校に関しては各州判断で段階的に再開、夏季休暇前までにすべての生徒が1日以上通学できるようにすること。保育園に関しても、緊急託児の対象を拡大し、就学を控える園児が夏季休暇前までに一度登園できるようにすること」と発表しました。我が家でもこのニュースに心が躍りました。

コロナ下での学校生活:社会的距離をとりつつ短時間で

国内で一部の学校が再開しても、息子のクラスはオンライン授業を続けていました。アビトゥア試験を受験する12年生が最優先のため、担任の先生もギリギリのタイミングまで6年生がいつから通学できるのかわからなかったようです。ようやく5月下旬になって「6月2日から対面授業を行いますので、登校してください」と先生から連絡がありました。上級学校ではなく小学校に通う同学年(6年生)の友人たちは、進学を控えた小学校最終学年ということで、学校再開初日の5月4日から通学していましたが、既にギムナジウムに入学していた息子は、優先順位が一番低かったようで、再登校を始めたのは、校内で最後の学年だったのです。

3月中旬の休校措置から約3か月、すっかり家でマイペースに過ごしていた息子は、通学するにあたって、複雑な気持ちだったようです。しかし、いったん登校し、久しぶりにクラスメートと顔を合わせると、それはそれで楽しかったようで、帰宅後は笑顔でコロナの状況下での学校生活の話をしてくれました。まず、感染予防の措置として、クラスは2グループに分けられ、1グループ13名が、少なくとも1.5mの社会的距離を保つために席を空けて着席し、1つの教室で授業を受けたとのこと。つまり、同時間に2つの教室を使用し、2つのグループが異なる科目の授業を並行して行うという手段がとられていたのです。例えば、1時間目はグループ1が算数、グループ2は英語の授業を別々の教室で受け、2時間目はグループ1が英語、グループ2は算数の授業を受ける、という流れです。

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教室内の様子:通常は2人掛けの机だが、コロナの状況下では大きな机を1人で使用している

ベルリン市内ほとんどの学校で、このようにクラスを2つのグループに分け、1クラス15名程度の生徒数で授業を行っていたようですが、1時間に使用する教室数が倍になることから、中には教室数が足りず、体育館に机を配置し、授業を行った学校もあったと耳にしました。また、ドイツの小学校では日本の学校のようにハンカチ・ティッシュなどの持ち物検査は行いませんし、トイレにもせっけんがないことが多く、手洗いの習慣が日本ほど徹底していないように見受けられていました。しかし、学校再開以降は、校内の全ての洗面所に液体せっけんを設置することが市で決められたこともあり、手をきちんと洗うことができるようになったとのことです。また、一度にトイレに入る人数も1~2名と制限されており、小学校では先生が休み時間に監視していたそうです。

マスクの着用は、4月以降、公共交通機関やお店の中では義務付けられていますが、当時学校では義務付けられていませんでした。ですから、学校によってばらつきがあったようで、息子の友人の通う小学校では先生を含め、ほとんど全員が着用しているとのことでしたが、息子の通うギムナジウムでは、クラスでは息子ともう1人が着用しているのみで、大部分の生徒も先生もマスクの着用をしていなかったそうです。

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学校の廊下には矢印マークが貼られ、人の流れが交錯しないようになっている

また、息子のクラスで授業が行われたのは、ドイツ語、算数、英語などの主要科目がほとんどで、体育や音楽などの授業はありませんでした。授業数も1日に2コマ(3時間)のみ、給食はなし、と短時間のみの通学でした。しかも、毎日登校したのは第1週目だけで、6月の2、3週目は隔日登校、4週目は成績表をもらいにいった1日だけというものでしたので、夏休み前の登校はあっという間に終わってしまいました。

このような非常事態下において、一時期は、夏休みを短縮して、補習を行うという議論もあったのですが、結局、息子の通うギムナジウムでは「在宅学習およびオンライン授業で必要な事項の学習は修了した」とみなされ、夏休みは予定どおり6月25日から始まり、8月10日の新学期初日まで6週間は宿題はなしという、いつもと変わらない夏休みになりました。「本当にこれで子どもの学力は大丈夫なのかしら?」と少し不安に思っていたところ、毎年恒例の学年末保護者会のお知らせが来ました。

保護者会もテレビ会議で

毎年、学年末が近づくと、保護者と担任・副担任の先生方が集まって保護者会が行われます。今年は状況が状況だけに、オンラインでのテレビ会議で保護者会が6月に開催され、先生方およびクラスの約半分15名の保護者たちが参加しました。

まず在宅学習に関して先生方から報告があり「子どもたちのオンライン参加や達成度に満足している。オンライン学習で子どもたちの動機づけが上がり、より自立して学習を行うようになった」とおっしゃっていました。子どもたちや保護者が質問や不明点などをもった場合も、メールでやりとりを行うことができ、特に問題はなかったとか。確かに息子も自分で物事を調べ、レポートを書くようになるなど、オンライン学習により、自立学習が身に付いたと、私も感じましたので、先生の意見に同意しました。

さらに「メールやクラウドを利用した在宅学習は、開始当時は子どもたちにとっては少し重荷だった印象を受けたものの、回数を重ねるにつれ、皆よく対処できるようになり、特に最後の方は、課題が少ないと感じる子どももいた。ビデオ会議ツールを用いたオンライン授業も、最初はインターネット接続やツールの使い方の問題があったが、徐々に皆が慣れてきて、最後の方は何の問題もなく使えるようになった」と、子どもたちの順応性の高さや、新たな学習方法がうまく機能したことについて、ポジティブな評価をしていらっしゃいました。前回の記事でもお伝えしたように、息子は最初こそPCの使い方などに戸惑っており、夫と私でフォローしていましたが、何度か繰り返していくうちに、自分ですべて対処できるようになり、PCスキルも上がったと思います。

続いて、各科目の達成度に関するお話があり「6年生で習得すべきすべての必要事項を今学期中に終わらせることができた。オンライン授業では時に、対面授業よりもスムーズに理解が進んだこともあった」とのこと。英語とドイツ語に関しては、期末試験を実施することはできませんでしたが、3月の休校までに実施したテストや課題、在宅学習中に提出した課題、そしてオンライン授業の参加状況をもとに成績をつけた結果、クラスの3分の1は成績が上がったとのこと。一方で、作文などの複雑な課題では、生徒によってレベルや動機づけが異なることもあり、従来の対面授業と今回の在宅学習で達成度の差が生まれてしまい、今後の課題になったとのことでした。

また、理科と社会に関しては、今学期は成績はつけないと決定されました。というのも、実験やプロジェクトを含む授業を行うことができず、成績をつけるのに十分な項目を実施することができなかったからだそうです。しかし、子どもたちは7年生に進級するにあたっての必要な知識は備えているので心配はないとのことでしたので、私たちも安堵しました。

成績に関してはさらに「ノートの取り方・教材の保管の仕方」という点が評価要素の1つでもあるのですが、在宅学習時にメールやクラウドからダウンロードした教材を、個々の生徒たちがどのようにまとめているかなど、在宅学習中の評価方法については、今後検討する余地がある、とのことでした。

先生のお話に対し、私を含む保護者たちも在宅学習は効果的だったと、概ねポジティブにとらえていたようです。一方で、複数の子どもたちがグループで課題をこなさなければならなかった場合、学校であれば近くにいるお友達に声をかけやすいものの、在宅学習であるため、グループ作りに難儀した子どももいたそうです。そこで、クラスのメールリストが作成されたので、そこで子どもたち同士がより良いコミュニケーションをとることが可能になった、と先生方からは回答がありました。

確かに、実際に会うことができない今の状況で、グループワークはハードルが高いかもしれません。しかし、そのような課題が出されるとすぐに息子はクラスメートに電話したり、クラスメートからもメールが来たりと、子どもたちは自主的にグループ形成に励んでいました。実際に会えなくても、コミュニケーションをとる手段は存在しているので、あとはいかに積極的に連絡をとっていくかというコミュニケーション能力もこの状況では必要であることがわかりました。

次年度について:通常に戻る予定だが...

保護者会でも通知されましたが、6月初旬にベルリン市が学校及び保育所の再開に関するプレスリリースを発表したとおり、夏期休暇後に始まる新年度は、全ての学校及び学年が通常どおりの体制で再開する予定とのことです(ただし、自身や家族が重症化リスクを抱えている場合は、在宅学習が認められています)。これにより、時間割も通常のものになり、体育、音楽を含む全ての授業を行うことができるようになります。授業外の補習や学童保育、放課後のクラブ活動も再開され、給食も提供されるようになります。また、ドイツ国内や海外への修学旅行も危険とみなされる地域を除き、基本的には可能となります。

ただし、息子のクラスでは泊まりがけの校外学習は2021年6月まで延期、また今後の新型コロナウイルス感染の再拡大も考慮に入れて、念のため時間割は、クラスを2つに分けたもの、在宅学習用のものなども作成されている、とのことでした。また、手洗いや換気、身体的接触の回避は引き続き求められ、校内でのマスクの着用も義務になるそうです。マスクに関しては、この知らせを聞いた時に私たちは安堵したものの、「給食時間と授業中ははずしてもよい」とされているので、何のためのマスク着用の義務なのか?と疑問が残っているままです。

最後に:学校以外の動き

学校以外の動きでは、6月上旬からスポーツ関連の規制も緩和され、息子が所属するサッカークラブでも、最初の週はピッチ上7名(トレーナー1名+プレーヤー6名)までの条件で練習が再開され、翌週からは12名(トレーナー1名+プレーヤー11名)まで可能となりました。夏休み中もコーチたちがボランティアで練習の指導をしてくださっていますが、いずれも身体的距離を取らなければならないので、試合形式ではなく、個々のテクニックを重視したトレーニングとなっていたようです。

さらに、6月に発表されたドイツ政府の追加景気対策の中には、消費税減税などとともに、「臨時子ども手当」として子ども1人あたり300ユーロの現金が支給されることも決定され、子育て世代としては大変助かっています。 ベルリン市内の保育所に関しては、長らく緊急預かり(医療、警察関係者などエッセンシャルワーカーの子どもたちのみが対象)だけが行われていましたが、6月15日からすべての子どもを対象に通常保育への復帰プロセスを開始しました。早朝や延長保育等も含む形で、それぞれの入園許可証の範囲で全ての子どもに対する保育が再開され、多くの保護者たちが安堵しているようです。

本原稿を執筆している8月上旬現在、ベルリンでは爆発的感染拡大は抑えられているものの、時折クラスター感染が発生したり、夏休みに旅行先で感染した人たちが戻ってきたりと、依然、不安要素は多く存在しています。5月以降、規制が徐々に緩和され、8月の夏休み明けからは学校も通常に戻ることになり、それはそれで喜ばしいことですが、新型コロナウイルス自体は消滅していませんし、ワクチンも特効薬も未開発の現在、新学年開始以降にウイルス感染が急に拡大しないことを願う複雑な気持ちです。

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バスの乗り降りは後方ドアからのみ。
バス前方の運転手席後ろにはビニールシートが張られ、運転者の感染を防ぐようになっている。


  • * アビトゥアとはいわゆる「大学進学のための資格試験」で、主にギムナジウムでは12年生で受験する。この試験は一生のうち2回までしか受ける事ができないが、合格すれば「大学進学の資格」を得ることができる。大学進学の際は、この資格とギムナジウムでの成績の点数を組み合わせた点数(最高点1.0から最低点4.0まで)によって、学校を選んで進学することとなる(日本のような大学入試はない)。この「組み合わせ点数」の全国平均は約2.4で、例えば、ドイツの医学部入学には、この「組み合わせ点数」が1.0~1.2の範囲でないと難しい、と一般的にいわれている。
  • ** ドイツの小学校は4年間で卒業だが、ベルリン市では原則的に6年生まで通い、小学校卒業後は、「上級学校」(ギムナジウム/実科学校/基幹学校)へ進学する。

参考文献

筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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