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【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】 第41回 新型コロナウイルスによる学校閉鎖の影響

シュリットディトリッヒ 桃子

2020年5月29日掲載

要旨:

3月第3週からイースター休み明けの4月19日まで5週間、ベルリン市内全ての学校・保育園は閉鎖され、その後、閉鎖期間の延長も決まった。小学6年生の息子は、学校閉鎖期間中の課題を全てメールやクラウド、ビデオ通話を通じてこなしている。これまでPCを使う経験はほぼなかった息子だが、これを機にPCスキルを少しずつ習得することができたこと、個別指導のような感じで先生から直接フィードバックをもらえたこと、自分で時間管理を行う習慣がついたのは良かった。しかし、学校に登校してこそ学べる事項も多くあるので、一日も早くコロナ禍が収まり、学校が再開されることを願っている。

Keywords:
ドイツ、ベルリン、新型コロナウイルス、学校閉鎖、在宅学習、Skype、ウェブ会議システム、感染拡大、行動制限、ロックダウン、シュリットディトリッヒ桃子

前回はドイツおよびベルリンにおける新型コロナウイルスの感染拡大経緯についてお伝えしましたが、今回は3月3週目から施行された学校閉鎖による影響をお伝えしたいと思います。

3月3週目から全学校が閉鎖に

3月に入ってすぐ、ベルリンで一人目の感染者が確認されると、第二週の後半には感染者数は累計158名にまで膨れ上がりました。この急速な感染者の増加に対し、市は感染症保護法に基づく新たな行動制限に関わる政令を発表、4月19日まで効力をもつこととなりました*。その内容は50人以上のイベントの開催の禁止、文化・スポーツ施設の閉鎖といったものでしたが、同時にもう一つ重要な項目が発令されました。それは翌週(3月第3週)からイースター休み明けの4月19日まで5週間、市内全ての学校・保育園を閉鎖するというものです*。元々4月6日から2週間はイースターでお休みでしたので、厳密にいうと、3月16日から4月3日までの3週間、授業がなくなることになります。

これに伴い、3月13日に息子が通うギムナジウムからも急遽、正式にメールで「来週17日から学校は閉鎖されます」というお知らせがきました。このことは予想していましたが、実際に連絡を受けると、やはり衝撃を受けました。3週間もの長い間、授業はどうなるのだろう? 勉強の遅れは生じないのかしら? 一日中家にいる子どもは、どのようにして時間を過ごしたらいいのだろう? 保護者である私や夫の仕事との兼ね合いはどうしよう? いくつものクエスチョンマークが頭の中をよぎりました。

仕事に関しては、私の勤務先の学校は幸いにも春休みに入っていましたので、この間は、在宅でできる業務だけに集中することができました。夫は業務上、在宅勤務ができないので、毎日出勤しています。(ちなみに、ベルリンでは今でも60%の人が職場に出勤しているそうですが、多くの人は自転車・自動車通勤に切り替え、公共交通機関の利用は新型コロナウイルス拡大前の1割程度まで減少しているそうです。)夫の勤務先の会社は、社内の人口密度を減らすため、また従業員が通勤ラッシュを避けられるようにと、早朝~午前中勤務、午後~夜勤務の2シフト制にし、勤務時間も通常より短くしてくれています。

ですから、午前か午後のどちらかは家にいてくれるので、彼が子どもの勉強を見ている間、私が仕事に取り組むことが可能になっています。このように、我が家では一日中子どもを一人にしておく事態は避けられ、仕事も何とか続けることができています。

休校中の課題・テストは全てメール

では、実際にどのようにして3週間もの間、ベルリンの学校は子どもたちの授業を行ったのでしょうか。6年生である息子の通うギムナジウムでは、7年生以上の生徒(中高生)は学校が新たに作成したウェブページ(クラウド)にアクセスし、そこから課題やテストをダウンロードするよう、学校からメールで連絡がありました。しかし、5、6年生に関しては、先生から直接メールでそれらが送られてくるとのことで、休校初日の朝から早速、複数教科の課題メールが送られてきました**

メールで送られてくる課題は、科目によって異なりました。例えば、ドイツ語、英語、音楽に関しては、先生からのメールに課題やテストが添付ファイルとしてついており、解答を送り返す、という形式がとられていました。それらの多くは記述式でしたが、提出後は6段階の評価がつけられ、教科によっては先生からのコメントとともに採点結果が返送されてきました。ただしドイツ語の場合、その評価分布は発表されましたが、個人の成績は学校が再開したら教えてくれる、とのことでした。

社会に関しては、2つ課題があり、1つ目は、休校前まで取り組んでいたポスター・プレゼンテーションを完成させ、写真を撮って先生に送るというもの、そして、もう一つは、別途取り組んでいたポスター・プレゼンテーションをスライド・プレゼンテーションとして完成させるものでした。後者は学校再開時に、一人ずつ教室で発表する予定だそうです。図工に関しても、先生の指示する作品を完成させ、写真を撮って先生にメールで送る、というものでした。いずれにしても、これらの教科では取り組んだことに対し、先生からのフィードバックもすぐに返ってきたので、子どもも手ごたえがあったようです。

一方、子どもの自主性に任せた科目もありました。例えば、算数に関しては、生徒が取り組むべき教科書の該当ページやウェブページのリンクが日付と共にメールの中に記してあり、子どもたちは毎日それらの課題をこなし、翌週に送られてくる解答と照らし合わせるという自習形式がとられていました。理科に関しては、休みに入ってすぐ1回だけ自習用のリンクと添付ファイル形式での課題が送られてきただけでした。先生への質問はいつでもできましたが、学習項目を子どもが本当に理解できたかどうかというチェックは休校期間中はなされていませんでした。

体育も課題に

またベルリンでは、学校と同時に公園も閉鎖されてしまいました。公園では「子どもたちが距離をとって遊ぶのが難しい」と判断されたからです。そんな状況に加え、行動制限令によって最低限の外出しか許可されていない子どもたちに積極的に体を動かすように、何度も先生から連絡が来ました。例えば、アルバベルリンというプロのバスケットボールのチームが子どもたちに向けてYouTubeで発信していたエクササイズの動画のリンク(www.youtube.com/albaberlin)が送られてきて、それを参考に運動するなど、とにかく定期的に運動することが体育の課題として挙げられ、それらを実際に行っている証拠の写真の提出が求められました。

週に2~3回参加していたサッカーチームの練習も、3月に入ってから新型コロナウイルスの影響でお休みに入っていたので、運動不足気味の息子でしたが、幸い、同居家族との散歩や運動は許可されているので、ジョギングに行ったり、自宅周辺の空き地で卓球やキャッチボールをしている姿を写真に撮って学校に送りました。幸い、今の季節はお天気が良いので、毎日何らかの形で体を動かし、日光を浴びるようにしています。

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市からの告知(左側の白い紙)が貼られ、
閉鎖された公園の入り口
 
ブランコもシーソーもテープが貼られて使えない状態に
        
登校できなくてもオンラインで会える!

英語の授業では「クラスメートとグループを作って、グループごとに英語を使ったゲームを作りなさい」という課題が与えられました。しかし、友達と直接会うことは現在禁止されています。そこで、Skypeや電話を駆使してグループを作り、定期的にクラスメートとミーティングを行って、課題に取り組んでいます。このようにオンラインを駆使したコミュニケーションによって、子どもたちは実際にクラスメートの顔を見ながら話すことができてとても楽しそうでした。

また、英会話の練習はウェブ会議システムのZoomやjitsiを使用し、希望制で1回最大6名までのオンライン授業が行われています。こちらでは、先生から直接指導を受けられるので、息子も毎回満喫しているようです。ちなみに、日本語補習校でも夏休みまでは全てZoomでの授業となりましたが、こちらも現地校同様に賑やかに楽しんでいます。

もちろん、登校した方が、社会性を身につけたり、直接教室で授業を受けることによって学ぶことは多いとは思いますが、学校閉鎖そして行動制限令発令中という尋常ではない状況の下、様々なテクノロジーを用いれば、友人とつながったり、勉強を続けることは不可能ではない、ということがよくわかりました。

意外にも規則正しい生活サイクル

学校から休校のお知らせが来たときは、「休みが5週間もある! 毎日朝寝坊もできるぞ!」と大喜びしていた息子でしたが、先生の宣言どおり、学校が休みに入っても始業時間の毎朝8時前後になると課題やテストが添付されたメールが次々に届きます。そして、その中には提出期限が同日午後2時に設定されているなど、時間制限が設けられているものも少なくありませんでした。

さらに、メールのやりとりを行ったり、ワードファイルを使用したりするのは初めての息子。当初は戸惑いも多く、私や夫がファイルの書き方、保存や添付の仕方、先生への返信メールの書き方や送り方などを文字通り「手取り足取り」教える日々が続きました。ちなみに、ドイツ語のキーボードの配列は日本語のそれとは異なるので、夫と私のPCの仕様は少し違います。PCスキル初心者の息子には、こういったことも混乱の元だったようです。

課題を終わらせるのに、思いのほか時間がかかることがわかった本人は、「寝坊していたら、締め切りに間に合わない!」と毎朝8時には起きてくるようになり、課題の多さも手伝って、ほぼ登校時と同じスケジュールで生活することができました。休み前は5週間の間、だらだらと過ごしてしまうのではないか、と少し心配していたのですが、それは杞憂に終わったのです。

フィードバック:在宅学習の可否は?

さて、3週間の在宅学習が終わりイースター休暇中に、保護者や子どもたち、先生からの声がまとめられましたので、ここでいくつかご紹介したいと思います。

緊急事態の下、急遽取り入れられた「在宅学習」形式ですが、先生方はよく対応してくれたと思います。これは他の保護者たちも評価している点で、概ね「メールでのやりとりはうまく機能した」という意見だったようです。

先生方は毎日何十通ものメールを受け取り大変だったと察しますが、いずれの教科もテスト以外では、質問があれば、先生に直接問い合わせることが可能でしたし、課題提出後も先生から比較的すぐにフィードバックが送られてくるので、息子はしばし先生との「チャット」を楽しんでいました。このように、一人一人の生徒に対応する個別指導のような形が可能になったので、これはポジティブに評価できると思いました。

また、デジタル社会において、PCスキルの習得は重要ですし、メール特有の言い回し、特に目上の人に対する表現***などを今回子どもが学んだことは、将来につながる良い経験になったと思います。加えて、自分で時間管理を行う練習ができたことも、同様に、在宅学習のメリットとして挙げられていました。

一方で、教科によっては朝8時ではなく、夜に課題が送られてきて、翌日締め切りというものも時々あったので、「夜はメールチェックをしないので、毎朝定時に課題が送られてきた方がよかった」「毎日、通常の時間割と同じ教科の課題が送られてきた方が、時間割どおりのスケジュールで勉強できたのでよかった」という意見もありました

さらに、学習内容については「課題を理解するのに時間がかかった」「新しい単元を理解するには、もう一度先生から直接説明してもらう必要がある」「メールだけでなく、YouTubeなど動画を活用した授業があった方が、新しい単元やドイツ語文法など子どもが難しいと思う箇所がわかりやすくなると思う」という意見もありました。確かに、息子も新しい単元を教えてもらうのは、学校で直接先生から口頭で説明を受ける方が、やはり理解しやすいと言っています。

また、子どもが通っているのは理系の学校なので、理科の実験がカリキュラムに多く組まれていますが、これらの実験などを自宅で行うのは困難です。さらに、学校がとったアンケートによると、この学校の生徒の96%がコンピューターを自宅で使用できる環境にあるので、メールでのやりとりは問題なく行われたようですが、一方でSkypeを使うことができず、ミーティングに参加できない子どもたちもいました。各家庭で準備できる学習環境は異なるので、そのあたりも今後考慮する必要がありそうです。

最後に「3人子どもがいるので、在宅学習を3人分見なければいけなかったことは、非常に親には重荷だった」という声もあったとおり、在宅学習では保護者に多かれ少なかれ負担が生じます。我が家では、息子が一人っ子で、夫も私も時間的に融通が利く勤務形態であったにも関わらず、PCの使い方を教えたり、課題内容について助言を何度も求められたり、少なからず負担を感じたことは事実です。

延長となった休校および在宅学習

この原稿を執筆している間に、冒頭でお伝えした行動制限令が2週間延長されること、学校再開は5月4日から順次行っていくことなどが、国および市から発表されました。学校からも「イースター休暇明けも在宅学習を続行します」と連絡がありました。

誰もが経験したことのない長期間の休校措置が、さらに延長されることで、私たちを含めて戸惑っている市民も多いと思います。しかし、ベルリン市から保護者向けにネット配信された「在宅学習のヒント」という情報が役に立ちました。ドイツ語、英語、トルコ語、アラビア語で入手できるこのファイルには、子どもの勉強時間の計画の立て方や、勉強へのモチベーションを上げて継続させる方法、家族でどのようにサポートしていくか、コロナ疲れやウイルスに対する恐怖心への対応策などが、具体的に示されています。休校措置がとられてすぐに発表されたこれらの情報は実践的で、とても有難いと思いました。

このように、息子の学校では現代のテクノロジーを活用して、なかなかうまく機能した在宅学習形式ですが、その実現には、先生および保護者が一緒になって子どもたちをサポートする必要があると実感しました。また、教室で直接先生の説明を聞いたり、クラスメートと触れ合ったりと、学校生活の中で学ぶ部分は計り知れないほど大きいと思います。一日も早く今の緊急事態が収束し、子どもたちが安心して登校できる日が来ることを願うばかりです。


  • *執筆中にこの制限は延長されましたが、ベルリンの休校措置に関しては5月末までに段階的に解除されることとなりました。
  • **5月に入ってからは、6年生もウェブページ上のクラウドを用いて、課題のやり取りが行われています。
  • ***ドイツ語では日本語ほど細かくはありませんが、家族や友人以外の人々(目上の人やビジネス関係者)に対して使用する表現があり、特に手紙やメールでは形式的な文句を用います。

参考文献


筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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