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【ニュージーランド子育て・教育便り】 第13回 習い事の試験

要旨:

小さな頃は気楽に習うことのできた様々な習い事ですが、7歳を過ぎたころから少し本格的になっていきます。バレエの試験に向けた対策をしていく子どもたちの様子をご紹介します。

現在は小学校高学年になった娘が3歳だった頃、ニュージーランドの習い事は概ね入会金がなく、スクールターム(学期)制でとても気楽に始めることができることを紹介しました(【ニュージーランド子育て便り】「 第13回 発表会シーズン 」参照)。今もそのような習い事のシステムに大きな変化はなく、2歳になる息子も仲の良い友だちに誘われれば、ターム単位で気楽に体験してみるということができています。ところが、そのような状況は少し年齢を重ねていくと様相が異なってきます。7歳を超えると、試験合格を目指す形に変わっていく習い事も多いようです。

娘は長い間、気楽にバレエを続けてきましたが、6歳半の頃から、その目標はロイヤル・アカデミー・オブ・ダンス(RAD)のグレード1合格へと切り替わりました。RADは英国の教育機関であり、様々なレベルのバレエの試験を提供しています。この試験の指導をするためには、バレエの教師もまた専用の認定資格をもっている必要があります。娘のバレエ教室も、RADの試験を指導できる体制になっています。このクラスに進級すると、週に1回だった練習は週に2回に変わりました。着る物も、試験用の物を一式そろえる必要があります。試験を受けることは必須ではありませんが、クラスのレッスン内容がほぼ全て試験対策となるため、受けないという子はいないようでした。

オークランドの試験日程は8月くらいでしたが、それに合わせて、ターム4の終わり頃から少しずつ振り付けを覚えていきます。最近は習い事でもICTが多用されており、新しい振り付けや動きを習うと、そのレッスン中の動画がレッスン後に専用のウェブサイトを通じて配信され、家でも復習することとなります。そのためレッスンのたびに、練習の様子を収めた大体3分程度の動画が2、3本ずつアップロードされて、親宛に連絡が来ます。上手に踊れている場面だけが送られてくるわけではないので、親に送ってしまうことに賛否両論あると思いますが、私にはとってもかわいらしく思え、楽しみに見ていました。その場で覚えられなくても、何度か見て覚えるというタイプの子には、家で落ち着いて考えながら覚えられる、とても良い仕組みだと思います。

試験では、4種類のテクニック(その中でそれぞれ複数個の決められた動きをします)、3種類の踊りを試験官の前で披露します。それらすべてが評価された総合点で、金・銀・銅・不合格が決まります(脚注1)。本番の約1ヶ月前にはバレエ教室の先生による模擬試験があり、改善した方がよい点について詳細なコメントをくれました。試験のおよその日程はだいぶ前から分かっていますが、詳細な日時は数週間前にならないと分かりません。試験自体は2、3人のグループで受けるのですが、教室の先生のはからいで、だいたい同じ小学校の生徒を同じ組に入れてくれていました。 試験の日は子どもたちは少し緊張していましたが、先生が髪を結って飾りをつけてくれ、いつもより特別な姿になっていくと、小学校のクラスメイトでもある女の子3人の気持ちも盛り上がり、楽しく試験開始時間を待っていました。試験には、3人以外は入ることができません。20分ほどして、3人とも安心した表情で出てきました。大きな失敗はしなかったようです。試験結果は、約1ヶ月後に出ます。娘のクラスはほとんどの子が銀に相当する評価をもらいました。娘も銀という結果で、試験を受ける以上はなんとか合格できたら良いなと思っていたので一安心でした。認定証明書と記章(ピンバッジ)を頂きました。

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グレード1合格後に頂いた記章(ピンバッジ)

試験の準備をしていくことは、テクニックや知識の整理に非常に役に立ちました。しっかりとしたカリキュラムに則っているためか、身体の使い方も、身体の発達に合っていたように思います。特に、大きくなるまで体系的にバレエの技術を習得し、将来的にもバレエを極めていきたいと思っている人にとっては、例え教師が変わっても一貫して学べるような良さがあるのではと思いました。娘にとっても、グレード1に挑戦して合格したことは、良い経験になっているようです。しかし、そもそも物心つく前から私の意向でバレエを習い始めていたということもあってか、ずっとこのような試験を受け続けたいとは思わなかったようです。しばらくしてバレエ自体をやめてしまいました。

今回紹介したバレエの試験の他にも、ジャズダンス、ヒップホップ、モダンダンス、音楽、など様々な試験に向けて頑張っている子どもたちがいます。そんな子どもたちの習い事への熱心さには、いつも圧倒されます。

脚注1

試験の詳細はSpecifications(規定)として公表されています。日本語版もあります。
https://media.royalacademyofdance.org/media/2019/06/17103204/20181002Specifications2018_JA.pdf

筆者プロフィール
村田 佳奈子

東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。幅広い分野の資格試験作成に携わっている。7歳違いの2児(日本生まれの長女とニュージーランド生まれの長男)の子育て中。2012年4月よりニュージーランド・オークランド在住。
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