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【ニュージーランド子育て・教育便り】 第9回 ニュージーランドでの妊娠・出産 (3)

村田 佳奈子

2019年2月22日掲載

前回は妊娠中の話をしました。引き続き、出産の時の経験談にお付き合いください。

いよいよ実際の出産ですが、当日あたった産科医はなぜか非常に不機嫌で、私を支えてくれるどころか冷たい態度。なんと事前に伝えていた私の希望のすべてを叶えることができませんでした。とても嫌な経験でした。残念なことですが、私の友人の中にも水中出産を希望していたにもかかわらず当直の助産師(彼女は助産師だけのグループに依頼していました)が大変だからと水をためてくれなかったなど、特に合理的な理由がなくても、運が悪く妊婦の希望を尊重しない人にあたってしまったケースもあります。当直のあたりハズレの大きさを考えると、やはり妊娠から出産まで一人の人にお願いした方がよいように感じました。「大丈夫。希望通りにできる。」と気楽に約束する割には「できなかったから仕方ない。」となる可能性が日本より格段に高い気がします。日本では「できないかもしれない」という可能性も説明されておいたうえで、それでも希望を叶えるために力を尽くしてくれるケースが多いと思うのですが、対照的でした。そして私の場合は、不運にも、事前に嫌だと伝えていた事柄も全て起こりました。

楽しみにしていた胎盤は、抱いていた神聖なイメージとは裏腹に、産後すぐビニール袋に突っ込まれたうえで茶色い紙袋に入れてホチキスで留められ、新生児カートに放り込まれました。あまりの雑な扱いに目が点。しかもあろうことか、夫がその日に持ち帰って、傷まないようにと気をつかって冷凍保存してしまい、退院した頃にはカチカチに固まっている始末。妊娠中、私は赤ちゃんを育んでくれた胎盤をじっくり見てみたいという気持ちもあったので、医師にぞんざいに扱われ、投げられた上に固まった胎盤には、心底がっかりしました。なお、胎盤を受け取った際には取扱いについて説明はなかったのでこの固まった胎盤は長いことわが家の冷凍庫に鎮座していましたが、衛生上の理由から自宅の冷蔵庫や冷凍庫での胎盤保存は推奨されていないと後に知りました。

この病院で出産した後は、病院の中にある産後の滞在施設に2泊するか、産後12時間以内に車で40分離れた温かいケアで評判の施設に移動し、そこで3泊するかという選択肢があります。どちらにしても医師はいないのですが、産後すぐ高速道路に乗って40分遠方に行く気もせず、また産後何かあった場合、病院に滞在さえしていれば何とかなるのではという気持ちから病院滞在にしました。産後の体調はあまりよくなかったため、幸い個室に入ることができたのですが、まったく身体を休めることができない2日間でした。「何かあったら言ってね」とは言われるのですが、何か言ってもほとんど対応してもらえず、身体がつらく少し息子を見て欲しいと頼んでも、夜食を楽しんでいる最中だったためか看護師にアジア人だということを理由に拒否されてしまったり、浮腫みがつらいと伝えても「その細さなら浮腫んでいない」と信じてもらえなかったり。滞在中の食事は放り投げるように出されてカトラリー類はバラバラ。部屋は冷房がきいていて真夏にもかかわらず「赤ちゃんは暖かくしておきなさい」と再三言われセーターを着せられており、新生児が快適な環境ではないことにも驚きました。息子の寝ているベッドには「赤ちゃんの死は寝ている間に多発します。安全に寝かせてください。」といった注意が書いてあったことも、確かにそうなのかもしれませんが、せっかく生まれてきたことを祝ってくれる雰囲気を感じることができず冷淡に感じました。息子の血液検査の際も一言も声をかけることなく、無表情のまま無言で足をつかんで血を絞り出していたり。もちろん赤ちゃんは声をかけようが泣き叫ぶのでしょうし何も理解していないのかもしれませんが、全てにおいて温かく丁寧な対応をされていた日本での産後は、その動き1つだけで私の気持ちも身体も元気にしてくれていたのだと思いました。結局出産直後よりも疲れて退院しました。産後は、助産師が家に来てくれてサポートしてくれることになっていて安心していたのですが、私の家に来た助産師の産後サポートは期待していたものとは全く違い、毎回の滞在も10分程度でしかなく、彼女が来るたびになお疲れました。

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その後も書類を見ると、夫のことが「元夫」と記載されていたり、出血量の記載にミスがあったり、不信感を抱くことが多々ありました。どうやらこの病院は、非常に忙しく労働環境も過酷なようで、丁寧なケアを期待できない部分もあるのかもしれません。ニュージーランドでの出産について調べると、英語、日本語に関わらず、主に1人の助産師が主導する出産・産後サポートまで完結した美しい物語ばかりを読むことになりがちです。うまくいったときにはとても良いシステムなのかもしれませんが、そこばかりが強調されてしまっているように思います。産後に家に来てくれる助産師との相性もあるかもしれませんが、日本のように産後の病院滞在中に複数の人にケアされることは、ケア提供者との相性のリスクも減らすように思いました。また相性が合わなければ担当の助産師を変えることができると言いますが、妊産婦がいつどのタイミングで判断し変更を依頼するのか、関係性がうまくいっていない場合や体調の悪い場合にはより難しいと思います。そして実質的な選択肢は日本のように多くありません。出産から2年を経た今では、このような経験も笑ってしまえる部分もありますが、産後はそんな余裕はありませんでした。今は、海外で出産して辛い思いをした人には少しでも寄り添いたいと思いますし、日本で出産する外国人の女性も、少しでも良い経験ができるようにと願っています。

こうしていろいろな思いをしたのですが、産後1年以上経って意を決し胎盤を冷凍庫から取り出し、へその緒は桐箱に保存し、胎盤はレモンの木の下に植えました。レモンの木は、仮に引越しした時でも持ち運べるよう鉢植えにしました。胎盤の上に植える鉢植えの木としてレモンは人気があるようです。妊娠中・出産・産後の様々なことを思い出しながら、息子を育ててくれた胎盤を埋めることができて、とても清々しい気持ちになりました。胎盤を埋める行為は、他の人に聞いてもとても癒される行為のようです。最近は手を汚さずにそのまま袋ごと土に埋められる胎盤パックといった商品も手に入るようです。また、クライストチャーチでは、産後の女性が胎盤を埋めることができる場所を提供しています。オークランドではそのようなことはしていないので、家族旅行を兼ねてクライストチャーチに胎盤を埋めに行こうかと半ば本気で思ったほどです。また、アーダーン首相が胎盤を産める場所についてもニュースになったことがありました。レモンが収穫できるまで、あと数年。息子共々、レモンの木も元気に育ってくれたらいいなと思います。

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さて、産後にはもう一つの試練がありました。それは母乳プレッシャーです。次回は、想像を絶する母乳プレッシャーについて書きたいと思います。


(参考)
筆者プロフィール
村田 佳奈子

日本で7年間企業に勤める。退社後、2012年4月よりニュージーランド(オークランド)在住。
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