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【ニュージーランド子育て・教育便り】 第8回 ニュージーランドでの妊娠・出産 (2)

村田 佳奈子

2019年2月15日掲載

前回はニュージーランドの妊娠・出産事情について、助産師主導と産科医主導の出産の違いを説明しました。今回は妊娠中のことについて書きたいと思います。

妊婦健診

私の選んだクリニックは、産科医が9名ほどに助産師が2名。健診は、毎回最初に助産師が尿検査や体重測定結果を記録し、その後産科医の診察を受けるという流れでした。診てくれる産科医はほぼ毎回変わりましたが、これは出産までに産科医全員に会っておいて、出産時に誰が当直で立ち会っても安心できるようにするためだそうです。妊婦健診での内容は、産科医間でシェアするということでした。しかし、産科医間で情報をシェアするというのは、まったくもって日本とはレベルの違う話であったことを後に知ります。実際は、再三話している私の第一子を出産した時のトラブルも、不安も希望も、カルテには何一つ記録されておらず、共有もされていませんでした。せっかく自費医療を選択するなら、複数の産科医による健診ではなく一人の産科医がずっと診てくれるようなクリニックを選ぶべきでした。そのような選択肢がとれなくても、全員の産科医が全く情報を共有していないという可能性を想定し、しっかり全員に伝えるべきことを伝えておいた方がよかったとも思います。

妊婦健診の内容は、助産師でなく産科医主導の出産を選んだということもあり、日本の大学病院でのものと一見してそれほどの差を感じませんでした。健診時間は10分~15分ほどで日本より多少長いでしょうか。健診は、順調であれば28週までは月に1回、36週までは2週間に1回、その後は週に1回です。超音波検査は、ニュージーランドでは通常2回です。健診とは別の超音波検査の技師が行います。目的もはっきりしていて、1回目は11~14週目に血液検査とあわせた先天異常の検査、2回目は18~20週目に胎盤の状態確認、胎児の発達確認です。1回目の検査はそのうちニュージーランド国内に検査機関ができ、より正確に診断ができる新型出生前診断に替わるのではないかと産科医が言っていました。このように明確に診断を目的にしているのは、異常がなければ助産師のみのケアでよいのですが、必要な場合は医療機関(産科医、小児科医など)へつなぐということを想定してのことと思います。(ただし超音波検査を一切拒否することもできます。)私の場合、これに加えて身体が小さいということで、胎児の成長チェックのための3回目の検査もありました。超音波検査は1回20-30分くらいかけてくまなく検査します。そのため寝ているだけなのですが、すごく疲れました。またお腹の中の息子がいつも手で顔を隠していたので、あまり顔のイメージも湧きませんでした。医療的には、問題がなければそれ以外の週数での超音波検査は特に意味がないと産科医は断言していました。とはいえ、日本のように健診のたびに超音波検査を数分で行い、赤ちゃんの顔や育っていく様子を見せてもらえることは、妊娠中の精神的な安定に大きく寄与していたような気がします。同じ超音波検査といっても、日本とニュージーランドでは使い方も考え方も全く違う検査のように思えました。

バースプランについては、痛みを和らげる方法の選択、立ち会う人の選択、産後の胎盤、臍帯血保存についてなどの希望を出すことができました。痛みを和らげる方法の選択肢はHydrotherapy(入浴)、Tens(電気刺激)、Gas(笑気ガス)、 Pethidine(ペチジン:鎮痛剤)、Epidural(硬膜外麻酔)から選ぶことができました。立ち会う人は誰でもよいそうで、パートナーの他にドゥーラ、親友、親、兄弟、子どもなどを選ぶ人もいるようです。胎盤についての希望というのは、出産後に胎盤を持ち帰るかどうかを選ぶことができます。ニュージーランドの先住民のマオリは胎盤を特別に神聖な物とみなしているそうで、部族の土地に埋めることが土地(地球)、先祖、部族と新しい子どもをつなぐことを象徴していたようです。現在は、特別な土地に限らず庭に埋めたり、木の下に埋めたりする人もいます。また、胎盤をカプセル加工して自身の産後の回復などのためのサプリメントにするというサービスまでありました。ただし産科医から、ビジネスとしては面白いが栄養学的には全く無意味で、研究の裏付けもなく、飢餓状態でもなければ食べる意味はないと一蹴されました。私は日本流にへその緒を保存したかったのと、娘を出産した時には胎盤を見ることもなかったので興味もあり持ち帰ることを希望しました。胎盤を持ち帰ることは日本ではない経験なので、神聖な話とあいまって少し楽しみにしていました。

妊娠中の苦労

日本での妊娠中になかった苦労としては、まず食事制限の多さがありました。特に外食については制限が厳しく、食中毒や感染症を防ぐ観点から、生野菜、生の果物、生チーズ、寿司(日本でいう海苔巻)、クリームがのったケーキ等々とにかく食事制限が多く、一体何を食べられるのだろうかと思ったほどです。妊娠期間でもそれほど神経質にならずに外食できた日本を恋しく思いました。妊娠中の食事制限に疲れている人は多いようで、妊娠中の友人から「ホームメイドの寿司が食べたい」と頼まれて作ったことも何度もあります。新鮮な素材を使用し、材料をよく洗う、すぐに食べる、などの但し書きはあるものの、上記の食材についても、ホームメイドならば食べてもOKとされているものもあります。妊婦の食事制限の多さについては、やや大げさと思っている人から、研究が進んできたのだから食事制限が多くなっていくのは当然と思っている人まで様々なようです。

また、妊娠中は感染症の観点からあまり猫の糞に触れない方がよいと言われているのですが、妊娠とほぼ同時期から近所の猫がわが家の庭に遊びに来ては毎日糞をするようになりました。ニュージーランドは、およそ半数の世帯が猫を飼うというほど猫好きが多いのです。夫が処理してくれていましたが、なぜ、よりによって・・・と思いました。

体型で困ることもありました。日本人の体型では、ニュージーランドでは妊娠していると認識されることが少なく、体調が悪くてもあまり理解されないことばかりでした。妊婦マークがあればいいのに・・・と何度も思いました。また、かなり多くの人に「あなたは身体が小さいから妊娠が楽でいいわね。」といった趣旨のことを言われました。妊娠中の体調の悪い時に何度も繰り返しこのようなことを言われると、嫌な気持ちになることもありました。ただ、理由を聞くと悪気はないようで、「身体の大きい人が更に大きくなるのはとても大変なこと。あなたはただ普通になるだけだから楽でしょう」と言うのです。私の考えでは、赤ちゃんの大きさはさほど変わらないのだから、身体が大きければ楽だろうと思っていたのですが、お互いにとんでもない誤解だと話して分かりました。身体が大きくても、身体が小さくても、それだけを理由に妊娠が楽になることはないのです。こうして自分の体型と違う人の大変さは想像しにくいものなのだなという勉強になりました。

次回は、出産と産後のケアについて書きたいと思っています。


(参考)
筆者プロフィール
村田 佳奈子

日本で7年間企業に勤める。退社後、2012年4月よりニュージーランド(オークランド)在住。
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