TOP > 論文・レポート > 子育て応援団 > 【スウェーデン子育て記】 第29回 読書のススメ

このエントリーをはてなブックマークに追加

論文・レポート

【スウェーデン子育て記】 第29回 読書のススメ

下鳥 美鈴

2018年8月31日掲載

2018年の夏は、スウェーデンでも例年にないほどの暑い日が続きました。雨が全く降らないので、森林地域が乾燥し、火事があちこちで発生しました。スウェーデンの人は夏になると野外でキャンプをしたり、バーベキューをすることが多いのですが、今年は火事のリスクを減らすために野外で火を扱うことが全面的に禁止されました。暑さをしのぐために、子どもたちと近所の湖で水遊びをしましたが、そこで見られる森の様子はいつもより乾燥して茶色く見える気がしました。

report_09_310_01.jpg

夏休みの過ごしかた

毎年、子どもたちが夏休みにはいると、日本との違いを大きく感じることの一つに、夏休み中の時間の使いかたがあります。日本の小学生は学校が休みであっても、勉強の習慣を守るためにたくさんの宿題がでたり、学校のプールに通ったりしています。日本では夏休み期間でも何らかのかたちで、子どもたちは学校との関わりをもって生活していると思います。しかし、スウェーデンの小学生にとって夏休みとは、学校から離れてしっかり休むための期間であって、勉強に費やす時間は全くないという考え方のようです。その代わりに、旅行をしたり運動をしたり、様々なアクティビティーに参加したりすることで、学校の勉強以外の経験を積む、というのがスウェーデンでの健康的な夏休みの過ごしかたのようです。

とはいえ、2ヶ月間の長い夏休みを有意義に過ごす、という点においてはスウェーデンの小学生も日本の小学生も変わりません。夏休みの使い方として勧められる活動の一つに、読書があります。子どもたちに読書の大切さを伝えて、いかに楽しく本を読ませるか、ということに関してはどの国でも共通の課題のようですね。日本では、各学年のレベルに合わせた課題図書が決められて、感想文を書くことが宿題になったりします。スウェーデンでもそういった推薦図書のようなものがあるのかなと思い、私は子どもたちに聞いてみました。しかし、とくにそういった本は先生から紹介されていないそうです。有名なスウェーデンの児童文学作家には、セルマ・ラーゲレーフやアストリッド・リンドグレンがいます。「ニルスのふしぎな旅」や「長くつ下のピッピ」といった彼女らの作品は、日本語にも訳されています。小学校では、これらの有名作家の本を推薦されたりするのかとも思ったのですが、このような名作や古典文学を特別に読ませられるということもないようです。

読書習慣をつけるには

2011年からスウェーデンでは、読書大使(Läsambassadör)という役職が政府の文化評議会から任命されて、子どもたちに読書を勧める活動をしています (http://www.lasambassadoren.se)。この読書大使は、すでにアメリカ、イギリス、アイルランド、そしてオーストラリアには存在していたそうで、スウェーデンもこれらの国に倣って導入しているとのこと。2017年9月からは、ヨハン・アンデルブラードさんが読書大使に任命されています。彼はスウェーデンでは有名な子ども向けテレビ番組の司会を長年務めていた人です。スウェーデン各地でいろいろなイベントに参加して、読書の楽しさを伝える役割を果たしています。

前任の読書大使であるアンマリー・コーリングさんは、教師であり作家でもあります。彼女がどのように子どもたちに読書の楽しさを伝えているのか、という記事を読んでみました。まず気づかないといけないことは、子どもたちは大人の言動をよく見ているということ、とのこと。大人たち自身が読書を楽しむ習慣を身につけていなければ、子どもはその楽しさを知ることが難しいということです。そうした習慣をつけた上で、日常生活の中で読書のことを話題にすることも大事なことだと、コーリングさんは書いています。「今日はどんな本を読んだの?」といった会話を日常会話に入れることで、もっと読書が身近になる、といった指摘は、確かにそうだなあ、と思いました。そして、一番大事なことは、子どもたちの好きな本を好きなように読ませる、といったことだそうです。大人が良いと思って勧める本よりも、子どもたちが自分で選んだ本の方が楽しく読みきれるのは当然でしょう。読書の習慣を定着させるには、好きな本を毎日、手にとって開いてみる時間を設けることが大切とのことです。

私自身、かなり読書をするほうだと思いますが、読んだ本の内容や面白さを子どもたちに楽しく伝える作業は、あまりしてこなかったかもしれません。自分の楽しみのためだけにする読書ではなく、これからはその楽しさを子どもたちと一緒に分かち合うようにしていかなくては、と改めて気づかされました。長い夏休みの貴重な時間をどう使うか、ということについては大人になった今でも大きな課題であるようです。

筆者プロフィール

下鳥 美鈴

東海大学文学部北欧文学科卒業。ストックホルム大学で修士課程を終え、ウメオ大学(スウェーデン)で博士課程を修了。言語学博士。
このエントリーをはてなブックマークに追加
サイトマップはこちら
サイトの全体像が分かります。

Twitter  Facebook

CRNアジア子ども学交流プログラム

名誉所長ブログ

論文・レポートカテゴリ

イベント

ご意見・ご質問

メルマガ登録

世界の幼児教育レポート

CRN刊行物