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【移民の街トロントの子育て記 from カナダ】 第8回 赤ちゃんと過ごすトロント ~子どもプログラム~

森中 野枝

2016年12月16日掲載

8月に妊婦でトロントにやってきた私。家具をそろえたり、家を片づけたり、子どもの学校のサポートをしていたら、あっという間に2月になり第3子を出産。出産前、英語を勉強するために語学学校や教会に通ってはいたものの、いつまでたっても「お客さん」という感じで、まだトロントに自分の居場所を見つけられずにいました。春になったら息子とデビューしようと、息子の首が座って、暖かくなるのを今か今かと待ち焦がれていました。トロントでは、未就園児を連れて気軽に遊びに行ける場所が充実していて、公的施設が提供しているプログラムは無料で、しかもためになるものが数多くありました。私が実際に参加したプログラムを紹介していきます。

充実した子どもプログラム

母親が子どもを連れて行ける場所としては以下のオプションがあります。

  • 図書館
  • 幼児から小学校高学年向けに様々なイベントを開催しています。ベビー・タイムやトドラー・タイムなどの親子で楽しめる時間があり、近所のお友達と一緒に参加していました。
  • Ontario Early Years Centre(OEYC)
  • 日本の児童館のような施設。詳細は後述します。
  • トロント・ファン(Toronto Fun)のプログラム
  • 前回サマーキャンプの申し込みでも登場した、トロント市が提供するプログラム。大人・子ども向けの様々な教室が選べます。こちらは有料。格安です。私は、6か月の息子を連れてフィットネス・プログラムのズンバ・クラスに参加しました。ズンバとは、ちょうどこのころ全世界的に流行っていた、ラテン系の音楽を取り入れたダンス・エクササイズのこと。参加者は、若い主婦からおばあちゃんまで人種も年齢もさまざま。インストラクターはグラマラスな南米系のおばちゃん。乗りの良い曲を大音量でかけ、クラブさながらとにかく、楽しく踊りまくります。赤ちゃん連れは、体育館の後ろを陣取ってシートを敷いて子どもを座らせ、飽きないようにおもちゃを並べ、横目でチラチラ様子を見ながら、遠慮がちに参加します。泣いたり、ハイハイで脱走しそうになったら、抱っこ紐で抱っこして、赤ちゃんと一緒に参加。他にも赤ちゃん連れで行けるベビーヨガクラスや、当時カナダで流行っていたストローラー・ウォーキング(ベビーカーを押して歩きながら行うフィットネス・プログラム)のクラスなどもありました。

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Baby Yoga クラスのインストラクターと


トロントの児童館はコーヒー・紅茶付き

赤ちゃんがいると一番お世話になるOEYC(児童館)。未就園児対象のプログラムが充実しており、予約なしで自由に参加できるプログラムと申し込みが必要なプログラムに分かれます。自由参加のプログラムは、例えば水曜日の10:00-11:30のように決まった時間帯に児童館のプレイルームが開放され、児童館の遊具で遊んだり、絵本を読んだりできます。最後に10分くらいサークルタイムがあり、児童館の先生の指導で体を動かし、歌を歌います。プレイルームには、キッチンとダイニングテーブルが併設されていて、お湯を沸かしたり、電子レンジで離乳食を温めて、子どもに食べさせたりできます。それだけではなく、なんと保護者のために、コーヒー・紅茶、フルーツなどが準備されていて、セルフサービスでいただくことができます。もちろん、無料。子どもを遊ばせながらほかのお母さんたちと交流するのに最適な環境が整えられています。雪が降って外出しにくい冬は、こういう場所が本当にありがたかったです。

申し込みが必要なプログラムは、センターから事前にプログラムのお知らせがあり、1か月前に電話か直接オフィスに行って申し込みます。すべて参加費無料なだけあって、競争率が高く、当日受付開始と同時に申し込まなければなりません。プログラムは0-6か月、6-12か月など子供の月齢別に分かれていて、月齢に相応しい活動をします。

マイベビー&ミー(My Baby and Me)プログラム

この児童館で開催されているプログラムの中で、私が参加したのは「マイベビー&ミー」という6-12か月の子どもとその親向けプログラム。週1回全10回のプログラムで、常時15~6人の参加者がいました。地域柄もあって、参加者の半分くらいは中国系のお母さん。中国系と言っても、カナダ生まれか幼少期にカナダに来た人たちばかりで、中国語が話せない人もいます。残りの半分は、ヨーロッパ系カナディアンのお母さんでした。プログラムがスタートしたのは6月。夏休みを挟んで9月まで4か月間定期的に同じメンバーと顔を合わせると、相手のバックグラウンドや性格がよくわかり、親しくなることができました。

プログラムが行われる会場にはソフトマットの上にブランケットが敷いてあり、赤ちゃんが過ごしやすいようになっています。母親は、大きな円を作って真ん中を向いて座り、子どもを自分の前に座らせます。まだ寝返りもできない子から、ハイハイしてあちこち行ってしまう子まで様々。しゃべりながら、おむつ替えも授乳も可で、終始和やかな雰囲気です。OEYCのコーディネイターが毎回司会進行を担当し、初日は自己紹介から始まりました。出産した病院、出産の様子、生まれてからの様子などを一人ずつ話し、それに対しみんなが自由に質問したり、コメントをしたりします。プログラムは毎回、子どもと歌う歌から始まり、ベビーマッサージや体操などで子どもを満足させて、ママの勉強時間です。毎回テーマが決められていて、「離乳食を始める時期」とか「子どもが動けるようになる前にやっておくこと」など、みんなが関心をもつような話題を取り上げ、話し合ったり、学んだりします。

スリーピング・トレーニング

よく覚えているのは、毎回周りのお母さんとおしゃべりをしていると必ず話題に上る「スリーピング・トレーニング」(寝かしつけの訓練)。寝かしつけと言えば、日本では「添い寝」が一般的ですが、実は添い寝は欧米ではNG。一緒に寝るとお互いによく寝られないというのが一番の理由のようです。新生児でもベビーベッドに寝かせて、夜中の授乳はお母さんが起き上がってソファーでするように指導されます。私も出産後、ドクターや保健師さんに「添い寝はしていませんか?」と何度も確認され、「してません」とすまして答えていました。

添い寝に代わる、欧米での理想の寝かしつけは、映画や絵本でよく目にするワンシーンそのもの。子どもが自分でベッドに入り、お母さんとハグをして「おやすみなさい」というと、お母さんは部屋を出ていき、子どもは真っ暗な部屋で一人で寝る・・・。絵本で見るたびに、「いいな~、赤ちゃんに一人部屋なんて。そんなの日本ではありえないし」と思っていました。しかし、あのワンシーンというのは、ただ住宅という物理的な問題だけではなく、生後間もなく始まる欧米流スパルタ「しつけ」のたまもの。欧米文化で子育てをするお母さんたちは、赤ちゃんが小さいうちからそのノウハウを勉強して、計画的にパートナーと協力して子どもに「スリーピング・トレーニング」という訓練をするのです。

スリーピング・トレーニングに関しては様々な書籍が出ており、やり方が微妙に異なりますが、基本は以下のような方法です。

まず、毎日決まった時間帯に、決まった手順を踏み、赤ちゃんに寝るためのルーティーンを覚えさせます。ミルクを飲んで、おむつを替え、絵本を一緒に読み、「おやすみなさい」とハグして部屋を暗くし、ベビーベッドに寝かせ、部屋から立ち去ります。最初はもちろん、普通赤ちゃんは泣きます。泣いてもすぐには見に行かず、5分泣かせてから様子を見に行き、背中をとんとんとさすって、「もう寝る時間だよ、寝ようね」と声をかけ、また立ち去ります。その間隔を10分、20分とどんどん長くしていくと、そのうち赤ちゃんはあきらめて自分で寝る...はず、というのがトレーニングのあらましです。

グループに、6か月の女の子をもつヨーロッパ系のジェニファーというお母さんがいました。最初に会ったときは、トレーニングを始めるための準備をしているところ。毎回会うたびに進捗状況をみんなに報告してくれます。ちゃんと本を読んで勉強をして、夫婦で団結して挑むもなかなかうまくいかず、仕事復帰を目の前にした彼女はだんだん焦り始めます。周りのお母さんたちもほとんどがスリーピング・トレーニングをしているか、しようと思っている人たちばかり。私もだんだん感化され、ハウツー本をお友達に借りて読み、やってみました。

トレーニングする子どもが第1子であるジェニファーとは違い、第3子である息子を訓練する私は、まずルーティーンを作るところから苦労しました。まずは次の日に早く起きて学校に行かなければならないお姉ちゃん二人を寝かせるのが先で、息子はいつも後回し。息子のルーティーンなんてそもそもないし、そんな儀式みたいなことはやっていられない。最後の「もう寝る時間だよ、寝ようね」と言って、ハグして、電気を消すというところだけ採用。そして、ベビーベッドに寝かせて立ち去ると案の定大泣き。5分待ってからと思っていたら、一緒の部屋に寝ているお姉ちゃんたちから、うるさくて寝られないとクレーム。しょうがないので、お姉ちゃんたちに耳栓をさせて続行。トレーニングのスタートが遅かったため、すでにつかまり立ちができてしまい、ベビーベッドに寝かせても、寝かせても、ゾンビのように立ち上がってくる息子。それでも、1時間ぐらい格闘していると、だんだん疲れてきて、立ち上がってくる間隔も開いてきて、最終的には泣きつかれて寝てしまいました。2日目からはだんだん慣れてくるかと思いきや、さらに手ごわくなり、1時間半かかり、3日目、4日目と親と子の根競べ。ジェニファーが毎週嘆いていた気持ちが痛いほどわかりました。

1か月くらいトレーニングを続けたでしょうか。理想の寝かしつけとまでは行きませんでしたが、最終的には息子をベッドに入れて、ちょっとママ歯磨きしてくるね、と声をかけて離れ、20~30分後に戻ったら寝ているというレベルまでもっていくことができました。トレーニングの成果なのか、ただ単に寝つきがよい子なのか、ものわかりの良い子なのかはよくわかりません。ちなみに、トレーニングに苦労していたジェニファー。最後は悩んで、スリーピング・コンサルタントという、寝かしつけ指導のプロに頼んでトレーニングをし、成功したようです。

まとめ

ベビー・ヨガ、ズンバ、「マイベイビー&ミー」などのクラスは同時進行で参加していて、私はほぼ毎日どこかのクラスに顔を出していました。参加者も重なることが多く、自然と顔なじみになり、クラスの後にお茶をしたり、散歩に出かけたり、息子も私もおかげで親しい友達がたくさんできました。

未就園児クラスに参加する時に一つだけ心がけていたことがあります。それは、「息子と二人だけで参加すること」。日本人のお友達を誘っていくと、楽しいし、気楽ですが、あえてそれをせず、その場で現地のお友達を作って英語を話す機会を増やすように努力しました。自分たちだけで参加しても、どのクラスも新しい人を受け入れる雰囲気があり、不思議とすんなりなじめるのです。みんな同年代の赤ちゃんがいるお母さんたちですから、共通の話題があったからかもしれません。しかも、私のブロークンな英語にも嫌な顔一つせず、一生懸命話を聞いてくれる人ばかり。「寛容」で「多様な」カナダならではだと感激しました。英語に関しては、かなりサバイバルでした。一対一ならなんとか会話が成立する私の英語力で、ネイティブの学習グループにいきなりポンと放り込まれるわけですから、必死でついていくしかありません。コーディネイターの言葉がわからないときは、こっそりメモを取って家に帰って調べたり、クラスでもらう資料を丹念に読んで「育児用語」を覚えたり、お友達がよく使う言葉を真似してみたり、私にとっては友達みんなが先生、教科書のない英会話学校そのもの。学校や会社で活躍する家族から置いてけぼりを食ったような気分だったのが、未就園児クラスに参加するようになってから充実した日々を送ることができました。

筆者プロフィール
森中 野枝

都立高校、大学などで中国語の非常勤講師を務めるかたわら、中国語教材の作成にかかわる。
学生時代中国・北京に2度留学したあと、夫の仕事の都合で2004-2008 北京に滞在。2011-2013カナダ・トロント滞在。現在はアラブ首長国連邦ドバイに住んでいる。
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