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【移民の街トロントの子育て記 from カナダ】 第7回 サマーキャンプ

長い夏休みが終わり、やっと新学期が始まりました。どこの国に住んでいても、毎年頭を悩ませるのは、子どもの夏休みの過ごし方です。子どもの年齢と興味にあったイベントを探して連れて行く、あるいは送迎の手配をする。一仕事ですが、引っ越しの多い私たちにとって、その地域にかかわるよい機会。毎年コーディネイターになったつもりで3人それぞれにイベントを考えます。子どもが「楽しかった~!」と笑顔で帰って来てくれたら、私も陰でガッツポーズ。時間とお金を使った甲斐があるというものです。

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2012夏 家族旅行でカナディアン・ロッキーへ
トロントの夏

私たちがトロントで過ごした夏は、2回。しかも、1年目の夏はカナダに入国したばかり。実質夏休みは1度しか経験していないことになります。たった一回の経験で、トロントの夏を語るのもおこがましいですが、たった一度だったからこそ印象は強烈で、サマーキャンプに参加した長女は今でも「カナダのキャンプ楽しかった」とぼそっと言うことがあります。

トロントは夏が一番過ごしやすい季節で、みんな夏を心待ちにしています。6月に入るとにわかに暑くなり、9月にはもう気温が下がり始めます。夏は短いですが、子どもの夏休みは恐ろしく長いのがカナダ。6月末には学校は終わり、7月、8月のまる2か月がお休みになります。しかも、学校からの宿題は一切なし。子どもが暇を持て余さないようにと、夏休み中は「サマーキャンプ」に行くのが一般的です。

日本語で「キャンプ」というと、テントを張って、飯盒はんごう炊爨すいさんというイメージですが、カナダでは「サマーキャンプ」=「夏休みに開かれるアクティビティの教室」のことで、スポーツ、アート、演劇、音楽、語学、サイエンス、アウトドアなどいろんなジャンルがあり、動物園や美術館が開催するキャンプもあります。スポーツだけをとっても、水泳、サッカー、テニス、バスケ、空手、乗馬、バレエなど種類も様々。「デイキャンプ(日帰り)」と「オーバーナイトキャンプ(宿泊)」があり、オーバーナイトキャンプは1泊2日から2週間と年齢に合わせて選べます。

市が主催するキャンプは週150ドル(約1.6万円・2016年10月時点)ぐらいからと比較的リーズナブル。民間のキャンプは、300ドル(約3.1万円・同)/週、泊まりがけだと800~1000ドル(約8.3万~10.4万円・同)/週。子どもが複数いると、軽く10~20万円は飛んでいきます。できるだけ費用を抑えるため、市が主催するキャンプに申し込みが集中します。

サマーキャンプ攻略法

トロント市が主催するサマーキャンプの申し込みは、3月。サマーキャンプの申し込みをするためには、家族の夏の予定を申し込み前に決定しておく必要があります。クリスマスが終わり、お正月が明けると、もう夏の旅行の話題が飛び交います。まだまだ寒いですが、心はもう夏のバケーション。みんななんとなくウキウキし始めます。2月になってやることは、サマーキャンプのスケジュールが掲載されるThe Toronto Fun Guideをゲットすること。配布当日は、奪い合いで中々手に入れられません。その冊子をじっくり読み込み、自分の子どものスケジュールに合わせてキャンプをピックアップ。冊子を持ち寄ってお茶をしながらママ友と情報交換。一人で行くのが不安なタイプの子どもの場合は、お友達とスケジュールを合わせます。

そして、いよいよ申し込み。申し込み当日にはめぼしいキャンプはすぐ満員になってしまうので、よく戦略を練る必要があります。申し込みは、インターネット、電話、直接オフィスに行くと3通りの方法があり、朝7:00のスタートです。子どもをバス停に送りに行く時間と重なってしまうことも考慮にいれないといけません。私たちは、三人目の出産で手伝いに来てくれていた母に上二人の子どもの送迎を任せ、夫に午前中休みを取ってもらって二人で申し込むことにし、万全の態勢を整えました。

申し込み当日。7:00に受付開始となると、申し込み用ホームページはすぐにビジーの状態。電話回線もつながらない。でもそれは想定範囲内。慌てず、二人がかりで携帯を片手にパソコンに向かって、ひたすらリダイヤル、クリック。黙々と作業を続けること50分。やっとパソコンでログインできて、めでたく希望のサマーキャンプに申し込むことができました。

ここまでして長女に行ってほしかったキャンプは、The Toronto Fun Guideの中でも低学年に人気のアウトドア・デイキャンプ。このキャンプは、Nature Oriented Camp の頭文字をとってNaorca Camp(ナオルカキャンプ)と呼ばれていて、東京ドーム約4個分の広さを持つ保護区内にある教育施設で行われ、大自然の真ん中で、自然に触れるアクティビティをします。他に申し込んだのは、徒歩圏内で通えるスポーツキャンプとアートキャンプ。まだ3歳だった次女は選択肢が少なく、通っているナーサリーのサマーキャンプに申し込みました。

そして迎えた2012年夏。ナオルカキャンプが行われる前に、家族でキャンプサイトを訪問する日が設けられていました。「人気」で「安い」との評判だけで、何がよいのか具体的にはわからないまま勢いで申し込んだキャンプ。いったいどんなところなんだろうと興味津々で出かけました。キャンプ場はトロント中心部から車で1時間足らず。私たちの住まいからわずか20分のところ。うっそうとした森に囲まれたキャンプ場は、りすなどの小動物が今にも走り出てきそうな自然豊かな場所。トレッキング・コース、キャンプ・ファイヤー場、プール、雨天時に過ごす小屋など充実した施設に案内されました。自然豊かだけれど、安全でインストラクターの目が届く場所であることを確認、いよいよキャンプに挑みます。

このナオルカは2週間の通いのキャンプです。朝9:00~夕方4:00まで、年齢別にグループが分かれています。長女が参加したのはSkyhawks という7-8歳用キャンプでした。

キャンプ初日。指定された時間に集合場所に行きましたが、待てど暮らせどバスは来ない。やっとバスが現れたかと思いきや、遅れた理由の説明など一切なく、子どもたちをかき集めて嵐のように去っていきました。トロントが長い日本人のお話では、キャンプ初日はどこも混乱していて、バスが来ただけましなんだとか。

キャンプ・スタッフのほとんどは、若い現役の大学生でとても盛り上げ上手。朝、キャンプ場に向かうバスの中では、クイーンの「We will rock you!」を大音量で流し、ナオルカキャンプ風にアレンジした替え歌を絶叫し、手拍子やダンスで大盛り上がり。キャンプ場に着くまで、ずっと歌っているそうです。長女も初日に帰ってくるなり、聞き覚えで歌を歌うようになり、毎日練習して、最終日には早口言葉のような歌を完璧に歌えるようになりました。

キャンプの詳細な内容についてのお知らせなどは特になく、子どもが「明日は白いTシャツを持って来いって」と言うので持たせると、忘れたころに白いTシャツがピンクと緑とブルーがかかった色に染められて戻ってくる。Tシャツのにおいと色、娘の話から判断すると、どうもこれは草木染めらしい。今日はこれでもかというくらい蚊にさされてきたから、トレッキングをしたのかもしれないと、毎日名探偵コナンのような気分でした。最終的に振り返ってみると、2週間の日程の中で、スイミングが5日間、クッキングが1日、草木染が1日。1週目の金曜日にはスペシャル・アクティビティがあり、2週目の最終日は、Parents night と称して、家族を招待してキャンプの成果を披露する日がありました。

ペアレンツナイトは、全く堅苦しくなくざっくばらんな雰囲気。まずは、キャンプ・ファイヤーを囲んで、S'more(スモア)を焼いて食べました。S'more とは、カナダ定番のキャンプで食べるおやつ。串に刺したマシュマロを火にかざして焼き色がついたところを、板チョコと一緒にグラハムクッキーに挟み、サンドイッチのようにして食べるキャンプ定番のお菓子。カナディアンはこれに目がないらしく、おいしくて思わず"Some more "(もっとちょうだい)と言ってしまうことから、"S'more"という名前が付いたとそうです。カナダで使っていた娘の英語のテキストに載っていました。私的にはご遠慮したい感じですが、娘はこの世にこんなおいしいものがあったとは!?と感動していました。

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カナダ定番のキャンプで食べるおやつS'more


S'moreと配られたジュースを飲みながら、大自然の中でキャンプリーダーからキャンプの様子を聞き、子ども15人、スタッフ10人くらいのグループに分かれ、それぞれ歌を披露します。歌は、その年に流行ったPOPミュージックをメドレーにしナオルカ風にアレンジしたもの。グループによっては、スタッフがギターで伴奏したり、途中でシュプレヒコールが入ったり、ダンスあり、替え歌ありの自由な出し物。体を揺らしてノリノリで歌う子がいるかと思えば、ノリについていけずにぼーっと突っ立っている子も。歌わない子どもをとくに強制するわけでもなく、スタッフが上手にリードして盛り上げていました。

カナダの大自然に囲まれ、いろんな体験をし、一回りも二回りも大きくなった夏休みでした。

筆者プロフィール
森中 野枝

都立高校、大学などで中国語の非常勤講師を務めるかたわら、中国語教材の作成にかかわる。
学生時代中国・北京に2度留学したあと、夫の仕事の都合で2004-2008 北京に滞在。2011-2013カナダ・トロント滞在。現在はアラブ首長国連邦ドバイに住んでいる。
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