ベルリンでのクリスマスは、家族で集まって静かにお祝いをするため、どちらかといえば日本のお正月のようです。一方、大晦日は多くのイベントが行われ賑やかで、日本のクリスマスに似ています。家族は勿論、友人たちと集まって、スパークリングワインで乾杯、パーティをすることが多いようです。また、年が変わる瞬間に街の至る所で打ち上げられる花火は、迫力満点です。今回はベルリンでの年末年始の様子をご紹介したいと思います。
世界最大の屋外パーティ:ブランデンブルグ門前のパーティ会場
ベルリンのシンボルであるブランデンブルグ門前には毎年大晦日に大きなステージが設置され、多くの有名アーティストがライブを行います。そして、そこからジーゲスゾイレ(戦勝記念塔)までの大通りでは、ベルリン市が運営に携わっているドイツ最大のカウントダウンパーティが催されます。これらは全て、市民や観光客に開放され、新年を祝うため毎年50万人以上の人が集まるので「世界最大の屋外パーティ」と呼ばれています。カウントダウンの後、年が変わる瞬間にはパーティ会場だけで2,000発もの巨大花火が打ち上げられ、新年を華やかに迎えます。この様子は、毎年国営放送で放映される年末の恒例行事です。
私たちも大晦日の午後に足を運んでみましたが、ブランデンブルグ門前のステージでは、コンサートのリハーサルが行われていて、既に多くの人で賑わっていました。普段からベルリンではドイツ語以外の様々な言葉を耳にしますが、大晦日のベルリンではそれ以上に多言語が飛び交い、世界中から人々が集まっていることがわかりました。

"SILVESTER IN BERLIN(ベルリンの大晦日)"
ここからジーゲスゾイレ(戦勝記念塔)までの大通りは2キロにわたって歩行者天国になっており、その両脇にずらっと屋台が出て、美味しそうな匂いが漂ってきます。気温は氷点下ですが、おやつに焼きたてのワッフルとグリューワイン(香辛料を入れて温めたワイン)を頂き、温まることができました。
さらに歩いていくと、観覧車があり、人々は長蛇の列をなしています。ドイツのお祭りでよく見かける観覧車の多くは、移動式でその場で組み立てて作るもので、15分程の間に何周も回ります。同じ位の時間で一周ゆっくり回る日本の観覧車と比べると、かなりスピードが速いと思います。さらに一つ一つのゴンドラはガラス張りではなく、むき出しですので、スリル感があり、日本の観覧車のように景色をのんびり見ることは難しいかもしれません。この日は、あまりにも人が多かったので、観覧車はパスせざるを得ませんでした。

移動式観覧車
花火
ベルリンの大晦日に欠かせないのは花火です。日本では、花火は夏の風物詩ですが、当地では大晦日、特に年が変わる瞬間に街全体が大花火大会の会場と化します。集合住宅の8階にある我が家は見晴らしが良いので、年越しの時刻には花火が360度見えて壮観です。隅田川花火大会級の大きな花火がいくつも一斉に打ち上げられている感じといえば、イメージしやすいでしょうか。
さらに驚くのが、これらを打ち上げているのは、ほとんど一般市民ということです。道端やマンションの前など、そこかしこで打ち上げるので、最初に自宅で爆音を聞いた時は、近所で大爆撃が起こっているのかと思い、さらに、窓のすぐ外で「たまや」級の大きさの花火が上がっているのを見た時には、腰が抜けるかと思いました。
元々は悪運や邪気を払うという意味で年越しに花火を上げているそうですが、とにかく数がすごいので、これでは悪運どころか、幸運も驚いて逃げてしまうのでは?と思うほどやかましいことも!ドイツで初めて新年を迎えた時、寝静まっていた息子は、そのあまりの大きな音に驚いて、起きてしまいました。
年が変わる数時間前から花火を打ち上げ始める人も多いので、カウントダウンの頃には街中は煙でモウモウとしています。ですから、大晦日の夜は、花火の火花が引火しないようベランダには何も置かず、また部屋に煙が入り込まないように、家中の全ての窓を閉めることが市から推奨されています。
ここまで大規模に花火が上がるのには理由があります。日本では一年中花火が売られていますが、ドイツでは子どもが手に持って楽しむ花火以外は、年間を通して、販売も使用も禁止されているのです。大晦日によく上げられるロケット花火や打ち上げ花火は、毎年、29日から31日までの3日間だけの期間限定で、18歳以上の人々に対してのみ販売が許されます。これらの花火の使用は、大晦日の午後6時から元旦の朝7時までと決められており、それ以外の時間帯に打ち上げた場合は、最高5千ユーロ(約65万円)の罰金が科せられるそうです。ですから、人々の花火に対する情熱はただならず、年末の3日間だけで売り上げはなんと1億ユーロ(約130億円)にも達するそうです*1。

大きな花火が打ち上げられる前の早い時間帯に、手持ち花火を楽しんだ息子
このようにドイツ最大の大晦日花火&パーティが行われるベルリンでは、その残骸も大変なもの。一夜明けると、街は静まりかえりますが、その様子はまさに「祭りの後」状態となっています。1月2日からベルリン清掃局がフル回転でこれらの処理にあたりますが、それでも追い付かず、年明けの街中はしばらく火薬と花火の空き箱などであふれています。

マシンガンの弾薬ベルトか!?と思いきや、連続打ち上げ花火の残骸
子連れファミリーの中には、けが人も発生するこのような喧噪を避けて、年末年始はベルリンを離れて過ごす人も多いそうです。
ちなみに、年末は大晦日の午後から店が閉まり、年始は元旦のみ祝日、週末に当たらない限り2日から仕事は始まり、お店も通常営業です。学校の授業の開始日は州によって異なりますが、ベルリンでは大体1月4日か5日に始まる年が多いようです。
ブライ・ギーセン(鉛占い)
日本でも年始には新しい年を占い、楽しむことがあると思いますが、ドイツでも同様に、この時期には新年の行方を占う遊びが人気です。これはブライ・ギーセン(直訳「鉛を注ぐ」)というもので、溶かした鉛を水に落として、水中で固まったその鉛の形によって、新年の運勢を占うというものです。
年末になると、王冠などの形をした小さな可愛い鉛とスプーンと占いの結果の表がセットになって、スーパーなどで売られています。我が家でも年末年始に友人を招き、このブライ・ギーセンで新年を占ってみました。

ブライ・ギーセンのセット

このように、スプーンに鉛を一つ置いて、炎の上で溶かします

鉛が溶けたら、水の中にたらします

友人の結果:鳥?
水の中で固まった鉛の形を、セットのパッケージについている表に照らし合わせると新年の運がわかる、というものです。表には形と運勢が書いてあり、例えば「鷲→間もなく結婚するでしょう」「車→長生きするでしょう」「さいころ→宝くじに当たるでしょう」「鶴→家を建てると吉」など、心躍るような内容もあります。その一方で、「鹿の頭→愛情運は悪いでしょう」「スプーン→悪い評判がたつでしょう」など、あまり新年には聞きたくないような項目もあり、かなり場が盛り上がります。
ちなみに、友人は「鳥→予期せぬ吉」、夫は「騎手→幸せな将来」が出て、大喜びしていましたが、息子と私の鉛はどの項目にも当てはまらない不可解な形...。というのも、水の中に鉛を垂らす時に焦ってしまったのか、鉛がグラスにくっついてしまったり、お盆の上にこぼしてしまったりと、うまく形を作ることができなかったのです。というわけで、なんとも微妙な心境で新年を迎えることとなってしまったのですが、それでもこのブライ・ギーセン自体は子どもからお年寄りまで誰でも楽しめるもので、年末年始には最適な遊びだと思いました。
- *1 Spiegel Online International 2009年12月29日版
http://www.spiegel.de/international/germany/bang-boom-germans-blame-polish-fireworks-for-new-year-s-injuries-a-669415.html