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【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】 第17回 自然豊かな公園

要旨:

ベルリンには多くの大きな公園があり、ドイツの首都であるにも関わらず、非常にリラックスした雰囲気を醸し出している。市民にとって、公園は憩いの場となっているが、子どもをもつ親としても、エネルギーを持て余している子どもが体を思い切り動かすことのできる場所に事欠かないのは、本当にありがたいことである。今回はそんな大きな“Park(公園)”をいくつかご紹介する。

Keywords:
ドイツ、ベルリン、子どもの遊び場、公園、シュリットディトリッヒ桃子

ベルリンでは長くて暗い冬がようやく終わりを告げ、待ちに待った春がやってきました。3月最終日曜日からはサマータイムが導入され、日の入りは夜7時半過ぎと、かなり日も伸びています。公園には色とりどりの沢山の花が咲き、時折、野ウサギやリスが姿を見せています 。私たちも当地で暮らし始めて早4年半が経ちましたが、移住当初は「ベルリンはなんて緑と公園が多い所だろう!」と感動したものです。我が家から徒歩10分圏内に、"Spielplatz(遊び場)"と呼ばれる遊具付きの小さな公園は4つありますし、"Park(公園)"と呼ばれる大規模な公園もあります。「保育編 第7回 Spielplatz(子どもの遊び場)で垣間見えた日独子育て観の違い」でも記載しましたが、ドイツの首都であるにも関わらず、非常にリラックスしているベルリンの雰囲気は、緑の多さと屋外の広い道や大きな公園といった空間からくるものだと思います。

また、子どもをもつ親として、エネルギーを持て余している彼らが体を思い切り動かすことができる場所に事欠かないのは、本当にありがたいことです。保育園時代は"Spielplatz(子どもの遊び場)"で遊ぶことが多かった息子ですが、7歳になった現在は思い切り体を動かすことのできる"Park(公園)"へ行きたがることが増えてきました。今回はそのような公園のいくつかをご紹介したいと思います。

Volkspark Wuhlheide(ヴールハイデ市民公園)

ベルリン東部に位置するこの公園は約100年前に設立されましたが、園内はとにかく広く、面積はなんと79ヘクタール(東京ドーム約16個分)!この広大な土地に、17,000人収容の野外コンサートステージや、講堂、プールなどの施設が充実しています。あまりに敷地が広いので、園内には移動用の馬車や汽車まで走っています。この汽車は、公園最寄りの電車の駅を始発駅とし、お客さんを乗せて園内にいくつかある駅に止まりながら、最後にはまた電車の駅に戻る「巡回汽車」となっています。ちなみに、公園内には、将来車掌さんになる人のための電車の専門学校があり、汽車はそこに通う学生によって運営されているとのこと。理論と実地訓練を同じ場所で行うところが合理的なドイツらしいですね。

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緑がまぶしい公園入口の一つ
園内移動用の馬車

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園内を巡回する汽車
馬が飼育されているエリア


また、園内には馬やポニーなども飼育されており、子どもたちの人気を集めています。大きな恐竜の遊具やお馴染みのアスレチックなど、遊具も豊富です。また、野外コンサートステージでは、夏に多くのイベントが催され、多くの人がクラッシックからロックまで幅広いジャンルの音楽を楽しんでいます。このように、子どもから大人まで、丸一日緑の中でくつろげる公園として人気が高いようです。

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大きな恐竜の遊具
長い滑り台

             
Bürgerpark Berlin-Pankow(ベルリンパンコウ地区 市民公園)

ベルリン北東部のパンコウ地区にあるこの公園は約100年前に設立されました。約12ヘクタールの敷地内には、小川が流れ、大きな木が沢山植えられていますが、子どもたちの遊具は勿論、一休みできるビヤガーデンもあります。さらに、ここの特徴はロバやウサギなどの動物と触れ合うことができるエリアがあることです。このエリア内に足を踏み入れると、アヒルやウサギなどの小動物が私たちを歓迎してくれるので、ここはいつも子どもたちの人気スポットとなっています。

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公園の入り口の一つである
ヨーロッパらしい門
アヒルたちが出迎えてくれます

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園内を流れる小川
クラスメートの誕生日会にて

                     

街の中心部から20分程のところにあるこの公園付近は子どもの数が多いこともあり、週末になるとお誕生日パーティを見かけることが多いのも特徴です。実は息子も、保育園に通っていた頃にクラスメートのお誕生会に招待されたことがありますが、子どもたちが集まって、いくら大声で騒いでも問題にならず、どの子も皆のびのびと体を動かして遊び、パーティを楽しんでいたのが印象に残っています。

Mauerpark(壁の公園)

ベルリン中心部にあるMauerparkはその名の通り、壁(Mauer)の公園、つまり、東西ベルリンを隔てていた壁を擁する公園です。一部の壁はまだ残されていて、何人ものグラフィティアーティストが思い思いにペイントしており、独特の雰囲気を醸し出しています。壁の崩壊以来、何重にも塗り重ねられたペイントが、壁を厚くしているのが印象的です。ベルリンの歴史の重みを感じる壁ですが、そのすぐ前にはブランコがいくつもあり、大人も子どもも一緒になって楽しんでいます。

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壁にスプレー缶でペイントを施す
アーティストたち
ブランコの順番を待っているカップル

     

現代アートとブランコ、という何だか不思議な組み合わせですが、これもアートの街ベルリンならではの光景といったところでしょうか。そのブランコの横から下の方へ目を向けると、この公園の目玉イベント、公開カラオケ大会まっただ中!週末になると開かれるこの公開カラオケ大会ですが、司会は英語、歌い手も世界各国の人々で、とても国際色豊かです。そして、皆さんの歌がとても上手なので、自然と場は盛り上がります。また、ちびっこが参加することも多く、私たちが観賞していた時には、小学校低学年くらいのドイツ人の子どもがドイツの童謡を歌い始めました。するとステージの観客も大合唱で応援し、大盛り上がり!このように国籍・年齢問わず、老若男女が皆一緒に楽しめるというのがこの公園の特徴だと思います。

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歌い手を囲む大観衆
凧揚げも盛んな大きな広場

                 

カラオケ大会が行われている広場をさらに進むと、大きな広場があります。ここでは秋になると凧揚げも盛んです。日本では冬(お正月)の代名詞の凧揚げですが、ドイツでは秋に行われることが多いです。

この他にも、バンド演奏や、大道芸人もあちこちで見かけ、週末にはフリーマーケットも開かれるなど、街の真ん中にあるこの公園では色々な文化的刺激が受けられます。

またヴールハイデ市民公園には、野外コンサートステージがありましたが、この「壁の公園」には12,000人収容の体育館が併設されており、バスケットボール、ハンドボール、バレーボールなどのプロリーグの他、コンサート会場としても頻繁に利用されています。

さらに、他の公園同様、遊具コーナーがあり、沢山の子どもたちが遊んでいます。どの公園でも、子どもの遊び場が大きく確保されているのが、ベルリンの公園の特徴であると思います。

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多くの観衆を惹きつけていた
マーチングバンド
お決まりのアスレチック

    

ここはベルリン中心部からほんの10分ほどしか離れていない、広大な緑多き公園ですが、かつては"Death Strip" と呼ばれる無人地域(東西ベルリンの壁に挟まれた立入禁止区域)でした。ベルリンの歴史の重さを感じる場所ですが、現在はアートや音楽を愛する人たちをはじめ、私たちのような家族連れなど、様々な人たちが思い思いの形でリラックスし、それぞれの時を楽しむ憩いの場所となっています。

以上、今回はベルリンにある数々の大きな公園の一部をご紹介しましたが、それぞれに特徴がある中、とにかく広くて自然が多いというのが共通点でしょうか。さらに、どの公園も入場は無料なので、気が向いた時にふらりと足を運ぶことができます。一歩公園内に足を踏み入れると、そこはいずれもリラックスした空間。春・秋はお散歩、夏は水浴び、冬は雪の上でソリすべり、と季節ごとに色々な遊びもできますし、ベルリン市民の生活の一部になっている場だと思いました。

筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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