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【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】 第8回 チャリティマラソン大会

シュリットディトリッヒ 桃子

2015年6月26日掲載

要旨:

小学校で毎年恒例のチャリティマラソン大会が開かれた。学校の運営資金を集めるのが目的のイベントだが、財政難にあえぐベルリンの小学校ではこの種のイベント開催は珍しいことではない。集まった寄付金の半分は子どもが所属するクラスへ、残りの半分は学校へ割り当てられる。また当日は、保護者手作りのお菓子や飲み物販売の出店も登場し、この売上げも学校の運営資金として活用される。このイベントは保護者により運営されており、保育園同様、より良い教育環境のために保護者がイニシアティブをとっていく姿勢は素晴らしいものだと思った。

Keywords:
ドイツ、ベルリン、小学校、チャリティマラソン、寄付、シュリットディトリッヒ桃子

文字通り五月晴れとなった5月のある日、息子が通う小学校でチャリティマラソン大会が開かれました。毎年恒例となっているこの大会には、基本的に全児童が参加するそうです。また「チャリティ」ということで、学校の運営資金を集めるのがこのイベントの目的です。財政難にあえぐベルリンの小学校では、このようなイベントが開催されることは珍しいことではなく、先月もこの小学校では保護者主導の「フリーマーケット」が開かれ、出店料は全て学校の運営資金として寄付されたそうです。

さて、今回のマラソン大会のルールは、以下のとおりです。

  • 制限時間は15分で、その間、子どもたちが校庭のトラック(1周約100メートル)を何周走ったかを競う。
  • 保護者は、自分の子どもが走った周分のお金、もしくは一定金額を学校に寄付する。寄付金額は保護者が決め、事前に契約書を提出する。(例:「1周1ユーロ」と決めた場合、自分の子どもが10周走れば、10ユーロを寄付することとなる。また、走った周数にかかわらず「5ユーロ」などと固定金額を前もって定めても良い)
  • ただし、興奮した子どもたちはいつも以上に頑張って走る傾向があるとのことで、1世帯あたりの最大寄付金額は10ユーロ。
  • 集まった寄付金の半分は子どもが所属するクラスへ、残りの半分は学校へ割り当てられる。

息子は日頃からサッカークラブで鍛えており、走ることが大好きなので、私たちは迷うことなく、10ユーロの寄付金額に決めました。

また、担任の先生に寄付金の使い道を聞いてみたところ、「来月の遠足で動物園に行こうと思っているので、その資金にしようかしら?もしくは、良い映画が公開されていれば、映画鑑賞の費用に充てることも考えていますが、寄付額にもよりますね」とのことでした。

さて、大会当日。この日を心待ちにしていた息子はいつもより早く起床、開口一番「ママ、僕、今日は一番になれるかな?」と聞いてきました。「ちゃんとご飯を食べて、一生懸命走れば大丈夫よ」と答えると、朝ごはんをモリモリ食べて、準備万端の様子!「マラソン大会は2時からだから、給食もちゃんと食べようね」と言って、学校に送り出しました。

そして、私たちがレース開始の午後2時より少し早く小学校に到着すると、校庭は既に大勢の保護者や子どもたちで賑わっていました。このマラソン大会は、小1-2の合同クラスから小6のクラスまでを混ぜた2-3クラスが一緒に15分間走り、トラックを何周走ったかを競う、スピードと持久力が問われる競争です。息子が属するひまわり組(1-2年生の合同クラス)は6年A組と一緒に初っ端の2時スタートでしたから、早速息子を見つけて励まし、レースに送り出しました。

最高学年の6年生と一緒にスタート地点に並ぶひまわり組の子どもたちは、まだまだ小さくて可愛らしいものでしたが、いざ「ヨーイドン!」の掛け声がかかると、みんな真剣な顔になって、一斉にトラックに飛び出します。

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レースの様子

そして1周走り終わると、スタート/ゴール地点で待ち構えていた担当の保護者たちが、子どもたちの腕に「1周終了」という印をつけていきます。15分後に、その数を競う大切な印ですが、一生懸命走っている子どもたちの邪魔にならないよう印をつけなければならないとあって、こちらも真剣な表情でした。

また、トラックの外側では、応援の保護者が子どもたちに大きな声援を送りつつ、写真を撮っています。そんな声援を受けて、手を振ったり、楽しそうに余裕を見せていた子どもたちですが、5分経過のアナウンスが流れる頃には、笑顔が消え始め、ペースも落ちてきます。中には、止まってしまったり、歩き始めてしまう子も。1周100メートルほどのトラックですから、休みなしに走るのは大変そうです。

その後も、走り続ける子どもたちの数は段々少なくなってきて、10分経過のアナウンスが流れる頃には、子どもの数は半分くらいになっていました。息子はなんとか走っていますが、かなり息が乱れているのが窺えます。

「私たち大人は、もはや15分なんて長い間、走ることはできないよね~」と息子のクラスメートのパパと話しているうちに、「残り1分です!」とアナウンスが流れました。すると、どこからともなく、それまで休んでいた子どもたちがフィールドに戻ってきて、猛スピードで走り始めます。そのラストスパートぶりが何だかおかしくて、笑ってしまいましたが、「5、4、3、2、1、終了!」と遂にレースが終わると、汗まみれの子どもたちの顔に安堵の笑顔が広がりました。息子も達成感いっぱいの表情でしたので「よく頑張ったね!」と大いに褒めてあげました。

その後、腕についた印の数を数えてもらって、証明書の発行となります。「証明書」と聞くと大袈裟に思えるかもしれませんが、ドイツは「証明書」社会らしく、行事に参加すると、大体「証明書」が発行されます。例えば、息子がサッカーのトーナメントに参加した時には「地区サッカー大会参加証明書」をもらい、週末旅行で訪れた「中世の生活を再現した村」で「騎士養成講座」なるものに参加した時は、「騎士養成講座修了証明書」をもらってきました。

話をマラソン大会に戻すと、走り終えた子どもたちは、「証明書発行デスク」に向かいます。そこで腕の印を数えてもらい、証明書発行となるわけですが、息子の印を数えあげた保護者や周りの子どもたちからは歓声が!彼の腕には27本の印がついていましたが「27周」というのは、なんとひまわり組トップの成績だったのです!「やったー!」と素直に喜びを爆発させた息子に、こちらも嬉しくなりましたが、同時に「寄付金上限額が10ユーロに設定されていてよかった~」と安堵しました。

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「27周走った」という息子の証明書

沢山走った後は、子どもたち待望のケーキタイムです。当日はお店を出してお菓子や飲み物を販売し、この売上げも学校へ寄付されることになっていたのです。保護者たちには事前に販売用の手作りケーキが募られていたので、この日のために、夫は息子の大好きなレモンケーキを焼いていきました。実際に沢山のケーキが寄せられたようで、出店には様々な種類のマフィンやお菓子が並べられ、1個50セントで売られていましたが、それらはレースを走り終わった子どもたちの疲れと空腹を癒したのか、飛ぶように売れています。息子もレモンケーキを含めて、結局3個のケーキを購入、次々に平らげていました。普段はそんなに沢山のケーキを食べることはない私ですが、このお金が学校の運営資金になるという思いから、自然と財布の紐も緩んで、息子と一緒にケーキを口にしました。

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出店には長い列が!

マラソン大会後に、息子の学童保育の担当の保育士とお話ししてみると、「毎年開催されるこのマラソン大会だけど、保護者の協力なしには開催できないのよ。だから彼らには本当に感謝しているわ」とのこと。確かに、レースの運営も、証明書の発行も、出店の運営も保護者たちによるものでした。保育園もそうでしたが、小学校でも、より良い教育環境のために保護者がイニシアティブをとっていく姿勢は素晴らしいものだと思いました。

筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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