ニュージーランド(以下、NZ)に来てから、寄付(donation)をすることや資金集めに協力することが増えました。漠然と、西洋社会は寄付をする文化があるのだろうということは想定していましたが、そういった予想をはるかに超えています。NZの人たちは本当によく寄付をしています。娘と道を歩いていても、国際的な機関や国内の各種団体への寄付で呼び止められますし、前を歩く人が道端に座るホームレスにコインを渡している光景もよく目にします。無料コンサートを聞きにいったら、帰りに寄付箱が用意されていることも。どこへ行っても寄付箱を目にしない日はありません。こういった寄付は、子育てをしていても身近に感じます。子どもたち向けのイベントなどでも寄付〇ドルというものも多く、私などは参加費や入場料と同等の強制力で支払うものをなぜ寄付という名目で集めるのだろうと疑問に思うことさえあるほどです。そんな寄付文化の根付くNZのエピソードを紹介します。

ショッピングセンターにて救急車の運営団体に寄付
まず、NZの小学校は基本的に無料のはずなのですが、国からの資金だけでは十分な設備や教育環境が整えられないということで、特にDecile *1がある程度高い学校では1学期(年)あたり〇ドルの寄付をすることが決まっていることがほとんどです。強制ではないようなので寄付と言う名目にはなっていますが、恐らく寄付金を募っている学校では、ほとんどの家庭が払っていると思います。公立の幼稚園も同様に寄付を求められます。(近年は寄付にプラスして寄付とは別の利用料を求められるところも増えているようです。)さらに、小学校の資金繰りが悪くなったり、何かをするために資金が必要になったりすると、学校を開放して物を売ったり、基金をたちあげて資金を集めたりします。それには、子どもたちも関わります。ある日、娘が友達と一緒に公園で遊んでいたら、小学校の制服を着た4人の女の子が恥ずかしそうに小さい声で「ファンドレイジング(fund-raising)」と言いながら近づいてきて、チョコレートを売っていました。友達のお母さんも私も、つい買ってしまいましたが、笑顔でそそくさと去って行ってしまい、何のお金を集めていたのか聞き忘れてしまいました。きっと学校の資金集めだろうと思います。

ニュージーランドのコイン
(左より10セント、20セント、50セント、1ドル、2ドル)

パジャマデ-の朝(ゴールドコインをカバンに詰めて)
その他、クリスマスのシーズンにも、プリスクールで子どもたちに向けて食べ物に困っている人たちに配る缶詰の寄付を募っていました。「困っている人を助けることを子どもたちに教えるということは大事なことです。」という、寄付を計画した趣旨も、プリスクールのお知らせには書かれていました。 プリスクールの入り口に置かれた段ボールには、山ほどの缶詰が集まったことは言うまでもありません。他にもクリスマスプレゼントをもらえない家庭の子どもたちのために、プレゼントを箱に入れて集めるというものもありましたし、小さくて着られなくなった服を娘が自ら選び、持って行ったこともありました。娘も、「誰か着てくれるといいね」と自分で寄付用の箱に入れ、先生に感謝されていました。こうした行為もまた、娘のプリスクールに限らず行われていることです。
私自身のことを思い返せば、日本で過ごした子ども時代に、寄付をしたり、資金集めに協力するということは、はっきりと意識させられていなかったと思います。日本と比べてNZが良いという問題でもないと思いますし、子どもの頃から寄付や資金集めに慣れていくことに全面的に賛成する気はありませんが、ここまで日常や教育現場に寄付という行為が入り込んでいるというのは新鮮でした。加えて、困っている子どもたちを助けなければいけない、という思いは、貧困 *2が大きな社会問題となっているNZでは現実味があるのかもしれません。大人になって企業で働いていても頻繁に寄付が募られているとのこと。日本にいた時には、大人になるにつれ自ら考えて寄付をするようになっていくのだと思っていましたが、NZに来て寄付という行為も子どもの頃から教えていくものなのだなぁと思うのでした。
- *1 Decileは地域の所得水準によって、学校を1~10の指標でランク付けするもので、ニュージーランド教育省が公表しています。数値が低ければ所得水準の低い地域(学校)、数値が高ければ所得水準の高い地域(学校)を示します。教育省から助成はDecileの低い学校に集中しています。http://www.minedu.govt.nz/NZEducation/EducationPolicies/Schools/
SchoolOperations/Resourcing/ResourcingHandbook/Chapter1/DecileRatings.aspx - *2 NZでは、4人に1人の子どもたちが収入ベースで貧困状態に置かれていると言われています。詳しくは、http://www.childpoverty.co.nz/