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【ニュージーランド子育て便り】 第18回 ニュージーランドの寄付文化

村田 佳奈子

2014年8月 1日掲載

要旨:

ニュージーランドに来てから寄付をするということが増えた。また、子どもたちが基金を募っている光景にもよく出会う。決してニュージーランド流を肯定するわけではないが、日本とは少し違う寄付文化は興味深いと思う。寄付にまつわるエピソードを紹介したい。

ニュージーランド(以下、NZ)に来てから、寄付(donation)をすることや資金集めに協力することが増えました。漠然と、西洋社会は寄付をする文化があるのだろうということは想定していましたが、そういった予想をはるかに超えています。NZの人たちは本当によく寄付をしています。娘と道を歩いていても、国際的な機関や国内の各種団体への寄付で呼び止められますし、前を歩く人が道端に座るホームレスにコインを渡している光景もよく目にします。無料コンサートを聞きにいったら、帰りに寄付箱が用意されていることも。どこへ行っても寄付箱を目にしない日はありません。こういった寄付は、子育てをしていても身近に感じます。子どもたち向けのイベントなどでも寄付〇ドルというものも多く、私などは参加費や入場料と同等の強制力で支払うものをなぜ寄付という名目で集めるのだろうと疑問に思うことさえあるほどです。そんな寄付文化の根付くNZのエピソードを紹介します。

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ショッピングセンターにて救急車の運営団体に寄付


まず、NZの小学校は基本的に無料のはずなのですが、国からの資金だけでは十分な設備や教育環境が整えられないということで、特にDecile *1がある程度高い学校では1学期(年)あたり〇ドルの寄付をすることが決まっていることがほとんどです。強制ではないようなので寄付と言う名目にはなっていますが、恐らく寄付金を募っている学校では、ほとんどの家庭が払っていると思います。公立の幼稚園も同様に寄付を求められます。(近年は寄付にプラスして寄付とは別の利用料を求められるところも増えているようです。)さらに、小学校の資金繰りが悪くなったり、何かをするために資金が必要になったりすると、学校を開放して物を売ったり、基金をたちあげて資金を集めたりします。それには、子どもたちも関わります。ある日、娘が友達と一緒に公園で遊んでいたら、小学校の制服を着た4人の女の子が恥ずかしそうに小さい声で「ファンドレイジング(fund-raising)」と言いながら近づいてきて、チョコレートを売っていました。友達のお母さんも私も、つい買ってしまいましたが、笑顔でそそくさと去って行ってしまい、何のお金を集めていたのか聞き忘れてしまいました。きっと学校の資金集めだろうと思います。

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ニュージーランドのコイン
(左より10セント、20セント、50セント、1ドル、2ドル)

娘のプリスクールでは、1年に1回くらい「パジャマデー」というものがあります。パジャマデーは、先生も子どもたちもプリスクールにパジャマを着ていき、パジャマを着て行った人はゴールドコイン(1ドルと2ドルだけ金色なのでゴールドコインと呼ばれます。) を寄付をするというものです。楽しみを買うということなのか、無礼講の罰金ということなのか、いろいろなことを言う人がいて、いまいちよくわかりませんが・・・要するにきっかけのようです。「今年は、寒い冬にブランケットを買えない人のためにお金を募りたいので、〇月〇日はパジャマデーです。」といった具合です。ちなみに、パジャマデーは、寄付を募るアイディアとしては定番で、派生形として、仮装デ-であったりカジュアルデーであったり、いろいろとあります。定番というだけあってパジャマデーは、小学校以降で行う場合も多いようです。みんなが大喜びで好評なのかというと、現地の子育て相談のネット上の掲示板で「子どもにパジャマを着せて外に行かせたくありません。」といった悩み相談を見ることもあり、言われてみればその気持ちも分かる親としては、ちょっと笑ってしまいます。もちろん強制ではありませんし、抵抗があれば本当のパジャマを着なくとも多少いつもよりラフな格好でいけば良いのだと思います。娘は、パジャマデ-の日は大はりきりでパジャマを着てゴールドコインを持参していきました。この日は教室に大きなテントを張ってその中で全員パジャマ姿のクラスメートと寝るといった普段とは違うことをしたそうで、大はしゃぎで帰ってきました。

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パジャマデ-の朝(ゴールドコインをカバンに詰めて)


その他、クリスマスのシーズンにも、プリスクールで子どもたちに向けて食べ物に困っている人たちに配る缶詰の寄付を募っていました。「困っている人を助けることを子どもたちに教えるということは大事なことです。」という、寄付を計画した趣旨も、プリスクールのお知らせには書かれていました。 プリスクールの入り口に置かれた段ボールには、山ほどの缶詰が集まったことは言うまでもありません。他にもクリスマスプレゼントをもらえない家庭の子どもたちのために、プレゼントを箱に入れて集めるというものもありましたし、小さくて着られなくなった服を娘が自ら選び、持って行ったこともありました。娘も、「誰か着てくれるといいね」と自分で寄付用の箱に入れ、先生に感謝されていました。こうした行為もまた、娘のプリスクールに限らず行われていることです。

私自身のことを思い返せば、日本で過ごした子ども時代に、寄付をしたり、資金集めに協力するということは、はっきりと意識させられていなかったと思います。日本と比べてNZが良いという問題でもないと思いますし、子どもの頃から寄付や資金集めに慣れていくことに全面的に賛成する気はありませんが、ここまで日常や教育現場に寄付という行為が入り込んでいるというのは新鮮でした。加えて、困っている子どもたちを助けなければいけない、という思いは、貧困 *2が大きな社会問題となっているNZでは現実味があるのかもしれません。大人になって企業で働いていても頻繁に寄付が募られているとのこと。日本にいた時には、大人になるにつれ自ら考えて寄付をするようになっていくのだと思っていましたが、NZに来て寄付という行為も子どもの頃から教えていくものなのだなぁと思うのでした。


筆者プロフィール
村田 佳奈子

お茶の水女子大学卒業、東京大学大学院修士課程修了(教育学)。資格・試験関連事業に従事。退社後、2012年4月~ニュージーランド(オークランド)在住。
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