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【ドイツの子育て・保育事情~ベルリンの場合】 第28回 保育園プロジェクト「職業」(2)~社会科見学~

要旨:

プロジェクト「職業」では色々な体験を通じ、仕事に関する理解を深めている子どもたちだが、彼らに大人気なのは社会科見学。実際の仕事現場を見ることができる絶好の機会である。親の関与度も大きく、自分の職場の見学許可を与えてくれた保護者も多かった。救急医療室や空港、肉屋、消防署、郵便局などを訪れ、子どもたちは実際の仕事の様子をうかがい知る。今回は、救急医療室および空港見学の様子をレポートする。

前回は1月から始まった保育園のプロジェクト「職業」について、その背景およびスケジュールをお伝えしました。今回は具体的に子どもたちがどのような体験をしているのかを、記載していきたいと思います。

まずブレインストーミングとして、園の子どもたちはプロジェクト開始日に図書館に行き、様々な職業に関する本を読んできたそうです。その後、自分が知っている仕事、両親が就いている仕事、そして自分が将来就きたい仕事についてお話したり、絵を描いたりしている模様。このプロジェクトの期間は、自宅から自分の玩具を保育園に持ってくることを許されている週1回の「おもちゃの日」に、自分の就きたい仕事に関する玩具を持ってくることになっています。

興味深かったのは、女の子は全員「馬術学校の先生」になりたがっていること。彼女たちの多くが馬術学校に通っていることとも関係あるのでしょうが、きっとその先生はみんなが憧れるような素敵な方なのでしょう。

対して男の子は、「消防士」「警察官」「バスの運転手」「宇宙飛行士」など様々。息子は警察官になりたいとのことで、下のような絵を描きました。ちなみに、ドイツでも通報番号は110番です。

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息子が描いた絵「(左から)パトカー、警察官、警察署」

また、子どもたちに大人気のアクティビティは社会科見学。保育園を飛び出して、仕事の現場を見ることができる絶好の機会です。ちなみに、社会科見学に行ったときの写真は保育園の共有ネットワークサービス を使用して保護者に共有されるので、私たちはその時々の様子をうかがい知ることができます。

例えば、1月29日にA君のパパの職場である救急医療室を訪問した子どもたちですが、この時は50枚以上の写真が共有されました。子どもたちが点滴や心電図、酸素吸入器といった専門的な機器について、看護師さんから説明を受け、実際に触れ、学んできた様子が写真からわかります。また、ギブスを各自作成してもらったり、体の一部の超音波画像を撮ってもらったりしたようで、息子も自分の腕のギブスと心臓の超音波画像を持ち帰ってきました。

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救急医療室にて説明を聞く子どもたち
息子の心臓の超音波画像

また、このプロジェクトでは改めて保護者達の関与の大きさに驚きました。プロジェクト開始時に先生が職場見学を許可してくれる保護者を募ったところ、上記の救急医療室の医師であるA君のパパを始め、様々な職種の保護者が名乗り出て、毎週の社会科見学が可能になったようです。遠方まで行く場合は、付き添いの保護者も募集されます。フリーランスとして自宅で働く私は、自宅公開はできないものの、都合をつけて子どもたちの引率のお手伝いならできると思い、2月にベルリン・シューネフェルド空港へ同行してきました。

そのときの様子を簡単にご紹介したいと思います。

園から空港までは路面電車と中距離電車を乗り継いで約1時間。園児たちにとってはちょっとした旅です。左手に我が息子、右手には4歳の女の子のMちゃんの手を引き、もう一人のママと3人の保育士たち、計5人の大人で15人の子どもたちを引率してきました。

空港ではこのような社会科見学を広く受け付けているようで、当日はガイドさんが付き、C32ゲートにひとまず集合となりました。このゲートは実際の旅客機用にも使用されることがあるようですが、普段はこのような子どもたちの社会科見学に使用されているようで、飛行機の模型が飾られていたり、小さな椅子とテーブルを有した子どものための休憩所が設けられていたりしました。 休憩が終わると、同ゲート内にて爬虫類などが展示された棚を前に、ガイドさんが国内持ち込み禁止物の説明を始めます。ワニの剥製を目の前に、興味深そうに話に聞き入る園児たちでした。

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国内持ち込み禁止物の説明を受ける子どもたち

ひととおり説明が終わると、今度は空港全体の見学です。広い空港内で迷子にならないよう、園児は各自赤いベストを身に着け、別のターミナルに歩いて移動します。到着すると、発着案内板の読み方を教えてもらいました。

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発着案内の見方を教わる子どもたち

ここではガイドさんが案内板に示されている都市について「あの一番上の飛行機はロンドンに行くのだけど、どこの国か知ってる?」など子どもたちに問いかけます。「ロンドンはイギリスよ」と得意げに答えた女の子。ガイドさんが「そのとおりね」と応対すると「パパが生まれた国だから知ってるのよ!」などと女の子が答え、微笑ましいやりとりが繰り広げられていました。

この後、チェックインカウンターやセキュリティチェック、空港警察と館内を順に見学していきます。こうして空港内にはパイロットやフライトアテンダント以外にも、様々な職業が存在していることを子どもたちは学んでいきます。

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向かって左側が荷物検査場

残念ながら写真撮影は許可されませんでしたが、荷物のセキュリティチェックでは実際に先生のバッグをスキャンで通したところを、検査員が特別なモニターで見せてくれました。画面上に様々な色で示されるバッグの中身ですが、子どもたちは食い入るように画面に見入って「この色は何?」「お水は何色で示されるの?」と積極的に質問をしていました。

ひととおり空港内を見学すると、いよいよ展望デッキにて本物の飛行機の見学です。しかし、このデッキに出るためだけにも厳重なセキュリティチェックを通らなければなりません。子どもたちは神妙な面持ちで金属探知ゲートを一人ずつくぐります。無事にゲートの向こう側へ到着すると一気に緊張が解け、ある先生のベルトに反応して作動した探知音に大はしゃぎ!ズボンのポケットからバッグの隅々まで調べられている先生を横に「この機械は金属に反応して鳴る特別なものなんだよ」と、空港検査員から説明を受けていました。

ようやく展望デッキに出ると、今度は間近に見える飛行機にみんな大興奮!「パイロットが見えたよ!」「あれはどこに行く飛行機?」など会話が聞こえてきます。中には発着陸する飛行機の轟音に思わず耳をふさぐ子、目の前の飛行機の大きさに圧倒され口をあんぐり開けている子も。

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展望デッキにて

このように、大人でも十分楽しめた空港見学でしたが、別の日には近所のお肉屋さん見学に行って、ひき肉を作ったり(ドイツらしくソーセージの試食というお楽しみもあったそう!)、消防署に行って、実際にはしご消防車のはしごの上に登らせてもらったりと、数多くの貴重な職業経験をしている模様。次回は、職業プロジェクト最終編として「オペラ鑑賞」のレポート、およびプロジェクト総括をお届けします。

筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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