息子の通う保育園の4歳以上のグループでは、2-3か月に一度、「プロジェクト」という活動を行っています。テーマは、子どもたちの興味や状況を鑑みて先生がその都度決めます。これまでに「私たちの住む街ベルリン」「春」「風」「海賊」というテーマのもと、子どもたちは図書館に行って情報を得たり、お絵かきや工作活動をしたり、時には園の外に飛び出して、実際に見たり触れたりする体験をしてきました。期間は毎回、2-3週間程で、その間に子どもたちはテーマへの理解を深めている模様です。
今年1月から始まったプロジェクトのテーマは「職業」。これはドイツの子どもたちにとってかなり大きなテーマです。なぜなら、ドイツでは小さな頃から自分の職業について考えなければならないからです。
日本では小学校卒業後、自動的に全員が中学校入学となりますが、ドイツでは特別な場合を除き、アービトゥアという大学入学資格を取得して総合大学への入学を希望するならギムナジウム(Gymnasium)、専門学校や専門大学の後に事務職や専門職を目指す場合は、実科学校(Realschule)、さらに、大学進学を希望しない場合や、職人や販売員を目指す場合は基幹学校(Hauptschule)と3つに進路が分かれます。そして、その進路の決定は10歳前後(小学校4年生)で行わなければなりません。
さらに、これらの進路は小学校の成績で決まりますから、例えば、10歳までに総合大学進学を希望していても、それまでの成績が悪いとギムナジウムには進学ができません。また、アービトゥアは実科学校や基幹学校では取得できないので、いったんこれらの学校に入学してしまうと、総合大学入学への道は閉ざされてしまうことなど、このシステムのフレキシビリティの低さが昨今問題となっています。
一方、古くから存在するマイスター制度に代表されるように、手に職をつけることが高く評価されていることも事実です。ですから、どのような学校に進学しても、そこで学んだことをそのまま活かして就職することが主流。職業意識が高いので、学校卒業後の就職時にはその道のスペシャリストとして契約を提携し、契約書にはきちんと業務内容が書かれていることが多い模様です。
私もベルリンに移住後、様々なシーンで自己紹介をしてきましたが、決まって尋ねられることは「職業は何ですか?ご専門は何ですか?」でした。これは、学校での専攻とはあまり関係なく、一つの会社の様々なセクションにて異なる領域の業務経験を積んでいき、いわゆる「ジェネラリスト」を育てていく日本のスタイルとは対照的です。
こうした背景のもと、ドイツでは低年齢の頃から様々な職業について知っておくことは非常に重要なこと。今回のプロジェクトは3月まで約2か月間続く、比較的規模の大きなものとなりました。
1月下旬になると、スケジュール第一弾が保育園玄関に貼り出されていました。

下記に、かいつまんでご紹介します。
1月27日月曜日 | 9時 図書館に行ってテーマを広げる |
1月28日火曜日 | 9時 お話の時間 「みんなはどんな職業に興味がある?」 |
1月29日水曜日 | 9時 社会科見学:救急医療室(A君のパパの職場見学) |
1月30日木曜日 | 9時 ゲーム「お仕事カードで神経衰弱」 |
1月31日金曜日 | おもちゃの日(就きたい仕事に関するおもちゃを各自持参する) |
2月3日月曜日 | 9時 社会科見学:音楽学校(Fちゃんのママの職場見学) |
2月4日火曜日 | 9時 社会科見学:保育園近辺「近所にはどんなお仕事がある?」 |
2月6日木曜日 | ゲーム「お仕事カードで神経衰弱」 |
2月11日火曜日 | お仕事に関するお絵かき |
2月13日木曜日 | ゲーム「お仕事カードで神経衰弱」 |
2月14日金曜日 | 8時15分 社会科見学:シューネフェルド空港 |
2月17日月曜日 | 8時45分 社会科見学:消防署(F君のママの紹介で) |
2月18日火曜日 | 9時 お話の時間「消防署について」 |
このようなカリキュラムで3月まで子どもたちは様々な職業について、学んだり考えたりしていきます。次回は、このプロジェクトを通じて子どもたちが具体的にどのような体験をしているのかをお伝えしたいと思います。