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【12月】子ども虐待防止キャンペーンのオレンジリボンたすきリレー

要旨:

子ども虐待」は今や重大な問題となっている。厚労省は、11月を「児童虐待防止推進月間」と決め、全国フォーラムを開催した。小林所長がセンター長を務める「子どもの虹情報研修センター」では、11月8日の日曜日にオレンジリボンたすきリレーが行われた。今回はオレンジリボンたすきリレーの話を取り上げる記事である。

厚労省は、11月を「児童虐待防止推進月間」と決め、全国フォーラムを開催すると共に、関係する施設や団体にも、何かキャンペーンとなるような行事をすることを勧めている。

 

私が非常勤でセンター長を務める、虐待問題に関係する職員の研修を目的とする公設民営の「子どもの虹情報研修センター」では、11月8日の日曜日にオレンジリボンたすきリレー、11月23日の月曜日(祝日)には、椎名篤子さんによる講演「マンガで届ける子ども虐待防止」や対談などを公開講座として行った。「子ども虐待」は今や重大な問題となっているので、今回の所長メッセージでは、オレンジリボンたすきリレーの話を取り上げたい。

国が積極的に「子ども虐待防止」をキャンペーンしているのは(あるいは、「しなければならない」のは)、親、特に母親によるわが子への虐待の事例が多発し、統計によると、死亡例も「心中」を含めれば月7件にも及ぶ現実があるからである

厚労省は、確実な数を把握出来る児童相談所の相談対応件数を、「子ども虐待」の一般的指標としているが、その数は1990年(平成2年)の1,101件から2008年(平成20年)の42,664件と、18年間で約40倍に増加している。児童相談所の児童虐待相談対応件数を、実数の多くて約2/3と試算する研究もあるので、問題がいかに深刻であるか理解されよう。

勿論、「子ども虐待」は昔からあったが、現在は豊かな、特に強調すれば「物質的に」豊かな社会の中での「子ども虐待」であって、その昔の貧困の時代のそれとは異質であるように見える。勿論、豊かな社会と言っても、虐待する親なりその家庭なりは、貧困の中にあるかもしれない。それでも、特殊な「ネグレクト」を除いては、一般的に飢餓とは関係ないように見える。小児科学の教科書にも載るこの「子ども虐待」は、戦争に勝ち、国土が戦場にならなかったアメリカで1950年代から始まり、日本でも、戦後の復興により豊かさが確実になった1960年代後半から、小児医療の現場に現れた。しかし、残念ながら、社会の多くの人はこの問題を充分認識していない。それが、国を挙げて毎年11月にキャンペーンを行っている理由なのである。

さて、オレンジリボンたすきリレーは、オレンジ色のたすきを渡しながら、ランナーがゴールに向けて走るものである。今年で3回目になるが、今回、東京コースは東京都児童会館、湘南コースは大磯の湘南国際マラソンのスタート地点から、それぞれ横浜みなとみらい地区の日本丸メモリアルパークまでをリレーした。そして、出発点、中継点では、色々な行事を行うとともに、集まった人々に小さなオレンジのリボンを配ったのである。今回は、ボランティアが作成してくださった約5,000のリボンを配ることが出来た。

このたすきリレーの実行委員会会長の栄を頂いたので、私も湘南コースのグループと最後の数百メートルを一緒に走り、テープを切らせて頂いた。東京コースは少々遅れたため、一緒に走ることは出来なかったが、立派なゴールインであった。ランナー数(のべ人数)は、東京コースが71名、湘南コースは55名、計126名であった。

オレンジリボンは、そもそも栃木県小山市の「カンガルーOYAMA」という虐待防止に取り組む団体が作ったものであるが、なかなか普及しないことが残念である。ある有名なホテルで、職員が良く似たリボンをつけていたので、思わず「子ども虐待防止のキャンペーンですか」と尋ねたところ、「乳がん」のキャンペーンと知ったことがある。リボンがピンク色だったのである。オレンジリボンももっと工夫して、普及を計らなければならないのではなかろうか。

11月の児童虐待防止推進月間で行われる行事は色々とあり、NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク主催の「子どもの虐待死を悼み命を讃える市民集会」も毎年行われている。亡くなられた子どもたちに、キャンドルライトと共に祈りを捧げるという、あまりにも悲しい行事もある。

オレンジリボンたすきリレーは、嬉しいことに、今年は岐阜と山口でも行われた。このたすきリレーの輪が今後も広がり、社会全体がこの問題に関心を持ち、「子ども虐待」が無くなる日が来ることを心から望んでいる。

※ 「第1次報告から第4次報告までの子ども虐待による死亡事例等の検証結果総括報告」(社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会) http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv31/dl/05.pdf (http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv31/index.html)
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