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【4月】The George Lucas Educational FoundationのWebsite "edutopia" にCRNが掲載されました

The George Lucas Educational Foundation (GLEF) のWebsite "edutopia" に、CRNの実績と「子ども学」 "Child Science" の展開が評価され、その紹介記事が掲載された(Child's Play: Japan's Groundbreaking Child-Development Web Site)。大変光栄に思うと共に、大変嬉しい。

 

ご存知の通りMr. George Lucas(1944-)は、世界的な映画監督であり、巨万の富を築いた人である。しかし、生活は質素で、子ども達の未来を考え、GLEFを設立したものと思われる。わが国の名映画監督 黒澤明を尊敬しており、日本文化に関心を持っている様で、作品の中にもその影響が少なくないと言われている。

Mr. Lucasは、子どもの頃はSFマニアであって、青春時代にはレースドライバーを目指したりするなど、いわゆる学校での勉強は余り熱心でなかったと伺った事がある。初めはジュニア・カレッジで社会学を勉強していたが、知り合ったある撮影監督の勧めで南カリフォルニア大学のフィルム学校に入学し、映画制作の道に入ったという。その後、映画監督として「THX‐1138」、「アメリカン・グラフィティ」、「スター・ウォーズ」などのヒット作を出し、世界的存在になった事はご存知の通りである。また、映画編集の技術の改善も手がけ、ビデオを利用した電子編集を導入したりするなど、新しい映像技術の開拓でも成果を上げてきた。更に、映画の音響効果の改善・強化にも力を尽くしている。映画制作においてはデジタルの技術を生かしたが、彼自身はアナログの生活を好んでいるとも言われている。

GLEFは、Mr. Lucasが自らの体験から、教育のやり方は色々あり、子どもの好きなものから勉強させるのが良いと考え、新しい教育の在り方を模索する為に設立したものと伺っている。例えば、動物の好きな子ども達は、動物園で動物の世話をしながら動物について学び、それを柱にいわゆる普通の教育に広げていくという考え方や、ピアノのレッスンも、好きな曲から習い始め、バイエルなどの教則本による練習は後からでも良いというのである。

私流に言うならば、「学ぶ喜び」の体験から教育を始める、あるいは、「学び」と「遊び」の融合をはかる、「学び」を「遊び」化する、とも言えよう。「子ども学」の立場から言えば、教育法の「チャイルド・ケアリング・デザイン」 "child‐caring design" という事になろう。

脳の三位一体学説から考えると、われわれの脳は、体のプログラム中心の「生存脳」に、古い皮質(大脳辺縁系)が加わり、「本能・情動脳」の心のプログラムを駆使して、たくましく生きる力を獲得した。すなわち、原始的な哺乳動物の脳である。更に、「本能・情動脳」に新しい皮質(新皮質)が加わって、知性・理性の心のプログラムを持ち、「本能・情動脳」の心と体のプログラムを上手く使い、高等哺乳動物として群れをつくり生活するようになった「知性・理性脳」を持ったのである。それが極限まで進化して、地球環境に上手く適応し、文化・文明を作り出す現在のわれわれ人間の脳が出来たと言える。従って、われわれの人間としての全ての「いとなみ」は、この3つの脳「生存脳」、「本能・情動脳」、「知性・理性脳」の相互作用によって発現すると言ってよい。

その中で、「本能・情動脳」の果たす役割は意外に大きく、教育の在り方を考える時には、その重要性を忘れてはならない。換言すれば、子どもが学ぶ時には、大脳辺縁系の活動を活発にしなければならないのである。優しさや共感の心を持った大人に教えられ、子どもに学ぶ喜びを持たせる。それによって、学ぶ意欲や記憶の心のプログラムも、更には知性・理性の心のプログラムも、良く働く様になるのである。従って、学ぶ時には、子どもの表情が明るく、目も輝き、生きる喜び一杯 "joie de vivre" になる様、教育の在り方をチャイルド・ケアリング・デザインする必要があると思うのである。

edutopiaに取り上げられた事で、「子ども学」が、世界的な展開につながって欲しい。北欧では 1990年代始めから"Child Research"、またイギリスでも最近 "Child Studies" として、子どもに関係する学問を組み合わせて、その実践家や職業人を統合的に教育する動きがある。しかし、"Child Science" という言葉の方が、その学際性・環学性を読み取れると思うが、それは自画自賛に過ぎないのであろうか。

Child Research Net を設立してから13年目に入るこの機会に、CRNの国際的展開をはかり、「子ども学」の体系付けと共に、日本子ども学会を、そしてまた東アジア子ども学交流プログラムも柱にして、国内ばかりでなく国際的にもその理念の普及に努めたい。
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