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【ニュージーランド子育て・教育便り】第42回 子どものお泊まり会

要旨:

ニュージーランドではかなり頻繁に子ども同士がお泊まり会をします。7歳前後から友人同士の家で泊まり合うことを子どもは楽しみます。保護者は、子どもの自立や他の家庭の文化に触れることでの学びに期待をしているようです。今回は、初めてのお泊まり会から、今ではすっかり慣れてしまい友人宅と行き来する子どもたちの様子を取り上げます。

ニュージーランドで子育てをしていて驚くことの一つに、かなり頻繁にお友達同士でお泊まり会(スリープオーバー)をするということがあります。我が家にとっては、「お泊まりに憧れていて、子どもを自立させたいから一晩泊めてくれない?」と頼まれた4歳の子が初めての受け入れ経験です。以来、12歳になる娘の場合も、小学校入学以来、コロナの規制の時期を除けば、スクールホリデーの度に友達の家に泊まりに行ったり、誰かが泊まりに来てくれたりしているように思います。保護者も様々な思いでお互いに泊まらせ合おうとしてくれる人が多く、娘も子ども同士のお泊まり会は喜んで参加したり企画したりしています。

お泊まり会の目的

子どもにとってのお泊まり会の目的は、もちろん友達と楽しく過ごすことです。いつも一緒にいるお友達であっても、学校とも昼間の環境とも違う空間で長い間過ごすことは特別な楽しみのようです。一方の保護者は、特に子どもが幼いころは、かなり教育的な目的を意識していることが多い印象です。「他の家庭で過ごさせて、それぞれ自分の家とは違うルールで生活している家庭があることを理解させたい」、「お友達を招き、他人をもてなす作法を身に付けて欲しい」、「親から離れて過ごすことで自立させたい」、「親から離れて寝泊まりすることができたという自信をつけて欲しい」などといったことをよく聞きます。こうした意図が子どもたちにも伝わっているのか、お泊まり会でも基本的にマナーが良い子が多いような印象です。私自身は、お泊まり会に慣れていないこともあり、他の保護者の方たちの思いを聞いて、なるほどと思う程度でしたが、娘が泊まらせて頂く家庭はニュージーランド出身の方の他、英国、米国といった様々な家庭であったりするので、お友達家庭でのステイでありながら、異国のホームステイに似た貴重な経験になっている面もあるようです。

お泊まり会における注意事項

先に触れた4歳の子はとても自立している子でしたが、一番注意すべきは最初のお泊まり会のようで、初めてお泊まりする年齢としては7歳前後が主流なのではないかと思います。友人宅に泊まりに行ける目安として保護者が見極めるべきことは、自分の思いをしっかりと伝えることできるか、ある程度自分の身の回りの管理ができるか、ホームシックにならないか、ということがよく言われます。ホームシックにならないために、祖父母宅でまずは練習を積んでから友人宅で泊まるなど、段階を踏むことも推奨されているようです。

また食べ物についても、アレルギーの有無については確認してくれる家庭が多く、我が家の場合も、初めての子どもが来る場合には、アレルギーその他、食べられないものなどの確認はするようにしています。この段階でも、ある時娘が泊まりに行くことになった家庭からは、食事のメニューなどについては特に尋ねられず「娘さんが好きなミルクを用意しておきたいんだけど、普通のミルク、低脂肪ミルク、アーモンドミルク、オーツミルクの何を飲んでる?」と尋ねられ、ほとんどこだわったことのない内容を確認してもらえて、ミルクに対する思い入れの違いが家庭によって違って興味深いなと思ったこともありました。

少ない持ち物、シャワーや朝食の準備

お泊まり会に持っていくものとしては、パジャマ、次の日の洋服、歯ブラシセット、櫛、遊びたいおもちゃに加えて、寝袋と言われることがあります。前回のレポートにもあります通り、キャンプの盛んなニュージーランドでは各自が寝袋を持っていることが多く、お泊まり会の時も寝袋を持参して友達の部屋の床などに寝てくることが少なくありません。また、シャワーも自宅で浴びてしまってから友人宅に行くことが多く、泊まりに行った家庭でシャワーを浴びることもあまりありません。そのため、お泊まり会といっても、大人が準備するのは食べ物程度で、あとは通常の宿泊を伴わない遊びと大きく変わりはありません。食事は、しっかりと健康的な食事を用意する家庭もあるのでしょうが、簡単なパスタと果物であったり、テイクアウトのピザやフィッシュ・アンド・チップスを頼むなど簡単に済ませるような家庭も多いです。わが家の場合には、ニュージーランドの子どもたちが好きな巻きずしを作ると喜ばれます。朝食にはクレープを焼いたりすることもありますが、シリアルやトーストなど簡単なものであることが多いようです。

今では娘は慣れたもので、お泊まり会に誘われている日でも、出かける少し前に持ち物を準備して気楽に出かけていきます。12歳にもなってしまうと、そこまで成長における意義というものもないように思いますが、誰かの家に行けば、用意してもらった食事のお礼を言ったり、多少は食器を片付ける手伝いをしたり、反対に誰かが泊まりに来ると、曲がりなりにも友達が快適に過ごせるように気を配ったり、また文化的にも違う角度から自分の家族を客観的に眺めて、良いところや悪いところを感じたりしているようです。5歳の息子も、そろそろこうしたお泊まり会をしたがる時期かなと思っています。

追記:オークランドは、1月末と2月初めに豪雨災害、2月中旬にはサイクロンに見舞われました。その際、子どもたちが寝袋片手に、友人同士、安全な家に避難しあえたということもありました。お泊まり会経験は、自然災害時に役に立つのだなとこの時、初めて感じました。

筆者プロフィール
村田 佳奈子

東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。幅広い分野の資格試験作成に携わっている。7歳違いの2児(日本生まれの長女とニュージーランド生まれの長男)の子育て中。2012年4月よりニュージーランド・オークランド在住。
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