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【ニュージーランド子育て・教育便り】 第23回 子どもと行くスーパー

要旨:

ニュージーランドで生鮮食品を扱うスーパーは2社あり、市場の8割以上を占めるといった寡占状態です。そのために生じている問題は多いのですが、特に小さな子どもを連れて買い物をすると、親のニーズに対して行き届いた仕組みやサービスを実感します。そうした子連れにありがたいサービスや雰囲気について紹介します。

ニュージーランドで生鮮食品を扱っているスーパーで頭にすぐ思い浮かぶブランド(店名)は、数えるほどしかありません。その少ないブランドさえ、大元をたどると2社になるというほどの寡占市場です。この2社の中でもそれぞれ代表格となるスーパーが私のよく利用しているスーパーですi 。1社はニュージーランドが本社、もう1社はオーストラリアが本社です。この2社で市場の8割以上が占められており、その問題を政治的にも取り上げられるほどですが、市場規模が小さく、世界の主要各国から地理的にも離れているニュージーランドに新たにスーパーを出店しようという世界的な企業も少ないようですii 。そのような状況なので、ニュージーランドの大手のスーパーの雰囲気は、都市であるオークランドを離れてだいぶ遠くの町に行ったとしても、それほど大きくは変わりません。売っているものの選択肢も、どこに行っても似たようなものばかりです。

国内旅行に行って目新しい食材に心ときめくようなことも少なく、8年前に2歳の娘を連れて移住し、子育てしていた頃には、日本よりも魅力を感じることはそれほど多くなかった気がします。ところが、その後息子をニュージーランドで出産し、新生児の頃から3歳になるくらいまでの息子を連れて買い物をする必要に迫られてからは、ニュージーランドのスーパーはとても子どもフレンドリーで良いなと思うことが増えました。小学生の娘と乳幼児期の息子という子ども2人を連れて買い物をする時には、なおのことです。日本とは違う良さのある、ニュージーランドのスーパーの様子をお伝えします。

ベビーカー専用駐車スペースと様々なカート

まず、どこのスーパーも入り口に一番近いところに赤ちゃん連れ専用の駐車スペースが用意されています(車椅子用の駐車スペース、シニア向け駐車スペースも同じような場所に用意されています)。その駐車スペースは隣の駐車スペースとの距離が広く取られていることが多く、子どもを乗り降りさせる時にドアを十分開けてもまだ余裕を感じます。そして、スーパーの入り口までの短い距離だけを子どもと一緒に歩けば、スーパーの入り口に並べられている大きなショッピングカートに、すぐ子どもを乗せることができます。カートの種類も豊富で、子連れではない人向けのシートがないショッピングカート、子どもが一人乗れるショッピングカート、子どもが二人並んで乗れるショッピングカート、同じく子どもの二人乗りですが、そのうち一人分は首が座ってないような赤ちゃんでも乗れるような形状をしたもの、そして赤ちゃん用のチャイルドシートをそのまま乗せられるタイプのショッピングカート、など様々です。息子が赤ちゃんの頃には、往きの車で眠ってしまった息子をチャイルドシートごとカートに乗せ、寝ているまま買い物を済ませ、寝ているまま帰宅するということがよくありました。その他にも、子どもが押して歩けるような小さなショッピングカートが置いてあるスーパーもあります。また、たくさん用意されているわけではありませんが、運が良いと写真のような車の形をしたショッピングカートを使えることもあります。子どもが車を運転している気分で上機嫌のうちに、親は買い物に専念できるというわけです。

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赤ちゃん連れ専用の駐車スペース

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一番右が子ども自身が押すサイズの小さなショッピングカート
(旗が高い位置についているので大人にも見えやすく安全になっています。)

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車の形をしたカート

無料の果物

売り場の入り口付近には子どものおやつ用の果物が用意されており、子どもは親の買い物中に、ここに置いてある果物を一つ無料で食べることができます。置いてあるのは、バナナ、リンゴ、みかんなどであることが多く、小さな息子をショッピングカートに座らせてバナナを持たせておけば、食べるのにかなり時間がかかりおとなしくしているので、その間に私はのんびりと買い物をすることができました。スーパーで子どもに静かにしておいて欲しいからといって食べ物を持ち込むのは、どうしても躊躇します。ですから、スーパー側が子ども向けに果物を用意してくれて、子どもがお腹を満たしながら静かにしていてくれるというこの仕組みには、本当に大助かりです。これは比較的新しいサービスで2015年に2社のうち1社が採用したら好評だったようで、ほどなくして残りの1社も採用することになりました。10歳になった娘は、最近はもう食べなくなりましたが、去年まではショッピングに行ったタイミングでお腹が減っていると、息子と一緒に選んで食べていました。

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無料のフルーツ

後払い

そのように、果物まで提供してもらっているスーパーにいるにもかかわらず、一度、息子が「ショッピングカートに入れたお菓子を今食べたい!」と、突然大泣きし始めてしまったことがありました。すると一人の店員さんが駆けつけてきて「果物もっと食べたかったら食べていいから!」と言い、別の方から駆けつけてきた店員さんは「どうしたの? あとで払えばいいからそのお菓子の箱開けて1つ食べさせてあげて!」など、とにかく「泣かせないで! 遠慮しないで食べさせて!」というように、両方向から私以上に必死にサポートしてくださり恐縮したこともありました。ちなみに、店員さんは人種も性別も多様です。この時両側から駆けつけてくれたのは、お二人ともたまたま近くにいた男性の店員さんでした。この時は結局、未払いのお菓子の箱を開けて息子に食べさせながら買い物をし、レジで精算時に事情を話して、そこでも「気にしないでいいから」と言われながら、後払いで支払わせて頂きました。他にも、息子が突然くしゃみをして鼻水を出して困り果てている時にも、未精算のティッシュを買い物中に開けて使わせて頂き、精算時に使用済みのティッシュ代を支払ったこともあります。この時も店員さんに声はかけましたが、「もちろん! 早く使って!」という反応でした。小さな子連れで事情があって、買い物中にどうしてもスーパーの物を使う必要が出てしまったら、後払いが許されることもあるのです。

子ども向けキャンペーンと規制

数年前までは、スーパーではよく子ども向けのキャンペーンを打っていました。よくあったのは、購入金額20ドルにつき一つ、おもちゃをもらえるといった類のものです。また、イースターの時期には、スーパーの中に表示されているクイズを解くと、子どもは精算時にチョコレートをもらえたこともありました。こうした子ども向けのマーケティング手法については弊害も指摘されiii、この数年でだいぶ減ってきてはいるのですが、最近まで近所のスーパーでは20ドルの買い物につき野菜の種を一種類もらえるというキャンペーンが行われていました。スーパーでもらった野菜の種を学校で集めて、先生と子どもで学校菜園を作って野菜を収穫する活動が行われたという話もよく聞きます。結局、これも子ども向けのマーケティング手法なのではないだろうかという気もしますが、少なくとも健康志向だったり教育的な内容のキャンペーンが徐々に増えてきているように感じます。また近所のスーパーでは、毎年総額5,000ドルの資金を近隣の小学校と中学校に寄付しています。買い物客がそこで購入したレシートに寄付先の学校名を書いて投函する場所が用意されており、このレシートの枚数に応じて、5,000ドルのうち、どの学校にいくらずつ配分して寄付するのか、内訳を決めるのだそうです。

2020年に関して言えば、新型コロナウイルスの流行時には、買い物は世帯を代表して一人がすることとされており、子どもを買い物に連れていくことが推奨されない時期もあったため、オンラインで注文をして、スーパーに設置されたロッカーから商品を受け取るというシステムも急速に普及しました。しかし規制がされていない普段の状況であれば、私は子どもと一緒にスーパーに行くことの方が楽しいと感じます。子育てをする上で、高い頻度で訪れる必要のあるスーパーが子どもに優しく、子どももスーパーで買い物の邪魔をせず楽しそうにしていてくれるというのは良いものです。とはいえ人口の少ない寡占市場という部分からご想像頂ける通り、値段は軒並み高価iv です。もう少し食料品の価格が安ければなおのこと嬉しいのですが、そこは今後のニュージーランドの発展に伴い変わっていくことを願いたいと思います。



注記

  • i)今回の写真を許可/提供して頂いた1社の写真を使っていますが、スーパーの雰囲気は似ており私の経験もその2社双方のものです。
  • ii) https://www.stuff.co.nz/business/industries/122947384/nz-supermarkets--the-illusion-of-choice-when-there-are-just-two-big-players
  • iii)子どもを対象にした宣伝における規制についてはこのページを参照してください。
    http://www.asa.co.nz/wp-content/uploads/2019/10/CHILDREN-AND-YOUNG-PEOPLES-ADVERTISING-CODE.pdf
    社会的責任、正しい説明、スポンサーと提携した広告について、それぞれ細かなルールが提示されています。
  • iv)牛乳1リットル2.5NZドル程度、卵1パック(10個または12個入り)5.5NZドル程度、放し飼い鶏の卵1パック8NZドル程度、バター500gは6NZドル前後、切り身の魚1kgが30NZドル前後、といった感じです。為替が動くのでそこまで高くないと思われるかもしれませんが、現地に住んでいると、為替よりも高い「1NZドルはほぼ100円」という生活感覚がします。



筆者プロフィール
村田 佳奈子

東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。幅広い分野の資格試験作成に携わっている。7歳違いの2児(日本生まれの長女とニュージーランド生まれの長男)の子育て中。2012年4月よりニュージーランド・オークランド在住。
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