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【ニュージーランド子育て・教育便り】 第22回 子どものサイバーセイフティ

村田 佳奈子

2020年11月20日掲載

要旨:

ニュージーランドでは教育現場でデジタルデバイスを使う機会が多くありますが、今年は特にコロナウイルスの流行時に遠隔教育がなされたことで、子どもたちのデバイスの使用頻度が上がっていました。それに比例するように、子どもがインターネット上で危険にさらされるケースも増えています。今回は、子どものインターネット上での安全を考慮して行われた教育省の対応、小学校が契約したサイバーセイフティの会社のサービス、また小学校で行われた専門家による授業などについて紹介しています。
今年のニュージーランドの子どもたちの状況

ニュージーランドでは、教育現場でデジタルデバイスを使う機会が日本よりも多いように感じていますが、今年は特に新型コロナウイルスによるロックダウンで遠隔教育が行われたこともあり、子どもたちがデジタルデバイスを使う機会が例年の比ではないほど増えました。それに呼応するように、子どもたちが有害なウェブサイト、動画に晒されるようなことも急増していきました。遠隔教育が開始されると早々に、小学校を通じて、Net for Learning(N4L)という教育省が関連する機関が提供するネット上のフィルタリングサービスを家庭の端末にも無料で設定できる方法が案内されたりi、また危険なウェブサイトが出回っているという注意喚起をされることも多々ありました。

我が家の10歳の娘も多くの子どもたちと同じように、ロックダウンを機にデジタルデバイスを使う機会が一気に増えました。小学校の遠隔教育でタブレット端末を使い始めたことに加えて、ロックダウン中に会えないお友達とネット上でコミュニケーションをとるということも、この時に覚えました。ロックダウンが終わってからも、放課後に友だちとデジタルデバイスで連絡を取り合う関係は変わらず続いています。娘がデジタルデバイスを使うスキルは使用時間の増加とともに向上し、娘が何をしているのか、母親の私が把握できないことも増えていきました。デジタルデバイスは教育のツールとしては非常に有用ですし、友だちとコミュニケーションをとることが楽しいこともわかります。またコミュニケーションといっても、単純にチャットや会話をして遊んでいるだけのようでもなく、ドキュメントを共有して一緒に小説を書いたり、絵を描いたりと、創造性をはぐくむために良さそうなこともたくさんあり、禁止するという方法は避けたいと思う一方、当初は夢中になって使いすぎになりやすかったのも事実です。デバイスを使う時間制限を設定してみたり、宿題が終わってからデバイスを使うという約束をしてみたり、親子で話し合ってルールを変えながら、適切な使い方を探っていました。当時は、恐らく多くの家庭が同じような試行錯誤を繰り返していたのではないかと想像します。

小学校がサイバーセイフティ会社の利用を開始

こうした状況を踏まえてのことだと思いますが、娘の通う小学校では、8月から民間のサイバーセイフティ会社のサービスを利用することが決まりました。この小学校で子どもたちが使う全てのデバイスにこの会社のサイバーセイフティ・アプリがインストールされており、子どもたちは有害サイトから守られているそうです。それに加え、学校外でも、全ての子どもがインターネット上のリスクから守られる必要があるという学校側の考えのもと、このサイバーセイフティ会社のアプリを、子どもが家庭で使っているデバイスにもインストールすることが推奨されました。このアプリを子どもの使うデバイスにインストールすることで、保護者には、子どものデバイス使用頻度、インストールされているアプリ一覧、危険なアプリが入っているという警告、ハッキングの警告がメールで届きます。また、保護者が悩みがちなトピックについても、専門家による短い解説動画が提供されています。更に年間5,000円ほど払うと、閲覧の時間を設定して制限したり、年齢制限のあるサイトにアクセス制限をかけることなども可能になります。

娘のデバイスにはもともと使用の時間制限をかけることができ、アプリのインストールには親の許可が要るという設定にしていたこともあり、今のところ前述の有料オプションには加入していません。ただ、サイバーセイフティ・アプリが小学校から推奨されたということで、このトピックについて子どもと前向きに話がしやすくなったように思います。メールで子どものデバイスの使用状況や危険性のあるアプリの情報が送られてくるので、話をするきっかけになります。また、先に触れた保護者が悩みがちなトピックというのは、我が家でも親子で揉めがちなトピックでもあり、親子で一緒に専門家の短い解説動画を見ることでお互いに納得したということもあります。例えば、「子どもは『みんながこのゲームをやっているんだよ』といって、『みんな』という言葉で親を説得しようとするが、実際は『みんな』というのは大げさで、詳しく聞いてみると一人二人しか名前をあげられない。みんながインターネット上でやっていることなどなく、最終的に決めるのは家庭である」といった話も、親子それぞれの立場で腑に落ちました。また、デバイスが使える時間として、小学校が設定した初期設定を見られるのですが、それを見ると学校が始まる前の午前7時~8時半、放課後の午後3時半~7時の間がデバイスで遊んでも良い時間とされていました。娘は午後8時を過ぎてもデバイスを使っていたため、小学校が推奨しているその終了時間の早さに驚き、少し早く切り上げる必要性を娘自身が認識することにもつながりました。

サイバーセイフティの専門家による授業

更に10月には、小学校で子どもたちを対象に外部の講師を招き、サイバーセイフティについての話を聞く会が催されました。娘に印象に残ったことをたずねると①最初に「あなたたちは唯一無二の存在で、価値があり、愛されるべき存在だよ。インターネット上では悪い大人があなたたちをターゲットに悪さをしようとしているが、そのせいで自分たちが大事にされていないと感じたときにはこのことを思い出して欲しい」というスタートだったということ。②SNSなどのプロフィール写真を撮る時には、一人の写真を載せるよりも家族や友だちといった、コミュニティの誰か他のメンバーと一緒に写っている写真を載せる方が、この子には守る人がいたり誰かと繋がっているということになり、犯罪者のターゲットになりにくく安全だという話。③インターネット上に載せてはいけない写真があるということ(寝室、お風呂場で撮った写真やパジャマ姿の写真は載せてはいけない)といったことを教えてくれました。

娘から聞いたこれらの内容は、私にとっても新鮮で考えさせられる内容でした。まず、ルールを伝えるようなことに終始するのではなく、導入で自尊感情に触れるということが、ニュージーランドらしいなと感じました。また、②③に関しても、必ずしも日本で推奨されていると思われることと同じではなく、勉強になりましたii。尚、娘の小学校では過去にも似たような機会が設けられて、ネット上のいじめについて話を聞かされたことがあるそうですが、今年は外部攻撃から子どもを守る視点が重視されたものと思われます。

このように好むと好まざるとにかかわらず、インターネットに頼る必要のあった状況下で、真剣にインターネットやデバイスとの付き合い方を考えなければいけないと思っていた矢先に、小学校からサイバーセイフティに関する専門のアプリが紹介されたり、専門家の話を様々な形で伺うことができたのは、非常に参考になりました。インターネットという全世界で共通しているように思えることであっても、子どもが安全に使うために推奨されることが日本とニュージーランドでは異なる可能性もあり、当地で子どもが習う内容を親が把握する意義も感じています。これからも専門家からの情報を適宜得ながら、子どもたちが安全で有益なインターネット環境で過ごせるよう、親として努めていきたいと思います。



注記

  • i)こちらのウェブサイトが小学校を通じて紹介されました。
    https://switchonsafety.co.nz/
  • ii)例えば日本では他の人と写った写真をプロフィール写真に使うことは、敢えて勧められてはいないように思います。また、「寝室、お風呂場、パジャマ姿」という部分に関しても、日本の生活習慣では違う案内がされるように思います。



筆者プロフィール
村田 佳奈子

東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。幅広い分野の資格試験作成に携わっている。7歳違いの2児(日本生まれの長女とニュージーランド生まれの長男)の子育て中。2012年4月よりニュージーランド・オークランド在住。
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