想像以上に時間と体力を要する買い出し
幼い子どもたちとの渡越にあたり特に気にかけていたのが、水や空気など生活上の衛生面、教育環境、そして日々の食事面でした。食事を作るためには、まず食材を購入しなればなりません。
最初は、ハノイ歴の長いベテラン先輩ママのお買い物にご一緒させてもらい、大型スーパーでの買い物の仕方や食材や商品の選び方などを教えてもらいました。牛乳一つとっても、常温で数か月間保存できるものから砂糖入りの甘いもの、無糖のもの、そして保存料などの入っていないフレッシュミルクといろんな種類があり、表記は馴染みのないベトナム語とあって更に困惑。通販もまだまだ普及しておらず、大型スーパーとはいえ一か所で全てが揃う環境とも言い難いので、結局は、「野菜はここ、肉はここ、魚はここ、パンはここ・・・」と、物によってお店を使い分け、車やタクシーを使って自ら回って買い出しをすることになります。
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大型スーパーの野菜・果物売り場。基本はすべて量り売りです |
鮮度や衛生面での安心を売りにした、外国人向けに食材を売るお店もありますが、奥まった細い路地の一角にひっそりと佇む個人商店のような場合も多く、そんなところまで回ろうとするとあっという間に半日、一日と時間が経ってしまいクタクタになるというパターン。小さな子どもが一緒となると尚更です。結果的に想像以上に高額になってしまうこともあり、どうしたものかと悩んでいたときに、先輩ママがローカルの市場での買い出しに誘ってくれたのです。
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大型スーパーの肉売り場 |
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大型スーパーの魚売り場 |
「新鮮、安い、近い」市場での買い出し
住まいから歩いて10分ほどのところにあるローカルの市場。ベトナム土産などを売る、観光ブックに載ったりツアーの一部になったりするような大きな市場ではなく、ここはまさにベトナムの人々の日々の暮らしを支える台所です。早朝4時~5時に開市するため朝9時前にはほぼ品物が無い、水びたしで足場が悪い、英語は通じずベトナム語のみと、スーパーでの買い物とは訳が違います。品名を示す札や値札は無く、すべて言い値のため、品物ごとの標準価格とベトナム語での数字の言い方はある程度事前に頭に入れておく必要があります。市場内での買い物の仕方、お店の選び方など、何から何まで先輩ママに教えてもらい、とても助けてもらいました。一人では到底踏み込んでいくことが難しい場所です。

掘っ立て小屋の中に広がる、薄暗い市場の様子
市場では、野菜や肉、魚、果物はもちろん、卵や豆腐、春巻きの皮、ピーナッツ、フォーの麺などの食材の他、食用油やサランラップ、お箸、洋服などの簡単な日用品なども購入することができます。野菜はバラエティーに富んでいて、香草やパプリカ、セロリなども並びます。お肉は、豚・鶏・牛とあり、時期によってマンゴー、ライチ、ドラゴンフルーツ、バナナ、パイナップル、ブドウなどの果物も揃い、不足はほとんどありません。マンゴーは1キロ当たり200円ほどで、とても甘くて美味しくよく購入しました。スーパーの値段よりもはるかに安く、特に野菜や肉はみずみずしく美味しそうに見えます。鮮度、値段、品揃え、住まいからのアクセスなどのこれまでの問題を解消してくれたこの市場が、その後の我が家の食卓を支える場所となりました。

いつも新鮮なお野菜を揃えて迎えてくれる野菜屋さん

豚肉屋さんでは、欲しい部位と量、形状を伝えるとその場で量りカットしてくれます
独特の鼻を衝くような匂いが立ち込め、薄暗く決して綺麗とは言えない市場は、足元はいつもびちゃびちゃで、細い道をバイクが横切る怖い場所・・・子どもたちにとってはそんな印象が強く衝撃が大きかったようです。最後まで二人ともあまりこの場所を好みませんでしたが、私はできるだけ子どもたちを連れて買い出しにでかけました。ベトナムという国の本質は、このようなローカルでこそ感じることができると思っていたからです。そもそも小さな子どもがあまり来ない場所とあり、子どもたちを連れて歩いていると売り場のお姉さんたちが笑って声をかけてくれます。コミュニケーションはすべてベトナム語ともあり少しハードルは高いですが、ここへ踏み込んでいくことで、ベトナムでの暮らしに随分自信がもてるようになりました。
次回は、市場で買った食材を使った、子どもたちが好んだベトナムの家庭料理をご紹介します。
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(写真左)最初のお買い物で購入したお野菜。トータル約300円。 (写真右)マンゴーは3つで約1キロ(200円)、セロリも立派! |